もくじ
第1回「ほぼ日の塾」で知りたかったこと 2016-06-28-Tue
第2回黒潮町のこと 2016-06-28-Tue
第3回すごい美術館のこと 2016-06-28-Tue
第4回すごい美術館の作り方 2016-06-28-Tue
第5回おいしいごはん 2016-06-28-Tue
第6回ハイヒールよりTシャツ 2016-06-28-Tue

趣味は外国人の道案内。1歳の娘がいます。

砂浜とTシャツとわたし

第4回 すごい美術館の作り方


高知県黒潮町の「一見何もない」砂浜で行われる、
年に一度のTシャツアート展。
1000枚のTシャツを炎天下、砂浜に並べるもので、
開催には、並べる人がいなくてなりません。

毎年、町の人と全国からのボランティアでTシャツを展示する作業が
行われています。
取材の時は、この準備作業から見せていただきました。

東京からの大学生や県外からの常連ボランティアに混じって、
町の人もたくさん。20名ほど。
わたしはこれがこの美術館の一番すごくて素敵なところを
作っていると、思いました。

比較のため、いわゆる普通の美術館を想像してみます。
きれいな建物があります。
有名な絵が来るという企画展があります。
チケットを買って、見に行って、眺めます。
作品の解説が一つ一つに書いてあります。
「作家が修行中の1枚。まだ作風に悩み、揺れる心情が現れている」
とかなんとか。
なるほど、修行中の1枚か。きれいだけど。
音声ガイド。

きれいなものは自分で決める

いっぽうの、砂浜美術館では
きれいなものは自分たちで決めます。
展示の時。
今年、Tシャツがきれいに見える場所。
自分たちの町の海と青が一番引き立つような場所。
外から手伝いにきた人に説明したりもします。

ワイワイ、外からきた人や、ずっと町を知っている人が、
ワイワイいいながら、
「自分がきれい」だと思う景色を決めていきます。
人によって違うことも、話しているからわかります。

「ここがいいねえ」とか、「見上げるのがいい」とか、
時間帯による違いとかも、
準備の人たちが一通り、話します。

展示が始まると、その考え方が生きているんだな、
と考えさせられます。
見に行って、砂浜に説明文はありません。
なぜなら、
スタッフみんなが「きれいなものは自分たちが決めるのが一番だ」と
思っているから、
特に「ここがきれいです」とか、「これがおすすめです」とか、
言われません。

「まあ、見ていってくださいね」。
それだけの発言になるのは、
何がきれいか、何がいいかは、自分で決めることだと
町の人と、砂浜美術館に関わっている人みんなが
わかって思っているからだと思います。

例えば今年はいつにない暴風雨になったそうです。
その時の写真を送っていただきました。

雨と風でTシャツが大変なことになっています。
でも、これはこれで滅多にない「作品」と、
スタッフの方は写真におさめたそうです。

わたしも見に行って、浜で時間を過ごして、
自分なりに好きなところを見つけました。
自分で見つけて決めたから、すごく好きになりました。

これは砂浜の展示会場の入り口から撮った写真。
浜と、Tシャツが「うわ〜」って広がる、
最初の感動が感じられる場所が
わたしの一番のお気に入りです。

もともと、砂浜美術館を28年前に立ち上げたのは、
町の人です。
自分の生まれ育った海や浜は、そのままですばらしい。
建物はいらない。
そんな思いの中で、
自分たちの愛する海や浜をきれいに見せる「仕掛け」「象徴」として、
Tシャツをひらひらさせようという企画が生まれたのだそうです。

比べて、わたし自身にはそんなに大事にしたい景色もない。
新興住宅地で生まれ育ったから。家ばっかりだったから。
観光パンフレットに乗るようなところがないから。
そう思っていました。

でも、いいものや、きれいなものは、
誰かが教えてくれたり、決めてくれたりするものじゃなかったんだ、
と教わりました。

砂浜美術館
http://www.sunabi.com/

第5回 おいしいごはん