たのしげな人たち
担当・山田真寛
第3回 絵描きのふーみー
- まーさー
- ふーみーとは、竹富島の民話
「星砂の話」の絵本をつくってきてるけど、
こないだ3月に沖縄と沖永良部に一緒に行って、
別のプロジェクトが始まったよね。 - ふーみー
- 始まったね、ほいほいと、ふたつも。
- まーさー
- あれに行ったのもさ、2月頃に、
「今週中に安いチケット取れるんだったら、
旅費出せるけど沖縄行く?」とかいきなり聞いて、
それでひょいっと行ったんだ。

- ふーみー
- 行った行った。
- まーさー
- それでほんとに行くことになってから、
多良間島のことばの研究してるかよこーと
沖縄で会えるように約束してね。 - ふーみー
- うん。
- まーさー
- しかもふーみーは沖縄に行くだけだったけど、
「そのときに僕ら、沖永良部に行くけど行く?」
って聞いたら、これも「行くよ」って(笑)。 - ふーみー
- そうそうそう、なんか勝手について行って。
ふふふふふ。 - ゆりえー
- そしたら、もう一つ仕事ができたんだよね。
- まーさー
- そうだ、沖永良部の民話「塩一升の話」で、
ちょっと違うタイプの絵本つくることになったんだな。
それで島にいる間に、島の人の話聞いたり、
お話の場面になりそうな場所を見に行ったりして。 - ふーみー
- うんうん、これも楽しみ。
- ゆりえー
- これもいいよね。
- まーさー
- 同じ物語を島の西と東のことばで、
方言差がわかっておもしろいように。
日本語と英語もつけて、言語とか方言とか関係なく、
いろんな言語体系で同じ話をね。 - ゆりふみ
- 四か国語。
- まーさー
- 英語以外は日本国内のことばだから、二カ国四言語だよ。
言語の多様性が見えていいな、これ。
この夏に行ったときに、ことばチームで進めてきまーす。 - ゆりふみ
- おねがいしまーす。
- まーさー
- 沖永良部からの帰りに沖縄でかよこーと相談した、
多良間の民話「カンナマルクールク」の絵本は、
そこからすごい速かったね。 - ふーみー
- ん(笑)?まだ終わってないけどね(笑)。
こないだ、まーさーに無駄足を運ばせてしまったけどねー。 - まーさー
- 無駄足?
- ふーみー
- うん、ギャラリーに。
- まーさー
- あ(笑)。かよこーががんばって、
ことばの方もけっこう最終形に近くなったし…。 - ふーみー
- クールクの絵も描けたから、
神戸のギャラリーで展示させてもらうよ
ってお知らせしたのに…。
ギャラリー行ったら、絵本ないよ!みたいな(笑) - まーさー
- 僕が行った日は別の作品だけ展示してた(笑)。
でもその後で実物借りて、
僕が参加した学会で展示スペースもらって、
日本の方言の研究してる人たちに見てもらえた。
僕らのプロジェクトとか、
たぶん絵とかにも興味なさそうな人たちがメロメロに。 - ふーみー
- いやいや、よかったです。

- まーさー
- ふーみーの絵の破壊力は、ほんとすごかった、もう。
- まーさー
- 多良間のかよこーもそうだけど、
僕が行ってない島をフィールドにしてる研究者仲間とか、
島の人たちとも一緒にプロジェクト進められてるし、
たぶん人と何かやるのが好きだな。 - ふーみー
- あー好きだ好きだー。
- ゆりえー
- あたしも好き。
- まーさー
- 一人でやるより楽しいし、どんどん進む感じする。
- ふーみー
- 確かに。
あの、絵を描いたりすると、そのとき一人じゃないですか。 - まーさー
- おう、そうだ。絵は一人で描くね。
- ふーみー
- 基本一人じゃないと、描けない、でしょ?
- まーさー
- 絵描いてるときはさ、誰か見る人のことを考えて描く?
- ふーみー
- 描いている瞬間は考えていないかもしれない。
- まーさー
- 描いてるときは考えないのか。
- ふーみー
- 情報とか資料集めたりとか、
描く前の準備の段階では考えてるけど。 - まーさー
- ふーむ。
- ふーみー
- 描いてる瞬間は正直考えてないかもしれないです。
- ゆりえー
- デザインもそうだよ。
デザインしてる瞬間は、見る人のこと考えてない。 - ふーみー
- ふーん、デザインもそうなんですね。
- ゆりえー
- で、全部ばーってつくって、
できた画面を今度客観的に、
人が見たらどう思うかって考える。 - まーさー
- 絵もデザインも、オンとオフでやるのかな。
- ふーみー
- 描いてる瞬間は勝負だぜ、みたいな。
その世界との、例えばテキストとか
素材みたいなマテリアルがあるとしたら、
それを自分なりにどう理解して、
今まで集めてきた情報とか、
いろんなものとかを組み合わせて、
絵に出すときに、それに負けないように。 - まーさー
- そのときは自分の世界なんだね。
でも、そうじゃないときも、つくるのね。
描き終ってから、デザインし終わってから、
「ふう」って、人のことを考える。 - ふーみー
- ちょっと遠くから見たりね。
- ゆりえー
- そう、遠くから、客観的に。
つくってるときはめちゃくちゃ主観。

- ふーみー
- 確かに。瞬発力いりますよね。
- ゆりえー
- 瞬発力とすごい集中力いりますよね。
- まーさー
- そっかそっか。
じゃあなんで人とやるの好きなの? - ふーみー
- 描いてる瞬間はすごい内にこもってるんだけど、
それだけで簡潔するのはやっぱり嫌になってきて。 - まーさー
- 絵を描く人は、どうやって人と一緒に何かやるの?
- ふーみー
- えと、まあ、こういうことですよね。
今、港でやってるようなこと。 - まーさー
- あ、絵以外のものと組み合わせて、
なんかをつくるってこと? - ふーみー
- そうそう。
こういうのも、いいかたちでしたいなってずっと思ってて。
これまでも、注染ていう染色の会社の人と一緒に、
手ぬぐいをつくったりとかしてたんよね。 - まーさー
- ふむふむ。
- ふーみー
- 個人の方とも、絵本を出したりとか、
そういうことはちょこちょこやってたんだけど。 - まーさー
- そうなんだ。
- ふーみー
- でも、なかなかこう、
ほんとにずっと、何十年も続けてやっていきたいな
っていうテーマっていうのは、なかなか見つかってなくて。
でも一人で何かテーマを設定して、
展示をして終わりっていうのは、
広がりがないなあと思ってた。 - まーさー
- ふむふむ。
手ぬぐいの会社とやってたのは、ふーみーから持ちかけて? - ふーみー
- それはたまたま声をかけてもらって。
絵本もそうやったし、あとはギャラリーの人に、
いろんなテーマごとに、展示に参加さしてもらったりとか。 - まーさー
- ふーん。向こうから声がかかるのか。
- ふーみー
- そうだね。
そういうのはあったけど、なんか、もうちょっとこう、
ピタッと、こういうテーマではまって、
いろんな人と関係しながらできるのないかな
って思ってたときに、この「言語復興の港」が。 - まーさー
- ああ、なるほど。
最初は、竹富の「星砂の話」を一緒に絵本にしよう
っていう話だったのに、なんでこんなことに。 - ふーみー
- なんでこんなことに(笑)。
でも全部つながってる感じだけどね。 - まーさー
- あ、多良間のかよこー口説いてるときはもう、
島の人で絵描く人いなそうなら、
絵はふーみーに描いてもらおうって思ったのか、オレが。 - ゆりえー
- そうそう、で、話がこっちに飛んできた。
- まーさー
- それで、すぐにはお金になんないけどやる?
って聞いたら、二人ともやるって言ったから、
もうやることにしたんだ。 - ふーみー
- すぐにはお金になんないけどって、
長い目でみると、今そういう一個一個の作業に、
その制作費とかがついてこなくても、
ずっとやってると、
トータルでみると絶対プラスになると思ってる。 - まーさー
- スパンを広げると。
- ゆりえー
- 初期投資みたいな感じ。
- ふーみー
- いいことしかないと思います。
だいたい楽しいこと続けてやってると、
いいことがついてくるみたい。 - まーさー
- 無責任に言っちゃうけど、僕もそう思う。
- ふーみー
- まあでも一番は、楽しいからやってるだけです。
- まーさー
- 真理。
あ、そうだよ、ふーみーは民話が好きって言ってたから。

- ふーみー
- そうだね、昔から民話とかが好き。
みんなに出会う前に、
日本中にある、口伝えで伝わってて、
書籍化とかもされてなくて、
どんどんなくなっていきそうな民話とかがあれば、
自分で取り上げて、絵本にして、
いっぱいシリーズにして残すようなプロジェクトを
やりたいっていうのを考えてて。 - まーさー
- あ、そうなんだ!まるっきり港でやってること!
- ふーみー
- そうそうそう。
- ゆりえー
- ちょうどよかったんだよね。
- ふーみー
- そう、めっちゃちょうどよくって。
- まーさー
- はーん、奇跡か。
- ふーみー
- 琉球のいろんな島の話でやらせてもらえることになって。
- まーさー
- ふむふむ、内地とかにもすぐ行けるだろうね。
- ふーみー
- そうだね、全国的なやつを、
何十冊もずっと続けてできればなって思ってたら、
すっごくいいタイミングで、参加させてもらうことになって。 - まーさー
- 今つくってる琉球のことを続けてたら、
他の地域とか外国のこともやりやすくなるんじゃないかな。
そっか、ふーみーはもともとやりたいと思ってたことが、
港でいいかたちでできるから、
楽しくてほいほいやっちゃうのね。