古賀史健×糸井重里 2人の仕事論。
第7回 快音
- 古賀
- 僕、今回、自分であんまりこういう言い方
あれなんですけど、ミリオンセラーというのを
初めて経験してみてわかったというのは、
みんな全然知らないんですよ。
『嫌われる勇気』っていう本のこととか…

- 糸井
- とかね(笑)
- 古賀
- これがミリオンセラーになった、とか。
ミリオンセラーってやってみる前はあまねく人達の
所に届くものだって思ってたんですけど、
あ、みんな全然知らないし、誰にも届いてないなって。
もちろん100万人という数はすごいんですけど。
-
聞きたかったのは、糸井さんの中で
ヒットするとかっていうのは、何か自分の中で、
こういうものだというのあるんですかね。
- 糸井
- 『ほぼ日』始めてからは、
もうヒット多様性になりましたね。
- 古賀
- ヒット多様性。
- 糸井
- 生物多様性みたいに。
これもヒット、あれもヒットになりました。
-
だからゲームボードがいっぱいあって、
そのゲームボードの上でこれはヒット、
こっちではせいぜい黒字っていう程度だけでヒット、
こっちでは結構売れたけどヒットとは言いにくいな
みたいなルールをいっぱい持つようになりましたね。
- 古賀
- それはコンテンツ毎に、これのヒットは
このぐらいの基準でというのが何となくあって。
- 糸井
- 全てがコンテンツですということを言い始めて
思うんだけど、例えば古賀さん、前の事務所と
ここの事務所を両方知って、「引越もヒットでしたけど、
それは金銭的に言ったらマイナスになってますよね。
だけど、これヒットなんですよ」って
何がヒットかっていうのも説明できるわけですよね。
-
そういうような、みんなが既に持ってる価値観じゃない
ところに自分の価値観を増やしていくというのを、
たぶんぼくは『ほぼ日』以後
するようになったんでしょうね。
-
100万部に対して5万部はヒットじゃないかというと、
5万部もヒットですよという言い方あるんだけど、
やっぱり100万部があることでの信用度とか発言権とか
それを持つと、次に出した時にはそこと掛け算になって
打ちやすくなりますよね。
-
それはとっても大事なことなんだと思うんですね。
二谷友里恵さんが100万部だった時には
騒がれたじゃないですか。
- 古賀
- (笑)はい、騒がれましたね。
- 糸井
- それは掛け算だってことなんですよね。
- 古賀
- うんうんうん。
- 糸井
- 古賀さんっていう、僕は黒子ですって
言ってた人×100万部だから。2冊目は。
だからもう既に100万部の古賀がいる。
そこは面白いとこだよね。
- 古賀
- 面白いですね。
- 糸井
- 立て続け感が、すごく面白いんですよね。
一発屋って言葉に続いて二発屋っていうの出ないかな(笑)
- 古賀
- (笑)
- 糸井
- 三発屋はないのか。
それじゃ床屋か(笑)

- 古賀
- (笑)そうだなあ。
糸井さんの中では、一山当てたいみたいな
気持ちはあるんですか。
- 糸井
- 小さくね。
だから今のヒット論みたいに言えば、
いつも一山当てたいです。
楽になりたくて仕事してるわけだから。
- 古賀
- それ、おっしゃいますよね。
- 糸井
- 苦しくてしょうがないわけですよ、ぼくは。
めんどくさいし。
- 古賀
- 『ほぼ日』始められた頃に、
働くことが流行ってるというのを
書かれてたじゃないですか。
あの時期と今とでは、仕事に対する
感覚って違うんですか。
- 糸井
- あの時期も、我慢してたんだと思います。
明らかに我慢してた。

-
釣りを一生懸命やる経験と、働くことが
流行ってるという経験が同じで。
前の日に友達の分まで釣りのセットをセッティングして、
糸を巻き直して、用意して、車を運転して、迎えに行って、
じゃ行こうってやってるのって、苦労ですよね。
- 古賀
- うん、そうですね。
- 糸井
- でも、それをやりたくて、楽しくてやってる
わけだからいいんですよ。
それと同じで、『ほぼ日』始めた時に、
『ほぼ日』っていう、
まだ名前もない頃からこういうことって
面白いぞと思ってたんで。
-
釣りするぐらい面白かったんですよ。
それこそ千葉とかに住んでたやつを、車で送ってって、
最終に間に合うように送ってって、そこから帰って、
また仕事してとか、そういうバカらしいことを。
楽しかったんですよね。
-
その時の気持ちは、ちょっと形を
変えてますけど、実は似てますよね。
ずっと1つずつの仕事については、「ああ嫌だ嫌だ。」
- 古賀
- (笑)まあそうですよね。
僕も本書くの嫌です(笑)

- 一同
- (笑)

- 古賀
- 楽しくないです。
- 糸井
- 楽しくないですよね。
- 古賀
- うん、楽しくないです、本当は(笑)。
辛いです。
- 糸井
- 辛いですよね。
- 古賀
- 辛いです、ほんとに辛いです。
- 糸井
- 敢えて言えば、仕事嫌いなのに
こんなにいろいろ手出して、ね。
人から見たらよく頑張ってるなっていうぐらいは
やってるって、何なんでしょうね(笑)
- 古賀
- いや、ほんとにそれわかんないんですけど。
-
例えば僕、三連休とか、仮に休んだとしたら、
やっぱりもう1日半ぐらいで
仕事のことを考えちゃうんですよね。
それはワーカーホリックなのかっていうと、
ちょっと違うんですよ。
-
ほんとに子供の頃にドラクエとかスーパーマリオに
はまってたのとあまり変わらなくて。
ドラクエも、面白さと辛さと両方あるじゃないですか。
なんでずっとこんなスライムとやってなきゃいけないんだ、
早く竜王行きたいのにっていうような感覚が
結構近いんですよね。
-
やっていく1個1個はほんとにめんどくさくて、
スライムと戦うような日々なんですけど、
でもそこ行かないと竜王に会えないしなとか。
ゲームはクリアしないと気持ち悪いじゃないですか。
-
そのクリアして、そこで大きな喜びが
あるわけでもないんですけど、
でもそのクリアに向かって動いているというのが、
目の前に何か課題があったら解かずには
いられないみたいな感じが近いのかな。
- 糸井
- それは今、小さい組織を作ってから
思ったことですか、それとも前から同じですか。
- 古賀
- 前から同じですね。
でも前はもっと露骨な出世欲みたいなのが
あったんですよね。
- 糸井
- 1人のほうがね。
- 古賀
- 1人のほうが。
ライターの中で一番になりたいとか…
- 糸井
- 永ちゃんですよね。
- 古賀
- そうですね(笑)
あいつには負けたくないとか、
そういうチンケな欲はすごくあって。
今それがあるかというと、そこで競争して消耗するのは
なんか勿体ないなという気持ちがあって。
-
結局その中しか見てないわけなので、そこって。
外に目を向けた時の面白さを今ようやく
知りつつある感じですね。
- 糸井
- その意味でも、組織を作って良かったですね。
- 古賀
- そうですね、ほんとに、はい。
- 糸井
- たぶんぼくも同じようなことだと思うんですけど、
やっぱり喜んだ話が聞こえてくるというのが
でかいですよね。
- 古賀
- そうですね。
(続きます)