- 糸井
- 浅生さん、NHKの広報として、
ツイッターのNHK_PR1号をやっていたじゃないですか。
そうするとあの時代は、「NHK_PRが俺だ」っていうのは
やっぱりマズイわけですよね。
- 浅生
- そうです、あの時代はマズイです。
僕、常に隠し事がつきまとうんです(笑)。
- 糸井
- そうですよね。
だから、浅生さんがNHK_PR1号のときは、
そのときの隠し事があったわけで、
それで、あとで語れるのが多いですよね。
隠し事の歴史を語っているみたい(笑)。
- 浅生
- 「実はあのとき」っていう(笑)。
常に隠し事があるんですよ。
- 糸井
- 今回、ほぼ日で写真を出しているけれど、
じゃあ今まで、
ご自分の写真を隠していた理由っていうのは‥‥
- 浅生
- それは何か「めんどくさい」が。
- 糸井
- めんどくさいだったんですね。
浅生さんの写真でわかっちゃうことだけど、
「あなた日本人じゃないですね」って言われて、
浅生さんが「ワッカリマセン」って言ったら、
通じちゃう外見ですよね(笑)。
- 糸井
- 幼少のみぎりは、見た目とか
「あ、日本語喋れるんだ」的な、
そういうようなことですよね。
- 浅生
- そうです。
今でもたまにあるんですけどね。
- 糸井
- ぼくも最初に会ったときに、
「この外国の人は、流暢だな」って思ったもん。
見た目だとか国籍がどうだとかっていう話は、
ずーっと続いてきたことなんですか?
- 浅生
- ずーっとですね。多分、一生。
日本にいる限り、
僕が日本人として日本で生きていく限りは、
多分ずっとまだ続くだろうなって。
ただ、今新しく生まれる子どもの、
30人に1人は外国のルーツが入っています。
芸能の世界では、昔から、
そういう子がたくさんいたんですけど、
今回のオリンピック・パラリンピックでも、
ずいぶんたくさん出てきてますよね。
そういう意味では、日本はこれから、
時間をかけて混ざっていくんだろうなって思います。
僕は、ちょっと早すぎたんです。
ただ僕、
「あなた日本人じゃないですね」っていわれて、
「ワッカリマセン」っていっても、
意外と通じなくて。
- 糸井
- 「お前、半分日本人だろう」って言われる?
- 浅生
- 言われます。
- 糸井
- そうか‥‥
なんだかハンパですねぇ。
- 浅生
- ハンパなんです。
そのハンパなのを、一々説明するのが
もうめんどくさくて。
つまり常にみんなが僕を見て、
「こいつはどっちかな?」って思うんですよね。
そうすると必ず、
「僕は、日本生まれの日本人なんですけど、
父方がヨーロッパの血が入ってて‥‥」
みたいなことを、毎回言わなきゃいけないんです。
聞く人は1回なんですけど、
言う側は子どもの頃から何万回って言ってて、
もう飽きてるんですよね。
- 糸井
- ということは、
あんまり聞いてほしくないですか?(笑)。
- 浅生
- そんなことはないですけど(笑)。
もうなんですかね、この同じことを言う‥‥
つまり、怪我して、
ギプスをしてると「どうしたの」って聞かれて、
最初2回ぐらいはいいんですけど、
50回ぐらいになってくると飽きるじゃないですか。
飽きてくると、ちょっと茶目っ気が出てきちゃって
ちょっとおもしろいこと混ぜちゃったりする。
そうすると、こっちでちょっと混ぜたおもしろいことと、
こっちでちょっと混ぜたおもしろいことが、
それぞれが相互作用して、
すごいおもしろい嘘になってたりして(笑)。
- 糸井
- (笑)。
- 浅生
- たとえばAさんが
「あなたって、こうですよね」って僕に言うから、
僕は「あぁ、そうです」って言う。
Bさんも僕に
「あなたってこうですよね」って言うから、
それにも「あぁ、そうです」っていう。
僕についてのことは、
AさんとBさんでは違う「そうです」になってて、
AさんとBさんと僕がたまたま一緒にいると、
話がすごいことになっちゃうわけです。
それで僕が説明するのめんどくさいから、
「いや、もう両方合ってます」みたいなことを言うと、
もはや完全に僕と違うものがそこに存在し始めて。
でも、それがだんだん、
めんどくさくなってきちゃうんですよね。
- 糸井
- めんどくさいが理由で、
嘘つきになっちゃったわけですね。
1回か2回聞かれるんだったら、
本当のことを言ってたんだけど。
- 浅生
- そうです、だんだん、もうめんどくさいから、
相手が誤解とかして、
「こうじゃないの」って言ったときに
「そうです。そうです」みたいなことを言うんです。
つまり訂正もめんどくさいから
「そうなんですよ」って言うと、そうなるんですよね。
- 糸井
- なりますね。
人は自分の思いたいほうに思うからね。
- 浅生
- なので「もうめんどくさい」って思って、
あんまり僕は世に出ないようにするっていう。
- 糸井
- 浅生さんは、自分が昔からそういう、
はっきりしないユラユラしてる場所に立たされてたことで、
今の自分になりましたよね。
- 浅生
- なりましたね。
- 糸井
- だから、嘘言ったり、デタラメ言ったり、
めんどくさいから「いいんじゃない」って言ったり。
今もそうですよね。
- 浅生
- でもまぁ、あんまり嘘は‥‥
そのときそのときで、嘘は言ってないんですよ。
- 糸井
- 何かを庭に埋めておくと育ちます、
みたいな話はしているでしょう(笑)。
- 浅生
- あぁ(笑)。
- 糸井
- どうでもいいことについての嘘は、
もう無数に言ってますよね。
それが仕事になると思わなかったですね。
- 浅生
- まぁ、そういう仕事ですよね(笑)。
自分でもビックリします。
- 糸井
- 嘘のつじつま合わせみたいだ。
- 浅生
- そうですね。
でもつじつまは合ってなくてもいいんです、別に。
最近ずっと書いてる短編なんかは、
もう投げっぱなしで、
つじつま合わせないほうが面白いんですよね。
- 糸井
- つじつまに夢中になりすぎですよね、みんなね。
- 浅生
- 皆、決着を付けたがるんです。
でも、そんなに物事、
つじつまがうまく行くとは限らないと思います。
- 糸井
- つじつまの話は、どっかで特集したいですね。
特集「つじつま」とかね。
- 浅生
- 「いいつじつま、悪いつじつま」みたいな(笑)。
(第2回へ続く!)