- 糸井
- 浅生さんのNHK_PR1号のツイッターは、
おもしろいが武器になっていたよね。
- 浅生
- でも、冷静によくよく見ると、
そんなにおもしろくないんですよ。
「なんかおもしろいかも」っていう
雰囲気だけはあるんですけど、よく見ると
そんなにおもしろくなかったりするんですよね。
- 糸井
- 何だろう、
「それは人が言ったことがないな」
みたいなツイートが結構いっぱいあった。
だから、変なおもしろさ。面白かったですよ。
浅生さん、すごくたくさんツイートもしたし、
すごくたくさんの人のツイートも見たでしょうけど、
あれはほぼ24時間ツイッターをやっている、
みたいなものですよね。
- 浅生
- いや、あれは、ほぼツイッターやってないんですよ。
- 糸井
- どういうことですか?
- 浅生
- 自動設定してあるんです。
僕、普通に番組作ったりしてたんで、
そんな24時間ツイートできないですし。
だいたい前の日に翌日やることをワーッて書いて、
タイマーで設定しちゃって、
つまり、いわゆる返信とかリツイートも、
全部タイマーで設定してあるんです。
直接僕からリプライをもらう本人以外、
つまり、ツイッターを普通に見てる人たちは、
リアルタイムツイートのように見てるっていう。
- 糸井
- っていうことは、ツイッターが
「本人よりも見てるだけの人のほうが数が多い」
ということを、よくわかってやってるわけだね。
- 浅生
- そうですね。
結局ツイッターって、
何だかんだ言っても、絞り込むと1対1のやりとりなので、
その1対1を他人にどう見せるか、
っていうことだけ演出してあげると、
すごくやってるように見えるんです。
- 糸井
- でも、ぼくなんか浅生さんのやってた、
NHK_PR1号さんのツイッターアカウントと、
何回かリアルタイムでやりとりしたことがあるよ。
- 浅生
- リアルタイムをたまに混ぜると、
嘘にほんとを少し混ぜると、
全部がほんとに見えるっていう。
それは映像もそうですよね。
CG全部じゃなくて、そこに実写の人を何人か混ぜると、
もう全部が実写に見えてくるっていう。
まさにそういう感じです。
- 糸井
- 混ぜるんだ。
そういう作戦考えるのはわりとお好きなんですね。
構造で考えるっていうか。
- 浅生
- 何ですかね。
分析して構造を考えて、どこに何を置けばいいか、
何を言えばいいかっていうのを考える。
- 糸井
- 戦国時代の人みたいですね。『真田丸』のようです。
- 浅生
- 『真田丸』のように。
- 糸井
- 『真田丸』観てないでしょ(笑)。
- 浅生
- そう、観てないんです(笑)。
けどちょうど僕、学生のころが、校内暴力時代なんです。
戦国時代みたいですよね。
- 糸井
- ぼく、校内暴力の時代を知らないんですよね。
聞くと、西部劇のならず者みたいな人たちだらけですね。
- 浅生
- すごい時代ですよ。スクールウォーズの時代ですから。
ほんとに中学校の先生が‥‥
これ言うとみんなビックリするんですけど、
ヌンチャク持ってるんですよ。本物のヌンチャク持ってる。
竹刀持ってる先生とヌンチャク持ってる先生がいて、
生徒が悪いことすると、
竹刀とかヌンチャクでやられるんですよ。
でも、生徒側もただではやられないので、
そこに対抗しに行ったりするワルもいるっていう、
今考えると、マッドマックスの世界です(笑)。
- 糸井
- マッドマックスじゃないの(笑)。
- 浅生
- ただ、幸いうちは山の上の学校で、
ものすごい急な坂の上に中学があるので、
他校が殴り込みに来れないっていう利点がありました。
他校が「殴り込みだー」って言っても、
その坂の途中ぐらいで、みんな息が上がって
へばっちゃってたんでしょうね。
- 糸井
- その中では、あなた何の役なんですか?
ヌンチャク部じゃないですよね。
- 浅生
- いや僕は普通に、強そうな悪い奴がいたら、
そいつの近くにいるけど積極的には関わらないっていう、
腰巾着までいかないポジションを確保して、
うまく立ち回りました。
- 糸井
- まさに戦国時代のドラマに出てきそうな。
- 浅生
- かと言って、真っ向から対抗するとやられるので、
真っ向から対抗はしない。
僕は中学の頃はヒョロヒョロでほんとちっちゃかったので、
ターゲットになるとしばらくイジメられるから、
とにかくターゲットにはされないよう立ち回っていました。
- 糸井
- でもさ、考えとしてわかってても相手があることだから、
なかなかうまくいかないでしょ?
- 浅生
- そこは、相手が得することを提供してあげればうまくいく。
中学生だから、単純で褒めれば喜ぶわけですよね。
その子が思いもしないことで褒めてあげれば、
つまり喧嘩が強いやつに、
「喧嘩強いね」っていうのはみんなが言ってるから、
でも、「キミ字、キレイね」ってちょっと言うと、
「おっ」ってなるじゃないですか。
- 糸井
- すっごいね、それ。
- 浅生
- そうやってポジションを(笑)。
- 糸井
- 磨いた?
- 浅生
- はい、なんとか自分のポジションを磨きました。
- 糸井
- 「字、キレイ」で。
- 浅生
- はい。僕、ものすごい嫌な人間みたい(笑)。
- 糸井
- いやいや(笑)。
ま、西部劇だから‥‥(笑)。
- 浅生
- 生き残らなきゃいけないので。
- 糸井
- よく言う、
そういう真正面の力に対抗する強さは、
関西では笑いだから、
「俺はそれでお笑いになった」みたいな人、
いっぱいいるじゃないですか。
ああいうのとちょっと似てますね。
- 浅生
- そうですね。
違う切り口でそこに行くっていう。
なんですかね。ちょっと違う球を投げるというか。
- 糸井
- 今も似たようなことやってますね、なんかね。
- 浅生
- 常に立ち位置をずらし続けてる感じが。
- 糸井
- 安定した立ち位置にいると、
自分の弱みも強みもわかってきて、
自分にとっていいことも悪いこともあるんだけど、
浅生さんはどっちもなくていいやと。
- 浅生
- はい。
- 糸井
- いいことも悪いこともなくていいやと。
今日を生きよう、できるだけ楽しくって。
- 浅生
- そう。
今さえよければいいかって。
- 糸井
- なるほど。
なんだかそれ、動物っぽいですよね。
- 浅生
- 動物っぽいですね。
多分子どもの頃から、
そういう感じで‥‥、あんまり目立ちたくないというか。
- 糸井
- それはやっぱり、浅生さんが、
自然にしていて目立っちゃうからでしょうね。
浅生さん、遠くにいても浅生さんだって、
わかっちゃうじゃない。
- 浅生
- ええ、どうしても目立ちがちなので、
もうあんまり目立たないようにするには、
どうしようかなっていうことを考えていました。
目立たない方法って2つあって、
ほんとに気配を消してうまく溶け込むか、
逆に突き抜けるぐらい目立っちゃうか、
どっちかしかなくて。
バーンって飛び抜けて目立っちゃえば、
それはもう普通の目立ってるとは違うので、
また違う立ち位置に行けるんですよね。
だから、僕、いつもそのどっちかを、
わざと選んでいました。
溶け込むようにするか、思い切ってワーッて前にでるか。
- 糸井
- ワーって前にでるっていうのは、どういうやり方?
- 浅生
- これは例えば、
そういうみんながやらないようなことに、
あえて「はい」って言っちゃう。
どうせいずれ押し付けられる可能性があるものに関しては、
自分から先回りして先にいっちゃうとか。
そうやることで、「自分で選んだんだ」っていうことを、
自分自身に納得させる部分がありました。
自分で目立つことを選んだから、
目立つのはしょうがないよねって。
- 糸井
- NHK_PR1号の時代なんて、
結構そういう開き直りを感じましたよね。
- 浅生
- 1番いいのは、
「あいつはしょうがない」って思われると、
1番楽でいいですよね。
- 糸井
- 自分も楽になるっていうことですか?
- 浅生
- ええ。
- 糸井
- でも「あいつはしょうがない」っていって、
エライ迷惑な人がいるじゃないですか。
そういうのに対しては嫌だと思うんでしょう?
- 浅生
- 嫌です。
- 糸井
- だから「あいつはしょうがない」けども、
あんまり人に迷惑かけてないっていうのは、
なかなかすごいバランスのところに立ってますよね。
「おもしろい」になっちゃってる。
- 浅生
- 最終的には(笑)。
(第5回へ続く!)