わたしがこの映画のことを知ったのは、
PARCOの「ほぼ日曜日」で
2月22日から3日間開催されたイベント
『本屋さん、あつまる。』の担当として
会場の裏手にいるときだ。
PARCO担当の山下が
「原作のことは何も知らなくて大丈夫だし、
大人計画の平岩紙さんや
岡村靖幸さんも関わっているし、
大好物だとおもう」と、
熱弁をふるってくれた。
そうだよ、そのサブカルラインナップは大好物だ。
付き合いが長くなってきた同僚というものは、
もしかするともっと距離の近い人間よりも、
わたしの趣味趣向を
よく知っていてくれていることも多く、
おすすめは大概外さない。
だから、どの同僚でも
個人的にすすめてくれたものは、
できるだけ手にとったり
観に行ったりすることにしている。
なんとなく、他の人にも言っている感あるおすすめは
スルーする。
って、そこは書かなくてもいいか。
ただ、ひとつだけ山下に質問をした。
「それ、アニメだけど、大丈夫かな。」と。
なにもアニメが嫌いというわけではなくて、
観る習慣がほとんど無いので、
わたしが映画館でやっていけるのかどうかを
知りたかったのだ。
曰く「そういう問題じゃないから大丈夫」と。
なるほど。そうか。
そういう問題じゃないのだったら、大丈夫だ。
翌週の日曜日に、新宿の新宿武蔵野館に観に行った。
まだ「このご時世」が日本で本格的に始まる直前で、
そこはかとない世紀末感というか
世界の終焉感というか
AKIRA感が漂い始めていて、
人は、なけなしのマスクをしはじめ、
ありとあらゆるところに
RPGゲームのセーブポイントのように
アルコールスプレーが置かれることになったくらいで、
イベントの中止はこれからだ、という時分。
深刻さはまだないけど、
充分に閉塞感は感じられる頃合いだった。
わたしは、この映画を、
この時期に観に行ってよかったと思っている。
内容を身も蓋もなく説明すると
「ヤンキーがバンドを組んでフェスに出る」
というようなものだ。
そのヤンキーたちが
はじめて楽器を手にして
音を出したときのシーンが、一番よかった。
音が出たという驚きと、
その音の描写が本当によかったのだ。
あ、そっか、音とリズムは
人間にとってこういうものだったんだよな、と
原始の時代の音楽のことまで
考えてしまった。
一瞬頭の中に、
緑の草が生い茂る風通しの良い大地で、
手にしている道具で音を出して
びっくりして喜んでいる、
毛皮をたすきにかけてちょっとデカ目の
これまた毛皮のズボンをはいた
人間の祖先が
あたまに思い浮かんだ。
そして、草の上をすべるように吹き渡る風に
自分も触れられたような気がして、
なにかが楽になった感じがした。
もちろん映画はその場面だけじゃなくて、
全編最高だった。
そして、これを作っていたときは、
大変だったろうけど
たのしかっただろうなと思って、
関わることができた人たちが
うらやましくなった。
映画館を出た時は、
だいぶ気分も機嫌もよくなっていた。
そしてそれは今も続いている。
こんなご時世だけど。