- 浅生
- ぼく、嘘をついちゃうわけです。
悲しいところを、常に削って
おもしろいとこだけを提示してるので。
だから、突きつけていくと、いろいろと
「あれあれ?」みたいなことが
いっぱい出てきちゃうんですよ。
- 糸井
- そうだね。
だからインタビューとかされちゃ
ダメなのかもしれないね、もしかしたらね。
- 浅生
- だから、隠れて生きてたっていう、
そこに立ち戻るんですけど。
- 糸井
- でも、人ってありますよね。だいたい。
その人のことをもう2段ぐらい深くまで聞くと
本人が言いたくないことにぶち当たるっていうか。
- 浅生
- その人が思ってなかったこととかが
出てきちゃうじゃないですか。
そこがおもしろくもあり怖くもあり、
あんまりそこ聞いちゃうと
この人の本当のことを聞いてしまうっていう…。
他人の本当のこと、
ぼくどうでもいいというか、背負いきれないというか。
- 糸井
- どうでもいいというか、背負いきれないというか…。
それって、
水面下の話にしておきましょうっていう約束事が
何か、お互いが生きてくときのために
あるような気がしますね。
- 浅生
- で、特に今、みんなが持ってる箱を
無理やり開けようとする人たちがいて、
その箱は開けちゃいけないよねっていうのに
どうも勝手に来て無理やり奪い取って
勝手に開けて中身出して「ホラ」ってやる、
そういう人たちがたくさん。
実は開けられる側も大切にしてる箱なんですけど、
開けてみたら大したことなかったりするんですけど、
でも本人にとってはそれが大事な箱だったりするので。
- 糸井
- この間ぼくも書いたことなんだけど、
自分から言う底の底の話はいいんだけど
人が「底の底にこんなものがありましたよ」っていう。
つまり引き出しの中から穴の開いたパンツが出てきて
自分から「なにこの穴は〜」って言って笑いをとる
とかだったらいいけど、
でも、人が探して「このパンツなに!」って言ったら
嫌だよね。
- 浅生
- いましたよね。学校に。
勝手に人のカバンの中を探って
「こいつ、こんなもの持ってきてる」ってやる子。
- 糸井
- いたんですか? 学校が荒れてる時代ですか?
- 浅生
- ちょうどぼく、校内暴力時代なんです。
すごい時代ですよ。スクールウォーズの時代ですから。
ほんとに中学校の先生がヌンチャク持ってるんですよ。
- 糸井
- ヌンチャク?
- 浅生
- 竹刀持ってる先生とヌンチャク持ってる先生がいて、
生徒が悪いことすると
竹刀とかヌンチャクで頭やられるんですよ。
でも、生徒側もただではやられないので、
そこに対抗しに行ったりするようなワルの生徒も
っていう、今考えると、マッドマックスの世界です。
まだマシな方だったんですけど。
- 糸井
- その中では、あなた何の役だったんですか?
- 浅生
- ぼくはうまく立ち回る。
- 糸井
- 何をやったんですか。
- 浅生
- いやぼくは普通に、強そうな悪い奴がいたら
そいつの近くにいるけど積極的には関わらないっていう。
腰巾着までいかないポジションを確保っていう。
- 糸井
- 戦国時代のドラマに出てきそうな。
- 浅生
- かと言って、真っ向から対抗するとやられるので
真っ向から対抗はしない。
ターゲットになるとしばらくイジメられるから
とにかくターゲットにはされないように立ち回るっていう。
- 糸井
- そんなのでもさ、
考えとしてわかってても相手が決めることだから
なかなかうまく行かないでしょ?
- 浅生
- でも、相手が得することを提供してあげれば。
中学生だから、単純で褒めれば喜ぶわけですよね。
その子が思いもしないことで褒めてあげれば。
つまり喧嘩が強いやつに「喧嘩強いね」っていうのは
みんなが言ってるから、
「キミ、字、キレイね」ってちょっと言うと
「おっ」ってなるじゃないですか。
- 糸井
- すっごいね、それ。
- 浅生
- そうやってポジションを(笑)
- 糸井
- 磨いた?
- 浅生
- なんとか自分のポジションを。
- 糸井
- 「字、キレイ」で。
- 浅生
- ものすごい嫌な人間みたい(笑)
生き残らなきゃいけないので。
違う切り口でそこに行くっていう。
- 糸井
- 一目置かれるってやつですかね。
- 浅生
- うーん。なんですかね。
ちょっと違う球を投げるというか。
- 糸井
- 今も似たようなことやってますね。
- 浅生
- 常に立ち位置をずらし続けてる感じが。
- 糸井
- 安定してると、やっぱり人がじっと見てるうちに
弱みも強みもわかってきて、
いいことも悪いこともあるんだけど
どっちもなくていいやと。
- 浅生
- はい。
- 糸井
- いいことも悪いこともなくていいやと。
今日を生きよう、できるだけ楽しく。
- 浅生
- そう。今さえ。
多分子どもの頃から、そういう…、
あんまり目立ちたくないというか。
- 糸井
- 自然に目立っちゃうからでしょうね。
- 浅生
- どうしても目立ちがちなので、
もうあんまり目立たないようにするには
どうしようかなっていう。
目立たない方法って2つあって、
ほんとに気配を消してうまく溶け込むか
逆に突き抜けるぐらい目立つかのどっちかしかなくて。
バーンって飛び抜けて目立っちゃえば
それはもう普通の目立ってるとは違うので
また違う立ち位置に行けるんですよね。
だから、ぼくいつもどっちかをわざと選ぶっていうか、
溶け込むようにするか、思い切ってワーッて前に。
- 糸井
- むっちゃ目立つっていうの、
NHK_PR時代なんて
結構そういう開き直りを感じましたよね。
- 浅生
- ああ、そうですね。
おもしろかったですね。相当ムチャでしたから。
まぁ、あれも結局、やっちゃって飛び抜けちゃったほうが
楽になるっていう。たしかに楽になったんですよね。
- 糸井
- 自分も楽になるっていうことですか?
- 浅生
- ええ。1番いいのは「あいつはしょうがない」って
思われることですよね。
- 糸井
- でも「あいつはしょうがない」っていって
エライ迷惑な人がいるじゃないですか。
そういうのに対しては嫌でしょう?
- 浅生
- 嫌です。
- 糸井
- だから「あいつはしょうがない」けども
あんまり人に迷惑かけてないっていうのは
なかなかすごいバランスのところに立ってますよね。
- 浅生
- そうですね。だから、「あいつはダメだ」なんです。
- 糸井
- いや、どっちでもなくて
「おもしろい」になっちゃってるんじゃないかな。
- 浅生
- 最終的には。
でも、冷静によくよく見ると、
そんなにおもしろくないんですよ。1つ1つは。
「なんかおもしろいかも」っていう
雰囲気だけはあるんですけど。
- 糸井
- それは、自分の仕事もそういうとこありますけどね。
でも浅生さん、おもしろかったですよ。
あの、何だろう…、「それは人が言ったことがないな」
みたいなことが結構いっぱいあった。
だから、変なおもしろさ。
ものすごいツイートもしたし
ものすごい人のツイートも見たでしょうけど、
あれはほぼ24時間みたいなものですよね。
- 浅生
- いや、あれはほぼやってないんですよ。
- 糸井
- どういうことですか?
- 浅生
- 自動設定してあって
だいたい前の日に翌日やることをワーッて書いて
タイマーで設定しちゃって、
返信とかリツイートも全部タイマーで設定してあるんです。
- 糸井
- でも、ぼく、なんかNHK_PRさんと
何回かリアルタイムでやりとりしたことがあるよ。
- 浅生
- リアルタイムをたまに混ぜる。
- 糸井
- 混ぜるんだ。
- 浅生
- たまに混ぜるんです。嘘にほんとを少し混ぜると
全部がほんとに見えるっていう。
それは映像もそうですよね。CG全部じゃなくて
そこに実写の人を何人か混ぜるともう全部が…。
- 糸井
- 『ジャングルブック』ですね。
- 浅生
- 実写に見えてくるっていう。
まさにそういう感じです。
- 糸井
- そうか。ぼく、そんなことしないけど、
する必要もないけど、とてもなるほどですね。
- 浅生
- そこはちょっと、もうテクニカルな。
- 糸井
- そうですね。
そういう作戦考えるのはわりとお好きなんですね。
構造で考えるっていうか。
- 浅生
- そうですね。それもきっと、
強いワルとどう向き合うかに近いと思うんですけど。
分析して構造を考えて
どこに何を置けばいいか、何を言えばいいかっていう。
- 糸井
- 戦国時代の人みたいですね。『真田丸』のようですね。
- 浅生
- 『真田丸』のように。
- 糸井
- 『真田丸』とか観てないでしょ、どうせ。
- 浅生
- そう、観てないんです。
(つづきます)