プロ野球選手の孤独。  ──原辰徳の考えるチームプレー。
第1回 大人になった野球選手たち。



糸井 ぼくは、ただの一ファンとして
いつも野球を観てるんですが、
連敗のときとか、やっぱりつらいんですよね。
チームと関係があるわけでもない
ただの観客なのに、自分でどうかと思うほど、
どーんとしっかり落ち込んだりする。
で、そういうときによく思ったのは、
こういう状態のなかで、
明日も試合をしなきゃいけない監督って、
なにをどう思ってるんだろう、っていうことで。
ああ(笑)。まぁ、しかし、
プロ野球のペナントレースっていうのは、
非常に長丁場ですし、
その前の日のゲームで負けていても、
もう毎日のように、試合、試合なわけです。
それも、ゼロ対ゼロの状態からのプレイボールで、
いつもゼロからはじまるわけですよね。
そういう点では非常に新鮮ですよ。
糸井 あ、そうなんですか。つねに。
つねに。
前日、重要なゲームを落としていたとしても、
それはもう、いくら考えたって戻ってこない。
糸井 はい。
でね、シーズンも終盤になって、
やっぱり致命的な敗北をすることはあります。
「あ、今日負けたらペナントレースは終わるんだな」
というゲームを迎えることは、あります。
糸井 うん、うん。
ほんとうに、そのシーズン、勝てなかったと、
確定してしまう試合がくる。
そのときに、がっかりすればいいことであって。
糸井 ああーーー。
優勝できる可能性がある限り、
やっぱり、なんていうか、
朝が来て、日にちが変わるとね、
新しい試合ができる、
また同じスタートラインからできるというのは
非常に切り替えやすいというか。
プロ野球の監督というのは、
そういう職業だとぼくは思いますけどね。
糸井 ああ、そうなんですか。
その考え方と、原さんが選手たちにおくる
「気分よくやってくれ」っていうことばは、
重なる部分がありますね。
そりゃそうですよ。
選手にしろ、監督にしろ、やっぱりね、
自分の中で高揚しながら野球に取り組むというのは
とても大事なことだと思いますね。
糸井 それは、原さんの性格なんですか。
それとも、野球やってるとそういうふうになるんですか。
うーーん、両方じゃないでしょうかね。
ぼくはそういうふうに考えるし、
プロ野球の長いペナントレースというのは、
そういうふうにやらないと、やっぱり乗り切れない。
糸井 ああーー。
くよくよしてたってね、
なんにも残りゃしないもんね。
糸井 そのとおりです。
いまは日本中が元気のない状態ですし、
なんにせよ、そういうふうに思っていきたいですよね。
そうですよ。
だって、そのときには、全力で、
もうこれがベストだっていう状態で戦ったわけですから。
糸井 うん、うん。
しかし、いかにベストを尽くしても、
やっぱり勝負の世界は負けるときがありますよね。
そこでは、潔く、反省をして、
そして、その反省のなかで、
つぎにこれが必要だと思うことがあれば改めていく。
糸井 そうですね。
ほんと、去年のジャイアンツは、
いまおっしゃったようなことを体現しているような場面が
たくさんあったような気がします。
はい。
糸井 やっぱり、なんというのかな、
「勝ったときに学ぶことは少ない」
という言い方が、よくされますけど、
勝っても学ぶことっていうのは、
じつは、すごく多いですよね。
そうですね。
勝ったら、素直に学べます。
糸井 そうですよね。
学ぶものが、すごくあります。
あるけれども、勝ってしまったうれしさで、
その、学び取るべきものを
すーっと通り過ぎるケースはありますね。
糸井 ああ、そうか、そうか。
勝ったときはそこを通り過ぎて、
負けたときだけ、
うーん‥‥って考える人がいますね。
糸井 はい。
やっぱり、考えるんだったら、
勝ったときも負けたときと同じように、
考えたほうがいい。
考えないんだったら、両方とも考えないほうがいい。
糸井 そうかもしれないです。
それは、覚えておきます。
ありがとうございます。
(笑)
糸井 うーん、そこだなぁ。
たしかに、勝って学ぶものは、
絶対にありますよね、たくさん。
じゃあ、今年も、たのしみにしております。
はい、ありがとうございます。
糸井 練習前のお忙しいところ、
ありがとうございました。
いいえ、ありがとうございました。
糸井 じゃ、最後に写真を。
じゃ、(両方のグーの拳を突き出しながら)
これをやりましょうか(笑)。
糸井 恒例のグータッチを(笑)。
(原辰徳監督との対談はこれでおしまいです。
 最後までお読みいただき、
 どうもありがとうございました)

2013-04-11-THU


 


第1回	大人になった野球選手たち。
第2回	個人技とチームプレー。
第3回	プロ野球選手の孤独。
第4回	礎(いしずえ)になる経験。
第5回	転校のこと。
第6回	連覇を意識する。
第7回	潔く反省し、勝って学べ。
速報! 開催決定!  野球で遊ぼう。2 We all play at "PlayBall!"   5月28日 東京ドーム 読売ジャイアンツ×福岡ソフトバンクホークス




野球ファンのみなさん、
いえ、野球ファンじゃない方にも速報します。
「ほぼ日」がプロデュースするプロ野球観戦イベント、
「野球で遊ぼう。」の第2弾が開催決定です!
東京ドームにみんなで集まって、プロ野球を観戦しながら、
糸井重里とゲストの特別ラジオ中継をたのしみ、
試合後はグラウンドに降りて記念撮影、という、
野球ファンならずともたのしめるこのイベントが
さらにパワーアップして再び開催されます。
チケットの発売日やイベントの内容など、
詳細は近日中にお伝えいたしますので、
どうぞおたのしみに!



2011年に行われた「野球で遊ぼう。」は、
こちらからご覧いただけます。