たのしげな人たち
担当・山田真寛
第2回 デザイナーのゆりえー
- まーさー
- 竹富島の「星砂の話」の絵を描いてた
ふーみーに会ったときは、
もう僕ら沖永良部の絵本のことやってた? - ゆりえー
- やってた。
- まーさー
- そのときはさ、沖永良部の
「てぃんがまプロジェクト」は、
最初から絵本つくることになってた?

- ゆりえー
- うん。
まーさーが物語を何分割かして描いた絵があって、
相談してるところだった。 - まーさー
- あ、もうあの落書きみたい絵があったのね。
- ゆりえー
- うん(笑)。
島の人が書いた沖永良部のことばのお話があるから、
こういう感じで絵をつけて絵本にして、
それ使って言語復興のことやりたいって、
一枚A4持ってきて。

- まーさー
- そうだったね。
共同研究としてやれば、
ゆりえーが京大の仕事としてできるから。
最初はあのA4一枚だけだったの? - ゆりえー
- 一枚だけだった。
- ふーみー
- ふんふん、そこから今のかたちまで。
- ゆりえー
- その一枚をもらって、
じゃあこれをどういうふうにしたら
使いやすい絵本になるかって考えた。 - まーさー
- その辺は、作者の人や、
僕ととくちゃんのことばチームは、
何も考えてないんだよね。
全部やってもらったんだ。 - ゆりえー
- それがうちの仕事だから、役割分担で。
そこまで考えてくれなくていい(笑)。 - ふーみー
- それはしない方がいいの、んふふふふふ。
- ゆりえー
- それはあたしたちの仕事っていうか、
考えることだから。
サンプルをいろいろ作って…。 - まーさー
- いっぱい作ったねー、ほんと。
- ゆりえー
- 形はミッフィーサイズと、21センチの正方形と、
A5横と、三種類作って、
それぞれに違う文字組パターン。
島の人たちにどれがいいかって見てもらって、
それで、ミッフィーサイズに決まった。
あと読み聞かせ用に、
もっと大きい版がほしいとかいろいろ聞けた。 - まーさー
- いろんなことがそうだけど、
サンプル作るとかもさ…助かった、すごく(笑)。
僕らはたいして何も提案してないのに…。
普通やるもんなの、そういうの? - ゆりえー
- うん、サンプル作りますよ。
- まーさー
- あ、そういうもんなのか。あんなにいっぱい?
- ゆりえー
- あんなにいっぱいは作らない。
島の人たちに実際使ってもらって、
いろんなテストをしたいって言うから、
必要なだけ作った。 - まーさー
- ああ、そうだね。
実際使ってもらって、
フィードバックがほしかったんだ。 - ゆりえー
- 使う前の、かたちを見るサンプルは、
思いついた分だけつくるけど。 - まーさー
- ふーん。
- ゆりえー
- GK京都のなぐなぐとはまーとつくってる、
与那国のことばあそび絵本も、
何パターンも作ってたじゃん。 - まーさー
- ああ、そうだね。
- ゆりえー
- やっぱりそれって、大きさどれがいいとか…。
- ふーみー
- 試行錯誤を。
- ゆりえー
- 試行錯誤を。
作ってみないとわかんないから、
文字の大きさどれがいいとか。
特にこれは遠くの島の人とか、
デザイナーじゃない人たちに見てもらうから。 - まーさー
- デザイン面ではゆりえ―に、
ほんとうにお世話になっております(笑)。
てぃんがまシリーズの絵本づくりはさ、
どんなことが楽しい?

- ゆりえー
- てぃんがまシリーズは、知らないことばを…、
ことばをデザインしてるのが楽しい。 - ふーみー
- ふんふんふんふん。ことばをデザイン?
- まーさー
- ことばをデザインって、
けっこういろんなことがそうじゃないの? - ゆりえー
- んーん。
絵本をつくるって、例えば日本語だけの絵本とか、
たいがい一つでしょ、ことば。
二つの言語が同時に、
同じものの中に入ることはあんまりない。
それに地域言語学習のことも考えて、
あんなに単語ごとに切っちゃうとか、ないよ。 - まーさー
- あーなるほどね。
あんまりないことだからおもしろい? - ゆりえー
- うん、あんまりないっていうか、
そういうのをね、読む人たちが「使う」ところ。
あれはただ読むだけの絵本じゃなくって、
使う絵本だから、これみんなどうやって使うんだろう
っていうワクワク感かな。 - まーさー
- そっかそっか。
- ゆりえー
- どういうふうにつくったら、使いやすいかな、とか。
- まーさー
- どうやって使うんだろうって想像するね。
- ゆりえー
- どういうふうに使うかな、
お母さんが子どもと隣どうしで読むときに使いやすいかな、
子どもが寝転がってても読みやすいかな、とか。 - まーさー
- ふむふむ。
- ゆりえー
- いろんなシチュエーションを想像しながら、
ああかなこうかなっていうことが、おもしろい。
それにそういうのにフィードバックが来るところも。 - まーさー
- あーそうだね。
フィードバック来るね、つくった後も。
僕らは手に取る人たちとの距離が近いから。
それはいいよね。 - ゆりえー
- そうそう。
- まーさー
- うんうん。
でもさ、実際手に取る人がどう使うか
わかんないっていうのは、
だいたいなんでもそうじゃない? - ゆりえー
- どう使うかわからないものって、そうないと思う。
- まーさー
- そうなの?道具以外でだよ?
道具は目的が決まってるけどさ。 - ゆりえー
- あ、例えばあたしがやってきた仕事で言ったらね。
- まーさー
- うん。
- ゆりえー
- 広告は、チラシだったら配る、読む、捨てる。
別にそれをどう使う、っていうのはないでしょ。 - まーさー
- そりゃそうだよね、使うものじゃないから。
- ゆりえー
- 雑誌のデザインやってたときは、それ読む。
- まーさー
- 雑誌はさっきの絵本のことでいうとさ、
読むときも、友だちなんかとキャッキャしながら、
見せあいながら読むとかさ、
一人で、カフェで読むのか、お家で読むのかとかさ。 - ゆりえー
- でもさ、雑誌はもう定型で決まってるから、
あそこまで考えない。 - まーさー
- あ、そこの自由がないってことね。
僕らの絵本は、もうゼロからつくってるからか。 - ゆりえー
- そうそうそうそう、ゼロからつくるから。
絵本でも、普通に絵本つくると、
そこに書き込もうとか、それで何かするとか考えないよ。 - まーさー
- あ、考えないか。書き込むことも。
- ゆりえー
- そう、考えない。
「てぃんがまシリーズ」の絵本は、
書き込んでいくことで、
それが地域言語の教材、ノートの代わりになっていくとか、
子どもが絵を描き足してく落書き帳になるとか、
そういうふうな目的も含めたものでしょう。
そういうのって、つくってこなかったから。 - まーさー
- ふむふむ、なるほどね。
- ゆりえー
- それがすごい楽しい。
- まーさー
- そうだね。
作者の人が自分の物語について使ったことばだけど、
「てぃんがま」はひょーむに(沖永良部語上平川方言)で、
「落書き」とか「手いたずら」みたいな意味だし。
僕らとしては、ノートにもなってほしいし、
落書き帳にもなってほしいし、
で、気づいたら地域言語の教材にもなっていってほしい。 - ゆりえー
- そうそうそうそう。
- まーさー
- はー、そういうのが、いっぱいぶち込まれてるのが。
- ゆりえー
- 「てぃんがまシリーズ」。
他にはあまりないかな。
あるのかもしれないけど、
あたしがやってきた仕事にはないから。 - まーさー
- そうだね。
しかも、ぶち込んでんのは僕ら自身だからね。 - ゆりえー
- そうそうそうそう。
こういうこともできんじゃないのって。

- まーさー
- できんじゃないのって言って、
どんどんやってんのか、詳しすぎることばの解説とか。
はーそりゃあ楽しいわ。 - ふーみー
- ふんふん。
- ゆりえー
- そもそも定型がないから、
最初のかたちからつくってく感じが、
やっぱりすごいおもしろいよ。 - まーさー
- そっか、新しいものつくるからおもしろいのか。
そういうチャンスがあったら、やる。 - ゆりえー
- うん。
- まーさー
- そうだね、新しいものは、そうつくれないね。
- ゆりえー
- うん、つくれない。
デザイン頼まれるときは、今あたしたちが作ってる、
何ページ、版型いくつっていうのは、
だいたい決められてくるから。 - まーさー
- 「言語復興の港」でつくるものは、
デザインだけど、作品ぽくなってんのかな。 - ふーみー
- そうだね、自分で裁量するところがおっきい。
ぜんぶ自分たちで決めれる。