ーー | EUの大統領と面会された話を 新聞にも寄稿されていましたね。 一気に「四国夢中人」の知名度が 上がったんじゃないでしょうか。 |
尾崎 | そうですね、そこはやっぱり みなさんのおかげですね。 |
ーー | それにしても、 大統領に「会いましょう」と言われても ふつうは尻込みして会えない気がします。 |
尾崎 | 私はフランス語によって人生が大きく変わり、 そして今も新しい世界が どんどん広がっています。 自分にできることがあれば何でもしたいし、 それが自分を支えてくれた人への 恩返しだと思ってるんです。 だから、緊張はしますが尻ごみはしないですね。 これが大統領に持って行った 俳句ツアーの句集です。 |
ーー | 大統領にこれをお見せしたんですね。 |
尾崎 | そう。ふつうに印刷すると 大切にされないかもしれないと思って 友だちに和紙で装丁してもらったんです。 内容は、ミンさんというエールフランスの マネージャーが、ブロガーとして 俳句ツアーに参加されたときのものです。 350ページにわたる ブログを書いてくれたんですけど、 全部載せきれないので、 一部だけ抜粋してまとめたんです。 |
ーー | わぁ‥‥すごく本格的ですね。 私も香川出身ですけど、この写真見ると 「四国ってこんなにきれいだったんだ」って 思います。 |
尾崎 | 撮り方が美しいんですよ。 ミンさん本人も、大統領のところに 自分の俳句集を持って行くなんて 想像もしてなかったので、喜んでいましたね。 |
▲ファンロンパイ大統領とミンさんと一緒に。 |
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ーー | 大統領にもお会いになった尾崎さんが、 次に興味を持っていることはありますか? |
尾崎 | 『ZOOM JAPON』という フランスで配られている 日本の情報を載せたフリーペーパーが すごくおもしろくて、 ぜひ何か一緒にやりたいなと思っているんです。 |
ーー | すごい。これ、かなり本格的な冊子ですね。 |
尾崎 | これは月刊誌なんですけど 2010年からフランスで7万部も配られているんです。 2012年から英語版もでき、 イギリスやドイツでも配られています。 この『ZOOM JAPON』を創刊した 編集長のクロード・ルブランさんは 本業はフランス全国紙の外報部長ですが、 「もっと日本のことを知ってもらいたいのに 日本の情報があまりにも乏しいので 自分がその役割をするんだ」とおっしゃっていて。 スタッフに給料さえ払えれば 自分の給料はなくていいと言っている方なんです。 |
ーー | あぁ、すごい。 熱意がなければできないことですね。 |
尾崎 | ええ。だから、彼を呼んで 四国のプロモーションを 一緒にしたいという気持ちがあったんですが、 なかなかお金が集まらないし 誰も賛同してくれなくて。 でも、 「じゃ、外務省に話を持って行こうか」 と言ってくださる方が現れ、 外務省の支援で四国に招へいできたんです。 これも、彼が有能なフランスのジャーナリストとして 認められていたからです。 東京で政府関係者や有識者とミーティングをされて、 その後で、四国に5日間滞在されました。 東京から高松まで 「サンライズ瀬戸」に乗って来られたんです。 |
ーー | 「サンライズ瀬戸」! 寝台列車ですね。 |
尾崎 | 彼が、大の「鉄ちゃん」だからなんです。 それも、ふつうのレベルではなく 日本の鉄道に心底惚れていて、 フランス語で書かれた 日本の鉄道ガイドブック『電車で巡る日本』を 2冊も出版されている方なんですよ。 |
ーー | すごい方なんですね。 |
尾崎 | だから、四国に来てもらうからには 彼がしたいツアーを、と思って まず「サンライズ瀬戸」。 そして、四国ならではの「坊ちゃん列車」と 「アンパンマン列車」と ことでんの「レトロ電車」にも乗ってもらって。 さらに、 「欧州メディアからみた四国のクールとは」という テーマで講演もしていただいたんです。 |
ーー | そういう四国での行程は 全て尾崎さんが組まれたんですか。 |
尾崎 | そうですね。 EUの大統領と会ったのが1月下旬で、 その直後の2月15日から5日間が クロードさんのスケジュールだったので 準備が大変でした。 でも、おかげさまで 『ZOOM JAPON』3月号に 「金刀比羅宮」や「こんぴら歌舞伎」、 5月号に「豊島」、 6月号に「しまなみ海道」の記事が 英語版(4万部)とフランス語版(7万部)に掲載され、 12ページに及ぶ四国のスポットが 英仏両国で紹介されたんです。 |
ーー | わぁ、本当ですね。 大きな特集記事になって‥‥。 |
尾崎 | これだけのフリーペーパーを作って、 電車や漫画やアニメにも詳しくて 日本文化をどんどん海外に 紹介してくれている人なんて なかなかいませんよ。 だから、私もすごく彼を応援したくて 「ぜひ彼をサポートしてください」と 外務省や観光庁にもお願いに行きました。 私自身が支援していただいている身分なので、 人を支援なんかできる立場じゃないんですけど、 どうしても何か手伝いたくて。 |
ーー | あぁ‥‥いいですね。 クロードさんと尾崎さんには どこか共通点がありますし、 国を越えて気が合うような気がします。 |
尾崎 | 私は主婦、彼はフランス全国紙の外報部長なので レベルが違うのですが、 彼とは、ほんとうにビジネス抜きで 重なり合うところがあるように思うんです。 私はどこともしがらみがないぶん、 日本で彼をサポートすることができるかもしれません。 目的のためなら直接トップに会ったり ラブレターを出したりね。 それをクロードさんにうまく利用していただいて 進められるといいなと思っています。 |
ーー | 尾崎さんならではの方法ですよね。 |
尾崎 | やっぱり「地位も組織も資金も何もない」 って強いですよね。 何もないから、何でもできる。 もし私が准教授ぐらいの肩書があったら これまでしてきたようなバカなことは できなかったでしょう。 大学でフランス語を教えてるといっても、講師だし、 誰も「尾崎さんそれはやめて」なんて言わない。 何もないからこそ、誰の制約も受けずに 自分の思ったことを通してやれる。 だから、何もないことが財産。 |
ーー | 何もないことが財産。 すごく、いい言葉ですね。 (つづきます) |
2014-06-26-THU