どうぞ見ていってね、の町
高知県黒潮町は、名前のとおり黒潮をのぞむ海辺のまちです。
高知空港から車で2時間もかかります。
「土佐くろしお鉄道」という電車は通っていますが、
1時間に1本の特急でも2時間弱。
高速道路は通っていません。
カツオの一本釣りで有名な船団が出航する港があり、
遠洋漁業の漁師さんが昔から、多い町です。
↓漁師さんが作ってくれたカツオのたたきを食べました
黒潮町の隣には、四国有数の観光スポット
「四万十川」を要する「四万十市」があります。
四万十川めがけた観光客が
素通りしてしまいがちな町です。
おそらくこれを読んでいる人も、
四万十川に比べると知らない人が多そうな町です。
「るるぶ」などの旅行ガイドブックを見ても、ほとんど表紙は
「四万十」。
「黒潮」という文字は見当たりません。
ところがです。
「黒潮町に取材にきました」と町の人に言うと、
「ええっ!?」とか、「なんで!?」という人は全くいません。
「町をじっくり見ていってください」
という人ばかりです。
喫茶店のマスターも、ガソリンスタンドのおじちゃんも、
道を教えてくれた小学生も、どこか自信がある風にそう言います。
町の人は隣にある観光名所「四万十川」にまったく嫉妬していません。
コンプレックスがなさそうなんです。
いっぽうの、わたしはコンプレックスのかたまりでした。
トーキョーコンプレックスです。
わたしは埼玉県で生まれ育ちました。祖父母も皆、埼玉県。
でも、埼玉への愛着はずっと、何もなくて、
何かというと「埼玉には何もないんですよ」とか、
「買い物は東京に行くしかないよね」とか、言っていました。
おそらく、取材でも来たら「なんでですか?」と
言ってしまうでしょう。
黒潮町民の、その自信はどこからくるのか。