糸井 | ぼくは、ただの一ファンとして いつも野球を観てるんですが、 連敗のときとか、やっぱりつらいんですよね。 チームと関係があるわけでもない ただの観客なのに、自分でどうかと思うほど、 どーんとしっかり落ち込んだりする。 で、そういうときによく思ったのは、 こういう状態のなかで、 明日も試合をしなきゃいけない監督って、 なにをどう思ってるんだろう、っていうことで。 |
原 | ああ(笑)。まぁ、しかし、 プロ野球のペナントレースっていうのは、 非常に長丁場ですし、 その前の日のゲームで負けていても、 もう毎日のように、試合、試合なわけです。 それも、ゼロ対ゼロの状態からのプレイボールで、 いつもゼロからはじまるわけですよね。 そういう点では非常に新鮮ですよ。 |
糸井 | あ、そうなんですか。つねに。 |
原 | つねに。 前日、重要なゲームを落としていたとしても、 それはもう、いくら考えたって戻ってこない。 |
糸井 | はい。 |
原 | でね、シーズンも終盤になって、 やっぱり致命的な敗北をすることはあります。 「あ、今日負けたらペナントレースは終わるんだな」 というゲームを迎えることは、あります。 |
糸井 | うん、うん。 |
原 | ほんとうに、そのシーズン、勝てなかったと、 確定してしまう試合がくる。 そのときに、がっかりすればいいことであって。 |
糸井 | ああーーー。 |
原 | 優勝できる可能性がある限り、 やっぱり、なんていうか、 朝が来て、日にちが変わるとね、 新しい試合ができる、 また同じスタートラインからできるというのは 非常に切り替えやすいというか。 プロ野球の監督というのは、 そういう職業だとぼくは思いますけどね。 |
糸井 | ああ、そうなんですか。 その考え方と、原さんが選手たちにおくる 「気分よくやってくれ」っていうことばは、 重なる部分がありますね。 |
原 | そりゃそうですよ。 選手にしろ、監督にしろ、やっぱりね、 自分の中で高揚しながら野球に取り組むというのは とても大事なことだと思いますね。 |
糸井 | それは、原さんの性格なんですか。 それとも、野球やってるとそういうふうになるんですか。 |
原 | うーーん、両方じゃないでしょうかね。 ぼくはそういうふうに考えるし、 プロ野球の長いペナントレースというのは、 そういうふうにやらないと、やっぱり乗り切れない。 |
糸井 | ああーー。 |
原 | くよくよしてたってね、 なんにも残りゃしないもんね。 |
糸井 | そのとおりです。 いまは日本中が元気のない状態ですし、 なんにせよ、そういうふうに思っていきたいですよね。 |
原 | そうですよ。 だって、そのときには、全力で、 もうこれがベストだっていう状態で戦ったわけですから。 |
糸井 | うん、うん。 |
原 | しかし、いかにベストを尽くしても、 やっぱり勝負の世界は負けるときがありますよね。 そこでは、潔く、反省をして、 そして、その反省のなかで、 つぎにこれが必要だと思うことがあれば改めていく。 |
糸井 | そうですね。 ほんと、去年のジャイアンツは、 いまおっしゃったようなことを体現しているような場面が たくさんあったような気がします。 |
原 | はい。 |
糸井 | やっぱり、なんというのかな、 「勝ったときに学ぶことは少ない」 という言い方が、よくされますけど、 勝っても学ぶことっていうのは、 じつは、すごく多いですよね。 |
原 | そうですね。 勝ったら、素直に学べます。 |
糸井 | そうですよね。 |
原 | 学ぶものが、すごくあります。 あるけれども、勝ってしまったうれしさで、 その、学び取るべきものを すーっと通り過ぎるケースはありますね。 |
糸井 | ああ、そうか、そうか。 |
原 | 勝ったときはそこを通り過ぎて、 負けたときだけ、 うーん‥‥って考える人がいますね。 |
糸井 | はい。 |
原 | やっぱり、考えるんだったら、 勝ったときも負けたときと同じように、 考えたほうがいい。 考えないんだったら、両方とも考えないほうがいい。 |
糸井 | そうかもしれないです。 それは、覚えておきます。 ありがとうございます。 |
原 | (笑) |
糸井 | うーん、そこだなぁ。 たしかに、勝って学ぶものは、 絶対にありますよね、たくさん。 じゃあ、今年も、たのしみにしております。 |
原 | はい、ありがとうございます。 |
糸井 | 練習前のお忙しいところ、 ありがとうございました。 |
原 | いいえ、ありがとうございました。 |
糸井 | じゃ、最後に写真を。 |
原 | じゃ、(両方のグーの拳を突き出しながら) これをやりましょうか(笑)。 |
糸井 | 恒例のグータッチを(笑)。 |
(原辰徳監督との対談はこれでおしまいです。 最後までお読みいただき、 どうもありがとうございました) |
2013-04-11-THU |