もくじ
第1回「言語復興の港」のこと 2016-06-28-Tue
第2回デザイナーのゆりえー 2016-06-28-Tue
第3回絵描きのふーみー 2016-06-28-Tue
第4回何を残すか 2016-06-28-Tue
第5回責任持って、にぎってる 2016-06-28-Tue
第6回なろうとしてこうなった 2016-06-28-Tue

立命館大学の研究員です。琉球のことばの研究をしています。
課題2が、すがすがしいほどのできなさだったので、課題3では、仲間のことばを借りて、お届けします。

たのしげな人たち

担当・山田真寛

第2回 デザイナーのゆりえー

まーさー
竹富島の「星砂の話」の絵を描いてた
ふーみーに会ったときは、
もう僕ら沖永良部の絵本のことやってた?
ゆりえー
やってた。
まーさー
そのときはさ、沖永良部の
「てぃんがまプロジェクト」は、
最初から絵本つくることになってた?

ゆりえー
うん。
まーさーが物語を何分割かして描いた絵があって、
相談してるところだった。
まーさー
あ、もうあの落書きみたい絵があったのね。
ゆりえー
うん(笑)。
島の人が書いた沖永良部のことばのお話があるから、
こういう感じで絵をつけて絵本にして、
それ使って言語復興のことやりたいって、
一枚A4持ってきて。

まーさー
そうだったね。
共同研究としてやれば、
ゆりえーが京大の仕事としてできるから。
最初はあのA4一枚だけだったの?
ゆりえー
一枚だけだった。
ふーみー
ふんふん、そこから今のかたちまで。
ゆりえー
その一枚をもらって、
じゃあこれをどういうふうにしたら
使いやすい絵本になるかって考えた。
まーさー
その辺は、作者の人や、
僕ととくちゃんのことばチームは、
何も考えてないんだよね。
全部やってもらったんだ。
ゆりえー
それがうちの仕事だから、役割分担で。
そこまで考えてくれなくていい(笑)。
ふーみー
それはしない方がいいの、んふふふふふ。
ゆりえー
それはあたしたちの仕事っていうか、
考えることだから。
サンプルをいろいろ作って…。
まーさー
いっぱい作ったねー、ほんと。
ゆりえー
形はミッフィーサイズと、21センチの正方形と、
A5横と、三種類作って、
それぞれに違う文字組パターン。
島の人たちにどれがいいかって見てもらって、
それで、ミッフィーサイズに決まった。
あと読み聞かせ用に、
もっと大きい版がほしいとかいろいろ聞けた。
まーさー
いろんなことがそうだけど、
サンプル作るとかもさ…助かった、すごく(笑)。
僕らはたいして何も提案してないのに…。
普通やるもんなの、そういうの?
ゆりえー
うん、サンプル作りますよ。
まーさー
あ、そういうもんなのか。あんなにいっぱい?
ゆりえー
あんなにいっぱいは作らない。
島の人たちに実際使ってもらって、
いろんなテストをしたいって言うから、
必要なだけ作った。
まーさー
ああ、そうだね。
実際使ってもらって、
フィードバックがほしかったんだ。
ゆりえー
使う前の、かたちを見るサンプルは、
思いついた分だけつくるけど。
まーさー
ふーん。
ゆりえー
GK京都のなぐなぐとはまーとつくってる、
与那国のことばあそび絵本も、
何パターンも作ってたじゃん。
まーさー
ああ、そうだね。
ゆりえー
やっぱりそれって、大きさどれがいいとか…。
ふーみー
試行錯誤を。
ゆりえー
試行錯誤を。
作ってみないとわかんないから、
文字の大きさどれがいいとか。
特にこれは遠くの島の人とか、
デザイナーじゃない人たちに見てもらうから。
まーさー
デザイン面ではゆりえ―に、
ほんとうにお世話になっております(笑)。
てぃんがまシリーズの絵本づくりはさ、
どんなことが楽しい?

ゆりえー
てぃんがまシリーズは、知らないことばを…、
ことばをデザインしてるのが楽しい。
ふーみー
ふんふんふんふん。ことばをデザイン?
まーさー
ことばをデザインって、
けっこういろんなことがそうじゃないの?
ゆりえー
んーん。
絵本をつくるって、例えば日本語だけの絵本とか、
たいがい一つでしょ、ことば。
二つの言語が同時に、
同じものの中に入ることはあんまりない。
それに地域言語学習のことも考えて、
あんなに単語ごとに切っちゃうとか、ないよ。
まーさー
あーなるほどね。
あんまりないことだからおもしろい?
ゆりえー
うん、あんまりないっていうか、
そういうのをね、読む人たちが「使う」ところ。
あれはただ読むだけの絵本じゃなくって、
使う絵本だから、これみんなどうやって使うんだろう
っていうワクワク感かな。
まーさー
そっかそっか。
ゆりえー
どういうふうにつくったら、使いやすいかな、とか。
まーさー
どうやって使うんだろうって想像するね。
ゆりえー
どういうふうに使うかな、
お母さんが子どもと隣どうしで読むときに使いやすいかな、
子どもが寝転がってても読みやすいかな、とか。
まーさー
ふむふむ。
ゆりえー
いろんなシチュエーションを想像しながら、
ああかなこうかなっていうことが、おもしろい。
それにそういうのにフィードバックが来るところも。
まーさー
あーそうだね。
フィードバック来るね、つくった後も。
僕らは手に取る人たちとの距離が近いから。
それはいいよね。
ゆりえー
そうそう。
まーさー
うんうん。
でもさ、実際手に取る人がどう使うか
わかんないっていうのは、
だいたいなんでもそうじゃない?
ゆりえー
どう使うかわからないものって、そうないと思う。
まーさー
そうなの?道具以外でだよ?
道具は目的が決まってるけどさ。
ゆりえー
あ、例えばあたしがやってきた仕事で言ったらね。
まーさー
うん。
ゆりえー
広告は、チラシだったら配る、読む、捨てる。
別にそれをどう使う、っていうのはないでしょ。
まーさー
そりゃそうだよね、使うものじゃないから。
ゆりえー
雑誌のデザインやってたときは、それ読む。
まーさー
雑誌はさっきの絵本のことでいうとさ、
読むときも、友だちなんかとキャッキャしながら、
見せあいながら読むとかさ、
一人で、カフェで読むのか、お家で読むのかとかさ。
ゆりえー
でもさ、雑誌はもう定型で決まってるから、
あそこまで考えない。
まーさー
あ、そこの自由がないってことね。
僕らの絵本は、もうゼロからつくってるからか。
ゆりえー
そうそうそうそう、ゼロからつくるから。
絵本でも、普通に絵本つくると、
そこに書き込もうとか、それで何かするとか考えないよ。
まーさー
あ、考えないか。書き込むことも。
ゆりえー
そう、考えない。
「てぃんがまシリーズ」の絵本は、
書き込んでいくことで、
それが地域言語の教材、ノートの代わりになっていくとか、
子どもが絵を描き足してく落書き帳になるとか、
そういうふうな目的も含めたものでしょう。
そういうのって、つくってこなかったから。
まーさー
ふむふむ、なるほどね。
ゆりえー
それがすごい楽しい。
まーさー
そうだね。
作者の人が自分の物語について使ったことばだけど、
「てぃんがま」はひょーむに(沖永良部語上平川方言)で、
「落書き」とか「手いたずら」みたいな意味だし。
僕らとしては、ノートにもなってほしいし、
落書き帳にもなってほしいし、
で、気づいたら地域言語の教材にもなっていってほしい。
ゆりえー
そうそうそうそう。
まーさー
はー、そういうのが、いっぱいぶち込まれてるのが。
ゆりえー
「てぃんがまシリーズ」。
他にはあまりないかな。
あるのかもしれないけど、
あたしがやってきた仕事にはないから。
まーさー
そうだね。
しかも、ぶち込んでんのは僕ら自身だからね。
ゆりえー
そうそうそうそう。
こういうこともできんじゃないのって。

まーさー
できんじゃないのって言って、
どんどんやってんのか、詳しすぎることばの解説とか。
はーそりゃあ楽しいわ。
ふーみー
ふんふん。
ゆりえー
そもそも定型がないから、
最初のかたちからつくってく感じが、
やっぱりすごいおもしろいよ。
まーさー
そっか、新しいものつくるからおもしろいのか。
そういうチャンスがあったら、やる。
ゆりえー
うん。
まーさー
そうだね、新しいものは、そうつくれないね。
ゆりえー
うん、つくれない。
デザイン頼まれるときは、今あたしたちが作ってる、
何ページ、版型いくつっていうのは、
だいたい決められてくるから。
まーさー
「言語復興の港」でつくるものは、
デザインだけど、作品ぽくなってんのかな。
ふーみー
そうだね、自分で裁量するところがおっきい。
ぜんぶ自分たちで決めれる。
第3回 絵描きのふーみー