古賀史健×糸井重里 2人の仕事論。
第2回 業界
- 糸井
- だんだんと、何をやってきたとか、
何を考えたかって自分でわかるようになりますから。
「ああ原寸大がいいな」
って思うのであって。
- 古賀
- でも糸井さんの、特に30歳くらいからの
いろいろなメディアに出たり、テレビに出たりの
活動って、コピーライターっていう仕事を
みんなに認知させるみたいな意識も
たぶんあったんじゃないかと思うんですよね。

-
僕も本のライターというのが
どういう仕事なのかということを
声高に言った方がいいのか、
それはそれとして裏方の人間として、このまんまマイクとか
拡張期とかの役に徹しているのがいいのかっていうのは
ちょっとまだわからなくて。
- 糸井
- うん。
- 古賀
- 糸井さんが当時自分の、例えば極端な話ですけど
「たった1行でそんなお金もらっていいね」
みたいなお話ってあるわけじゃないですか。
-
それに対して、「いやそんなことないよ」って
いう気持ちと、あえてそこに乗っかって
「俺は1行で1000万なんだ」みたいな風に
吹聴する気持ちと両方あったと思うんですけど、
その辺はどうでしたか?
- 糸井
- それはね、当時は自分でも言ってたことが
よくわかってなくて、たぶん厳密にいうと
嘘だったと思うんです。
つまり、何歳になろうが、
若かろうが、年取っていようが、
大手にいようが中小にいようが、
「業界のために」って言い方をものすごくするんですよ。

-
真田幸村の物語で言えば、長野県あたりのね。
あの辺のためにっていうのと、その方が自分が
楽だからっていう気持ちとかが混ざるんですよね。
-
だから自分が、もっとわかりやすい、
サーカスみたいなのの団長だったとして、
「サーカス面白いよ」ってぼくらが
いわれるようになって、
「これからもサーカスの火を絶やさずにね。
ほんとにサーカスって面白いですから。」
っていうのは、自然に言えますよね。
- 古賀
- そうですよね。
- 糸井
- つまり、サーカス業がうまくいってた方が
自分もうまくいくから。エゴだって言葉で
言い切るつもりもないんだけど、
自分の居やすい状況を人は誰でも
作りたいんですよ。
-
だから売れてないけども業界のために
っていうのを声高に言うっていうのは、
なかなか、実は自分でもわかんなくなっちゃう
事だと思うんですよね。
-
出版は特に多いんですけどね。
出版界どうなると思うんだよ、みたいな。
でも、「あんたの作る本が売れたら
そのことじゃなくて嬉しい」みたいな。
そっちの方がうれしいんですよね、実は。
-
ぼくもコピーライターっていう職業があって、
「それはすごいもんだぞ」って言って
くれるんだったら、あれはなんだろうな、
ほんとかなっていう。。
極端に追及すると、本当かなと思ってますね。
嘘をついたつもりはない。
- 古賀
- それは、今振り返っての
- 糸井
- 振り返ってです。
だからわかんないんです、ずっと。
業界のために一生懸命やってくれる人が
いたりするのも、ありがたいことだと
思いますし、その業界に人手が入ってくるとか
そういうのも、考えてみればライバルを
作っているようなものですからね。

-
お笑いの人がよく言うじゃないですか。
あっちの方が露骨だから、「いい若手の芽を
摘んでやる」とか言うじゃない。
- 古賀
- はいはい、言いますね。
- 糸井
- あの方がちょっと本気な気がして。
「お笑い業界ね、どんどん若い
いい人が入ってきたらいいですね」って
プレイヤーとして言うのもね、、
- 古賀
- ああ、そっか。確かに。
- 糸井
- ほんとうに本当か?っていう風に、
三日三晩一人で自問自答したら、ちょっと
混ざりものもある(笑)
- 古賀
- そうですね(笑)
(続きます)