古賀史健×糸井重里 2人の仕事論。
第6回 偽物
- 糸井
- やっぱり吉本(隆明)さんですよね。
吉本さんが、前々から、
いいことやってる時は悪いことやってると思え、
悪いことやってる時はいいことやってると思え、
ぐらいに、全く逆に考えるという。

-
それは大元で、親鸞という人のことを
考えてる時に考えついたことなんだろうけど、
それに近いところで吉本さん自身がそうしようと
思って生きてたってことはよくわかるんですよ。
-
だから吉本さんは、ぼくにとって手の届かないぐらい
遠くにいる先輩なんですね。
でもその先輩は、手が届く場所に
いつでもいてくれるんですよ。
それ何ですかって聞いたら、近所のアホな兄ちゃんの俺に、
こうだってことを言ってくれるわけ。
-
その言ってくれ方が、この間ぼくは偽物だって書いた。
吉本さんのことを想像しながら書くわけです。
吉本さんも偽物なんだよって言うと、
ファンはものすごく怒るかも知れないけど。
つまり、そうなろうとしたから、そうなってるんですよ。
-
例えばの話、何かチケットを、
僕らもチケットもらったりしてますけど、基本は並んで、
あるいは朝何時の電話をかけてチケット取るのが基本で。
入場料払って見るのが基本だみたいなことは
吉本さんを見てて思うんですよね。
-
その姿勢がベースにあるんで、邪魔だ邪魔だつって
火消しが行くのとは俺達は違うわけだから。
誰も邪魔だ邪魔だって言えないで、
そこを突き飛ばして前に出た方がもっといいこと
できるかも知れなくても、順番に列に並んで。
-
そこは無駄になってもコストだぐらいに考えてというのは、
ずっと、ずっと吉本さんを見てて思うことですね。
それでも、吉本さんちの奥さんは
お父ちゃんは偽物だって言うわけで(笑)
- 古賀
- (笑)はああ。
- 糸井
- 吉本さんちのお父さんがいて、あのお父さんは本物だった。
本当にお父ちゃんいい人だけど、うちのお父ちゃんは
そうなろうとしてなってるから本物じゃないって。
でも、俺、今更本物になれないんで(笑)

- 古賀
- (笑)はい。
- 糸井
- そういう吉本さんの方法しかないんですよ。
そう見ると、結局、
ほんとのこと言う偽物がなれる場所なんですよね。
-
谷川俊太郎さんなんかも結構、
僕は偽物で、本物の真似をしてるというようなことを
平気で言いますよね。
あれが姿勢としてあったんじゃないでしょうかね。
-
それがある種上手くいったのが、
社内の人達が案外そのことをわかって動けた気がする。
そこは不思議なぐらい通じたよね。
- (永田)
- だから糸井さんはこうしようって、
ものすごくコンセプトを述べたりっていうことは
そんなにはなくて、いつもの感じでみんな
動いた感じはします。
- 糸井
- 態度についてはこれからも
間違わないんじゃないかなというような気がします。
間違わないぞということでもありますよね。
- 古賀
- そうですね。
- 糸井
- もし間違ったら言ってくださいねっていう。
ちょっといい気になってたら(笑)
(続きます)