糸井

ぼくはその校内暴力時代というのを
知らないんですよね。聞くと、西部劇にでてくる
ならず者みたいな人たちだらけですよね。

浅生

ほんとにすごい時代ですよ。
これを言うと、みんなビックリするんですけど、
中学の先生がヌンチャク持ってるんですよ。

糸井

またちょっとさ、ちょっと補色して（笑）。

浅生

いや、これしてないんです！

糸井

ヌンチャク的な白墨とか何かではなくて。

浅生

本物のヌンチャクを持ってる先生がいて、
悪いことすると、ヌンチャクで頭をやられるんですよ。
でも、生徒側もただではやられないので、
そこに対抗しに行くワルの生徒は・・・。
っていう、今考えると、マッドマックスの世界です。
　 ＊マッドマックス・・・警察官と暴走族が暴れまわるアクション映画。

糸井

でも、その地域にもよるんでしょ。

浅生

もちろん、そうだと思いますけど。
うちは、神戸の中学校・高校の中では比較的、
まだマシなほうではあったんです。

糸井

ヌンチャクが？

浅生

まだマシな方だったんです。

糸井

そうするともう、
イガイガした鉄の玉とかになっちゃうじゃない。

浅生

バレーボールに、灯油をかけて火を付けて投げる
みたいなことをやってる中学もあったので。

糸井

火まで！？

浅生

まぁ、そんなわりと、荒れた学園みたいな。

糸井

その中では、あなたは何の役なんですか？
ヌンチャク部じゃないですよね。

浅生

ヌンチャクはやらないですけど。

糸井

何をやったんですか。

浅生

ぼくは普通に、強そうな悪い奴の近くにいるけど
積極的には関わらないっていう。
腰巾着までいかないポジションを確保っていう。

糸井

戦国時代のドラマに出てきそうな。

浅生

真っ向から対抗するとやられるので、
真っ向から対抗はしない。

糸井

意外と体つきがいいから、強かったんですか？

浅生

いや、中学の頃はヒョロヒョロのちっちゃい感じでした。
とにかくターゲットになるとしばらくイジメられるから、
ターゲットにされないように立ち回るっていう。

糸井

でもそんなのさ、考えとしてわかってても相手が
決めることだから、なかなかうまく行かないでしょ？

浅生

でも、相手が得することを提供してあげれば。

糸井

ふふふ。

浅生

中学生だから単純で、褒めれば喜ぶわけですよね。
その子が思いもしないことで褒めてあげる。
つまり、喧嘩が強いやつに「喧嘩強いね」っていうのは
みんなが言ってるけど、「キミ字、キレイね」って
褒めると、「おっ」ってなるじゃないですか。

糸井

すっごいね、それ。

浅生

そうやって、なんとか自分のポジションを（笑）。

糸井

磨いたんだ。
「字、キレイね」で。

浅生

なんか、ものすごい嫌な人間みたい（笑）。

糸井

いやいや。西部劇だからね。

浅生

生き残らなきゃいけないので。

糸井

一目置かれるってやつですかね。

浅生

うーん、なんですかね。
ちょっと違う球を投げるというか。

糸井

今も似たようなことやってますね、なんかね。

浅生

常に立ち位置をずらし続けてる感じが。

糸井

安定してると、やっぱり人がじっと見てるうちは
弱みも強みもわかってきて、いいことも悪いことも
あるんだけど、どっちもなくていいやと。

浅生

はい。

糸井

いいことも悪いこともなくていいや。
今日を生きよう、できるだけ楽しく。

浅生

そう。今さえ。

糸井

いやいやいや、なるほどね。
それ動物っぽいですよね。

浅生

動物っぽいですね。
子どもの頃から、あんまり目立ちたくないというか。

糸井

自然に目立っちゃうからでしょうね。
遠くにいたらわかるじゃない。

浅生

目立たない方法って、ほんとに気配を消して
うまく溶け込むか、逆に突き抜けるぐらい
目立っちゃうかのどっちかしかないんです。
バーンって飛び抜けて目立っちゃえば、
それはもう普通の目立ってるとは違うので、
違う立ち位置に行けるんですよね。
だから、ぼくいつもそのどっちかをわざと選ぶ。

糸井

むっちゃ目立つっていうの、どういう経験？

浅生

例えば、みんながやらないようなことに
あえて「はい」って。いずれ押し付けられる
可能性があるものに関しては、
自分から先にいっちゃうとか。

糸井

あーーー。

浅生

先回りすることで「自分で選んだんだ」って
自分自身に納得させるというか。
自分で目立つことを選んだから、
目立つのはしょうがないよねって。

糸井

NHK_PR時代なんて、結構そういう開き直りを感じました。

浅生

ああ、そうですね。

糸井

陽動作戦みたいに、呼び寄せて逃げるとかね。
あれ、NHKという名前がついていながらあれをやるのは、
なかなか・・・。ノウハウがないじゃないですか。
あれはおもしろかったね。

浅生

おもしろかったですね。相当ムチャでしたから。
あれも結局、やっちゃって飛び抜けちゃったほうが
楽になるっていう。たしかに楽になったんですよね。

糸井

自分も楽になるっていうことですか？

浅生

ええ。
「あいつはしょうがない」って思われると楽ですよね。

糸井

でも「あいつはしょうがない」っていって、
迷惑な人がいるじゃないですか。
そういうのに対しては嫌でしょう？

浅生

嫌です。

糸井

だから「あいつはしょうがない」けども、
あんまり人に迷惑かけてないっていうのは、なかなか、
すごいバランスのところに立ってますよね。

浅生

そうですね。
うーん、だから、「あいつはダメだ」というか。

糸井

いや、どっちでもなくて。
「おもしろい」になっちゃってるんじゃないかな。

浅生

最終的には。

糸井

うん。
NHK_PRは、「おもしろい」が武器になっていたケース。

浅生

でも、冷静によくよく見ると、おもしろくないんですよ。
１つ１つは。

糸井

１つ１つじゃないもの。

浅生

相対として「なんかおもしろいかも」っていう
雰囲気だけはあるんですけど、よく見ると、
そんなにおもしろくなかったりするんですよね。

糸井

それは、自分の仕事だからそう感じる部分が
ありますけどね。面白かったですよ。
「それは人が言ったことがないな」ってことが
結構いっぱいあった。
あれはほぼ24時間やっていたんですよね。

浅生

いや、あれはほぼやってないんですよ。

糸井

どういうことですか？

浅生

自動設定にしてあったんです。
だいたい前の日にワーッて書いて、リプライやリツイートも
全部タイマーで設定していました。だけど、見ている人は
前の日のツイートに対して、リプライやリツイートしている
なんて思わないので。まさかのリアルタイムツイートの
ように見えるという。

糸井

ということは本人よりも見てるだけの人のほうが数が多い、
ということをよくわかってやってるわけだ。

浅生

そうですね。
結局ツイッターって、１対１のやりとりなので。
その１対１を他人にどう見せるかっていうことだけ
演出してあげると、すごくやってるように見えるんです。

糸井

でも、ぼくはNHK_PRさんと何回かリアルタイムで
やりとりしたことがあるよ。

浅生

リアルタイムをたまに混ぜると・・・。

糸井

混ぜるんだ（笑）。

浅生

たまに混ぜるんです。
嘘にほんとを少し混ぜると、
全部がほんとに見えるっていう。

糸井

そうか。ぼくはそんなことしないけど、
する必要もないけど、とてもなるほどですね。

浅生

そこはちょっと、もうテクニカルな。

糸井

そうですね。
そういう作戦を考えるのはわりとお好きなんですね。

浅生

そうですね。

糸井

構造で考えるっていうか。

浅生

何ですかね。それもきっと、
強いワルとどう向き合うかに近いんだと思うんですけど。
分析して構造を考えて、どこに何を置けばいいか、
何を言えばいいかを考えるっていう。

（つづきます）