糸井 |
原さん、どうも、こんにちは。
大丈夫ですか、お加減は? |
原 |
ああ、糸井さん、すいません今回は。
スケジュールをずらしていただいて。 |
糸井 |
なんでも「鬼のかくらん」だったようで。 |
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原 |
ええ、遅ればせながら
インフルエンザにかかっちゃったみたい。
※この対談は2008年4月に行われました。
でも、本当にスゴいですねぇ、あれ。 |
糸井 |
そんなにでしたか。 |
原 |
治るのに3日かかりました。 |
糸井 |
そりゃタイヘンでしたね。 |
原 |
熱なんか40度ぐらい出ちゃって。 |
糸井 |
インフルエンザ、はじめてですか? |
原 |
うん、アメリカなんかにいると、
かかんないんですよ、あんまり。 |
糸井 |
え、そうなんだ。 |
原 |
シリコンバレーにいたころは、
インフルエンザにかかってる人なんか、
めった見ませんでしたよね。 |
糸井 |
ふーん。 |
原 |
だから、遠いアジアの話だと思ってたんです。
インフルエンザなんて。 |
糸井 |
でも、かかっちゃったんですね(笑)。 |
原 |
昔、バイオの会社なんかやってたくせにね。 |
糸井 |
え、原さんが? |
原 |
うん、バイオとか遺伝子治療関係の会社。 |
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糸井 |
また知らない過去が(笑)。 |
原 |
1988年から1993年にかけてくらいかな、
30社くらい、つくったことがあって。 |
糸井 |
へぇー‥‥。 |
原 |
30社のうちの3分の1、つまり10社くらいは
その後、大きな会社に成長していったんですよ。
残りの20社は、潰れちゃいましたけどね。 |
糸井 |
ベンチャーキャピタリストの「打率」としては
かなりいいんでしょうね、それって。 |
原 |
まぁ、それなりに、そうですね。 |
糸井 |
原さんの「動機」は何だったんですか?
バイオをやってみようと思った、そのときの。 |
原 |
きっかけは、やはり「考古学」なんです。
南米なんかで発掘作業しているときに
熱帯病にかからないためには
バイオテクノロジーが重要だと思って‥‥。 |
糸井 |
ああ、今日も‥‥風邪ひいたって話から、
どこまで行くんでしょうか(笑)。 |
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原 |
メキシコやグアテマラ、
エル・サルバドルなんかで発掘作業をしていると、
「デング熱」や「黄熱病」なんかが
とても深刻な問題として、身近にあるんです。 |
糸井 |
ええ、ええ。 |
原 |
でも、そんな病気はアメリカにはないから、
誰も研究開発をしてくれない。 |
糸井 |
それで、バイオを? |
原 |
だって、太ももとか虫に刺されようもんなら、
タマゴ産みつけられちゃうんですよ。 |
糸井 |
具体的に困ってたわけだ、自分が。 |
原 |
ちなみに、わたし、
ノーベル生理学・医学賞を受賞した
アーサー・コーンバーグという生化学者の
弟子なんです。 |
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糸井 |
また唐突ですが‥‥弟子? ノーベル賞の? |
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原 |
ええ、遺伝子工学の父と呼ばれた研究者で、
DNA生成のメカニズムを解明した大学者。 |
糸井 |
それは、スタンフォードのとき? |
原 |
そう。 |
糸井 |
「デング熱」と「黄熱病」に困って
ノーベル賞科学者に弟子入り? |
原 |
わたしも「思い立ったらすぐ」なものですから、
バイオが重要だと思ったら、
すぐに「先生の生徒にしてください」だなんて
お願いに行ってね。 |
糸井 |
よく弟子にしてくれましたねぇ。 |
原 |
向こうも「いいよ」なんて。 |
糸井 |
だって、解決したい問題は抱えてたけれども
バイオに関しては
まったくの「門外漢」だったわけでしょう? |
原 |
ま、そのへんがアメリカのおもしろいところでね。 |
糸井 |
でも、スタンフォードに入った動機って
考古学の資金をつくるために
商売の基礎を学ぼうってことでしたよね、たしか。 |
原 |
そのとおりなんですが、
マーケティングやファイナンスを
勉強してるだけでは、
「タマゴを産みつけられる」という問題は
解決できないですから。 |
糸井 |
そりゃまぁ、そうですが。 |
原 |
お金の問題はどうにかできるかもしれないけどね。 |
糸井 |
それで、バイオ「も」‥‥なのか。 |
原 |
まぁ、そのほかにも
工学部で光ファイバーの研究もしてました。 |
糸井 |
‥‥そうだった(笑)。 |
原 |
でもね、それだけいろいろやってきたけど、
今のわたしの発想や考えかたって、
そのコーンバーグ先生から影響を受けている部分が
いちばん大きいと思います。 |
糸井 |
ほう‥‥聞きたいですねぇ、そのへんの話。
つまり、原さんの「お師匠さん」ですよね。
原信太郎さんとは、また別の。 |
原 |
たとえば、誰かが自殺しようとしてる場面に
出くわしたとしたら、どうします? |
糸井 |
‥‥止める。ふつうは。 |
原 |
そう、そのたびに「止める」のが
医者たるものの責務であろうと先生は言うわけ。 |
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糸井 |
はい。 |
原 |
でも、もう一歩踏み込んで、
「人はなぜ自殺するのか」の原理を研究して
自殺する人じたいを
なくしちゃえばいいじゃないかと、
そういう考えかたをする人だったんですよ。 |
糸井 |
より根本的なアプローチなわけだ。
たしかに、
今の原さんの考えかたと似てますね。 |
原 |
まあ、そんなわけで、バイオのことについては、
「ライフサイエンスの父」と呼ばれる
世界的な科学者に
手ほどきを受けることができたんです。 |
糸井 |
はぁー‥‥。 |
原 |
そして、そんなふうに
コーンバーグ先生の弟子になれたおかげで、
世界の、ライフサイエンス分野の
ノーベル賞級の学者とは、
たいがい知り合いなんですよ、わたし。 |
糸井 |
‥‥今日も、おもしろくなりそうだなぁ(笑)。
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<続きます!>
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