もくじ
第0回プロローグ 行政文書保全指導員になるまで。 2016-06-28-Tue
第1回「指導・助言」とは、できるように考えること。 2016-06-28-Tue
第2回無理をしないかたちで、どうやるか。 2016-06-28-Tue
第3回今を未来に伝えるために。 2016-06-28-Tue
第4回地域の資料を守る仲間をふやしたい。 2016-06-28-Tue

ことばに込められた思いをどのように残していくのかに関心があります。
多くの人に伝わる表現方法をまなび、
自分の伝え方をみつめなおしたく、塾に参加しました。

防塵マスクや刷毛などの、資料レスキューグッズは、
すぐ手の届くところに、まとまっています。

未来に伝えるために。
地域資料保全に挑む。

担当・uno

大規模自然災害などにより被災した資料を、
保全し、復旧への作業を行う活動は、
阪神・淡路大震災以降、全国で行われています。

「資料レスキュー」と呼ばれるこの活動の
対象は、古文書や植物標本、写真など、
その活動によりさまざまです。

2011年5月から、行政文書のレスキューを中心に、
回数は多くありませんが、参加しています。

こういう活動があることを多くの方に知ってもらえれば、
より多くの資料が残っていくのではないか…と考え、
活動が日常の一部となっている、林さんに
話を聞いてみようと思いました。

行政文書のレスキューの初期段階では、
新聞紙や段ボール、ビニールひもなどを使ったりと、
生活の身近なものも用いられているのですが、
そのような方法については、
本やウェブでも見ることができるので、
なかなか記されない、
活動に対する思いや資料を残すことについて聞きました。

プロフィール
林 貴史(はやし・たかし)さんのプロフィール

第1回 「指導・助言」とは、できるように考えること。

常総市行政文書保全指導員の林貴史さん。
東日本大震災後は釜石市や陸前高田市で、
津波によって被災した行政文書の復旧を行ってきました。
その経験を常総市での活動に活かすため、
2016年1月から、行政文書保全指導員を委嘱されました。

一口に「水損した行政文書」と言っても、
濡れの程度、紙の素材、カビの有無などにより、
その状態はさまざまです。
保存修復の専門家からのアドバイスをもとに、
どのように復元をしていくかを、
市の担当者と考えたり、
見学に来た人に説明したりされています。

行政文書保全指導員の職務は「指導・助言」とのこと。
でも、わたしがボランティアで何回か行っている時は、
ミーティング室でパソコンに向かっていることも多い気が…
「最初はみんなと一緒にやることが多いけれども、
 ある程度できるようになったら、
 必要な処置ができているかを確認したり、
 全体をみてどういう体制がいいかを考えたりしています。

 もちろん、状況によって作業もやるけれども、
 作業を目いっぱいやることになると、
 そこだけに目が行って、全体に目が届かなくなるので。

 学問的な理想をめざすと、
 できないところがどうしても出てきてしまう。
 理想と現実のギャップが大きいと
 『できない』で終わってしまうけれども、
 そこを縮めるのが指導・助言にあたる部分じゃないかな。」

それは、復元のために行う技術などを、
細かいタスクにわけて、
行いやすくすることなのでしょうか?

「そういう部分もあるし、あとは、
 理想的な状態に向かうためには、
 階段を何段ものぼっていかなければいけない。
 その階段の段数が多すぎて諦めることのないように、
 目標を設けることが必要になる。
 一度にそこまでは上がらなくていいよということで、
 最終的な理想へと向かうようにしたりする部分もある。

 具体的な作業をどうしたらいいのかというのは、
 1つひとつの資料に向き合ってみていくしかない。
 でも、求められているのは、
 常総市っていう1つの地域の中で、
 どういうかたちでやったら理想的なかたちで
 伝えていくことが可能かを模索するために、
 いろいろなことを考えていくことじゃないかな。」

パソコンに向かって行う作業のほかに、
林さんが行うことが多いのが、
被災状況や作業を説明することです。
その日の見学者や、初めてボランティアに来た人が
たとえ1人だったとしても、
説明をされています。
それは、常総市の予算を使っている作業、
つまり税金が使われているので、説明責任を果たすという
側面もあるのでしょうが、
それ以上に、こういう活動を知ってほしいという
思いからのようです。

知ってもらうことで、
今後、何かの理由で資料が水損したとしても、
復元することができることを覚えてもらえれば、
やむを得ず捨てることがなくなるからです。

正直を言うと、「指導・助言」いうことばに、
現場で先頭に立って作業をし、方法を伝える
イメージを持っていました。
なので、パソコンに向かう姿が不思議だったのですが、
現状からできることを考え、行っていけるように、
コーディネートをすることを、日々の活動の中で
自らに課されていることの結果でした。

(つづきます)

第2回 無理をしないかたちで、どうやるか。