隠れて生きてきた、浅生鴨さん。

第4回 「あんまり目立ちたくない」
- 糸井
- 常に立ち位置をずらし続けてる感じが、ありますよね。
安定してると、やっぱり人がじっと見てるうちには弱みも強みもわかってきて、いいことも悪いこともあるんだけど、どっちもなくていいやと。
- 浅生
- はい。
- 糸井
- いいことも悪いこともなくていいやと。今日を生きよう、できるだけ楽しく。
- 浅生
- そう。今さえ。
- 糸井
- いやいやいや、なるほどね。それ動物っぽいですよね。
- 浅生
- 動物っぽいですね。多分子どもの頃から…あんまり目立ちたくないというか。
- 糸井
- 自然に目立っちゃうからでしょうね、やっぱりそれは。遠くにいたらわかるじゃない。
- 浅生
- どうしても目立ちがちなので、もうあんまり目立たないようにするにはどうしようかなっていう。
目立たない方法って2つあって、ほんとに気配を消してうまく溶け込むか、逆に突き抜けるぐらい目立っちゃうかのどっちかしかなくて。バーンって飛び抜けて目立っちゃえば、それはもう普通の目立ってるとは違うので、また違う立ち位置に行けるんですよね。だから、ぼくはいつもそのどっちかをわざと選ぶっていうか。
- 糸井
- むっちゃ目立つっていうの、どういう経験?
- 浅生
- 例えば、そういうみんながやらないようなことにあえて「はい」って。どうせいずれ押し付けられる可能性があるものに関しては、自分から先にいっちゃうとか。先回りしちゃうっていう。そうやることで、どこかで納得したいというか。「自分で選んだんだ」っていうことを自分自身に納得させるというか。自分で目立つことを選んだから、目立つのはしょうがないよねって。
- 糸井
- NHK_PR時代なんて、結構そういう開き直りを感じましたよね。
- 浅生
- ああ、そうですね。
- 糸井
- 陽動作戦みたいに、呼び寄せて逃げるとかね。あれ、NHKっていう名前がついていながらあれをやるっていう役は、なかなか‥‥ノウハウがないじゃないですか。あれはおもしろかったね。
- 浅生
- おもしろかったですね。相当ムチャでしたから。まぁ、あれも結局、やっちゃって飛び抜けちゃったほうが楽になるっていう。たしかに楽になったんですよね。
- 糸井
- 自分も楽になるっていうことですか?
- 浅生
- ええ。1番楽なのは「あいつはしょうがない」って思われることですよね。
- 糸井
- でも「あいつはしょうがない」っていってエライ迷惑な人がいるじゃないですか。そういうのに対しては嫌でしょう?
- 浅生
- 嫌です。
- 糸井
- だから「あいつはしょうがない」けども、あんまり人に迷惑かけてないっていうのは、なかなかすごいバランスのところに立ってますよね。
- 浅生
- そうですね。だから、「あいつはダメだ」なんです。
- 糸井
- いや、どっちでもなくて「おもしろい」になっちゃってるんじゃないかな。
- 浅生
- 最終的には。
- 糸井
- うん。NHK_PRは、おもしろいが武器になっていたケースで。
- 浅生
- でも、冷静によくよく見ると、そんなにおもしろくないんですよ。1つ1つは。
相対として「なんかおもしろいかも」っていう雰囲気だけはあるんですけど、よく見ると、そんなにおもしろくなかったりするんですよね。
- 糸井
- それは、自分の仕事ってそういうとこありますけどね。おもしろかったですよ。あの、何だろう。「それは人が言ったことがないな」みたいなことが結構いっぱいあった。だから、変なおもしろさ。ものすごいツイートもしたし、ものすごい人のツイートも見たでしょうけど、あれはほぼ24時間みたいなものですよね。
- 浅生
- いや、あれはほぼやってないんですよ。
- 糸井
- どういうことですか?
- 浅生
- 自動設定してあって、だいたい前の日に翌日やることをワーッて書いて、タイマーで設定しちゃって、いわゆる返信とかリツイートも全部タイマーで設定してあるんです。だけど、リプライとかリツイートは、まさか前の日のツイートに対してリツイートしてるなんてみんな思わないので。リツイートされた本人だけは「あ、これ昨日のやつを今頃リツイートしてる」って思うんですけど、普通に見てる人たちはまさかのリアルタイムツイートのように見てるっていう。
- 糸井
- っていうことは、「本人よりも見てるだけの人のほうが数が多い」っていうことをよくわかってやってるわけだね。
- 浅生
- そうですね。
- 糸井
- 本人って1人だもんね。
- 浅生
- はい。結局ツイッターって、何だかんだ言っても絞り込むと1対1のやりとりなので、その1対1を他人にどう見せるかっていうことだけ演出してあげると、すごくやってるように見える。ぼく、普通に番組作ったりしてたんで、そんな24時間ツイートできないですし。
- 糸井
- でも、俺なんかNHK_PRさんと何回かリアルタイムでやりとりしたことがあるよ。
- 浅生
- リアルタイムをたまに混ぜると。
だから、嘘にほんとを少し混ぜると、全部がほんとに見えるっていう。それは映像もそうですよね。CG全部じゃなくて、そこに実写の人を何人か混ぜるともう全部が‥‥。
- 糸井
- ジャングルブックですね。
- 浅生
- 実写に見えてくるっていう。まさにそういう感じです。
- 糸井
- なるほどですね。そういう作戦考えるのはわりとお好きなんですね。
- 浅生
- そうですね。
- 糸井
- ね。構造で考えるっていうか。
- 浅生
- 何ですかね。分析して構造を考えて、どこに何を置けばいいか、何を言えばいいかっていう。
- 糸井
- 戦国時代の人みたいですね。