もくじ
第1回「言語復興の港」のこと 2016-06-28-Tue
第2回デザイナーのゆりえー 2016-06-28-Tue
第3回絵描きのふーみー 2016-06-28-Tue
第4回何を残すか 2016-06-28-Tue
第5回責任持って、にぎってる 2016-06-28-Tue
第6回なろうとしてこうなった 2016-06-28-Tue

立命館大学の研究員です。琉球のことばの研究をしています。
課題2が、すがすがしいほどのできなさだったので、課題3では、仲間のことばを借りて、お届けします。

たのしげな人たち

担当・山田真寛

第3回 絵描きのふーみー

まーさー
ふーみーとは、竹富島の民話
星砂の話」の絵本をつくってきてるけど、
こないだ3月に沖縄と沖永良部に一緒に行って、
別のプロジェクトが始まったよね。
ふーみー
始まったね、ほいほいと、ふたつも。
まーさー
あれに行ったのもさ、2月頃に、
「今週中に安いチケット取れるんだったら、
旅費出せるけど沖縄行く?」とかいきなり聞いて、
それでひょいっと行ったんだ。

ふーみー
行った行った。
まーさー
それでほんとに行くことになってから、
多良間島のことばの研究してるかよこーと
沖縄で会えるように約束してね。
ふーみー
うん。
まーさー
しかもふーみーは沖縄に行くだけだったけど、
「そのときに僕ら、沖永良部に行くけど行く?」
って聞いたら、これも「行くよ」って(笑)。
ふーみー
そうそうそう、なんか勝手について行って。
ふふふふふ。
ゆりえー
そしたら、もう一つ仕事ができたんだよね。
まーさー
そうだ、沖永良部の民話「塩一升の話」で、
ちょっと違うタイプの絵本つくることになったんだな。
それで島にいる間に、島の人の話聞いたり、
お話の場面になりそうな場所を見に行ったりして。
ふーみー
うんうん、これも楽しみ。
ゆりえー
これもいいよね。
まーさー
同じ物語を島の西と東のことばで、
方言差がわかっておもしろいように。
日本語と英語もつけて、言語とか方言とか関係なく、
いろんな言語体系で同じ話をね。
ゆりふみ
四か国語。
まーさー
英語以外は日本国内のことばだから、二カ国四言語だよ。
言語の多様性が見えていいな、これ。
この夏に行ったときに、ことばチームで進めてきまーす。
ゆりふみ
おねがいしまーす。
まーさー
沖永良部からの帰りに沖縄でかよこーと相談した、
多良間の民話「カンナマルクールク」の絵本は、
そこからすごい速かったね。
ふーみー
ん(笑)?まだ終わってないけどね(笑)。
こないだ、まーさーに無駄足を運ばせてしまったけどねー。
まーさー
無駄足?
ふーみー
うん、ギャラリーに。
まーさー
あ(笑)。かよこーががんばって、
ことばの方もけっこう最終形に近くなったし…。
ふーみー
クールクの絵も描けたから、
神戸のギャラリーで展示させてもらうよ
ってお知らせしたのに…。
ギャラリー行ったら、絵本ないよ!みたいな(笑)
まーさー
僕が行った日は別の作品だけ展示してた(笑)。
でもその後で実物借りて、
僕が参加した学会で展示スペースもらって、
日本の方言の研究してる人たちに見てもらえた。
僕らのプロジェクトとか、
たぶん絵とかにも興味なさそうな人たちがメロメロに。
ふーみー
いやいや、よかったです。

まーさー
ふーみーの絵の破壊力は、ほんとすごかった、もう。
まーさー
多良間のかよこーもそうだけど、
僕が行ってない島をフィールドにしてる研究者仲間とか、
島の人たちとも一緒にプロジェクト進められてるし、
たぶん人と何かやるのが好きだな。
ふーみー
あー好きだ好きだー。
ゆりえー
あたしも好き。
まーさー
一人でやるより楽しいし、どんどん進む感じする。
ふーみー
確かに。
あの、絵を描いたりすると、そのとき一人じゃないですか。
まーさー
おう、そうだ。絵は一人で描くね。
ふーみー
基本一人じゃないと、描けない、でしょ?
まーさー
絵描いてるときはさ、誰か見る人のことを考えて描く?
ふーみー
描いている瞬間は考えていないかもしれない。
まーさー
描いてるときは考えないのか。
ふーみー
情報とか資料集めたりとか、
描く前の準備の段階では考えてるけど。
まーさー
ふーむ。
ふーみー
描いてる瞬間は正直考えてないかもしれないです。
ゆりえー
デザインもそうだよ。
デザインしてる瞬間は、見る人のこと考えてない。
ふーみー
ふーん、デザインもそうなんですね。
ゆりえー
で、全部ばーってつくって、
できた画面を今度客観的に、
人が見たらどう思うかって考える。
まーさー
絵もデザインも、オンとオフでやるのかな。
ふーみー
描いてる瞬間は勝負だぜ、みたいな。
その世界との、例えばテキストとか
素材みたいなマテリアルがあるとしたら、
それを自分なりにどう理解して、
今まで集めてきた情報とか、
いろんなものとかを組み合わせて、
絵に出すときに、それに負けないように。
まーさー
そのときは自分の世界なんだね。
でも、そうじゃないときも、つくるのね。
描き終ってから、デザインし終わってから、
「ふう」って、人のことを考える。
ふーみー
ちょっと遠くから見たりね。
ゆりえー
そう、遠くから、客観的に。
つくってるときはめちゃくちゃ主観。

ふーみー
確かに。瞬発力いりますよね。
ゆりえー
瞬発力とすごい集中力いりますよね。
まーさー
そっかそっか。
じゃあなんで人とやるの好きなの?
ふーみー
描いてる瞬間はすごい内にこもってるんだけど、
それだけで簡潔するのはやっぱり嫌になってきて。
まーさー
絵を描く人は、どうやって人と一緒に何かやるの?
ふーみー
えと、まあ、こういうことですよね。
今、港でやってるようなこと。
まーさー
あ、絵以外のものと組み合わせて、
なんかをつくるってこと?
ふーみー
そうそう。
こういうのも、いいかたちでしたいなってずっと思ってて。
これまでも、注染ていう染色の会社の人と一緒に、
手ぬぐいをつくったりとかしてたんよね。
まーさー
ふむふむ。
ふーみー
個人の方とも、絵本を出したりとか、
そういうことはちょこちょこやってたんだけど。
まーさー
そうなんだ。
ふーみー
でも、なかなかこう、
ほんとにずっと、何十年も続けてやっていきたいな
っていうテーマっていうのは、なかなか見つかってなくて。
でも一人で何かテーマを設定して、
展示をして終わりっていうのは、
広がりがないなあと思ってた。
まーさー
ふむふむ。
手ぬぐいの会社とやってたのは、ふーみーから持ちかけて?
ふーみー
それはたまたま声をかけてもらって。
絵本もそうやったし、あとはギャラリーの人に、
いろんなテーマごとに、展示に参加さしてもらったりとか。
まーさー
ふーん。向こうから声がかかるのか。
ふーみー
そうだね。
そういうのはあったけど、なんか、もうちょっとこう、
ピタッと、こういうテーマではまって、
いろんな人と関係しながらできるのないかな
って思ってたときに、この「言語復興の港」が。
まーさー
ああ、なるほど。
最初は、竹富の「星砂の話」を一緒に絵本にしよう
っていう話だったのに、なんでこんなことに。
ふーみー
なんでこんなことに(笑)。
でも全部つながってる感じだけどね。
まーさー
あ、多良間のかよこー口説いてるときはもう、
島の人で絵描く人いなそうなら、
絵はふーみーに描いてもらおうって思ったのか、オレが。
ゆりえー
そうそう、で、話がこっちに飛んできた。
まーさー
それで、すぐにはお金になんないけどやる?
って聞いたら、二人ともやるって言ったから、
もうやることにしたんだ。
ふーみー
すぐにはお金になんないけどって、
長い目でみると、今そういう一個一個の作業に、
その制作費とかがついてこなくても、
ずっとやってると、
トータルでみると絶対プラスになると思ってる。
まーさー
スパンを広げると。
ゆりえー
初期投資みたいな感じ。
ふーみー
いいことしかないと思います。
だいたい楽しいこと続けてやってると、
いいことがついてくるみたい。
まーさー
無責任に言っちゃうけど、僕もそう思う。
ふーみー
まあでも一番は、楽しいからやってるだけです。
まーさー
真理。
あ、そうだよ、ふーみーは民話が好きって言ってたから。

ふーみー
そうだね、昔から民話とかが好き。
みんなに出会う前に、
日本中にある、口伝えで伝わってて、
書籍化とかもされてなくて、
どんどんなくなっていきそうな民話とかがあれば、
自分で取り上げて、絵本にして、
いっぱいシリーズにして残すようなプロジェクトを
やりたいっていうのを考えてて。
まーさー
あ、そうなんだ!まるっきり港でやってること!
ふーみー
そうそうそう。
ゆりえー
ちょうどよかったんだよね。
ふーみー
そう、めっちゃちょうどよくって。
まーさー
はーん、奇跡か。
ふーみー
琉球のいろんな島の話でやらせてもらえることになって。
まーさー
ふむふむ、内地とかにもすぐ行けるだろうね。
ふーみー
そうだね、全国的なやつを、
何十冊もずっと続けてできればなって思ってたら、
すっごくいいタイミングで、参加させてもらうことになって。
まーさー
今つくってる琉球のことを続けてたら、
他の地域とか外国のこともやりやすくなるんじゃないかな。
そっか、ふーみーはもともとやりたいと思ってたことが、
港でいいかたちでできるから、
楽しくてほいほいやっちゃうのね。
第4回 何を残すか