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渋谷駅から少し離れた
宇田川町の裏路地に佇む「bar bossa」。
1997年に開店してからもうすぐ20年が経つんですね。
まずは、ここ渋谷でお店を始めようと思った
きっかけを教えてください。
- 林さん
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この店を始める前に
下北沢でバーテンダー修行をしていたんです。
それで、まずは下北沢周辺で探していたんですよ。
でも、外部からだと紹介なしでは入りづらくて‥‥。
家賃も想像していたよりも高かったので、
別の場所で探そうっておもったんですね。
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下北沢以外にも、候補に入れていた場所って
あったんですか?
- 林さん
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その後は、代官山や恵比寿でも探したんですけど、
やっぱり人気エリアということもあって家賃相場が高くて、
そこから麻布や外苑前にも広げてみたんです。
でも、この辺で飲んだことないなって気付いて、
魅力的だけど、その時に自分の場所ではないって
考え直して‥‥。
やっぱり街によってカラーが全然違うんですよね。
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これって思える物件と出会うのも
一苦労だったんですね。
- 林さん
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僕はレコードが好きで、
少しサブカルっていうんですかね‥‥。
渋谷って音楽の街だし、
映画館やCD・レコードショップもたくさんあって、
最後に渋谷周辺で物件を探してみることにしたんです。
いくつか良い物件を見つけて、
道玄坂の方にも行ってみたり、
なかには、昔スナックをやっていた
雑居ビルの物件なんかもあって。
そういう場所だと、
お店の横が雀荘とかだったりして
自分が1人で飲むのであれば良いんですけど、
これから家族ができても
娘がふらっとお店に遊びに来れるような場所で
やりたいなってもう一度考え直しました。
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お店の場所ってすごく大事ですもんね。
最終的に、この場所を選んだ決め手になるものって
ありましたか?
- 林さん
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ある日、不動産屋から「ここはどう?」って紹介されて
一階なのに家賃がすごく安くて。
実際に物件を見に行っても、
なかなか見つからないんですよ。
渋谷駅から少し離れた静かな住宅街にあって、
ぐるりと裏道にまわって辿り着いた場所がここだったんです。
夜中にカップルが一緒に探して、
ようやくお店に辿り着いたら‥‥
きっとすごく盛り上がるかもなって思って。
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なんだか運命的ですね。「bar bossa」
という名前は林さんが考えたんですか?
- 林さん
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そうですね。中古レコード屋で働いていて、
その頃からボサノヴァが好きで。
同じようにボサノヴァ好きな人が
初めてお店の名前を聞いたときに
「ここに行ってみたいなぁ」って思うんじゃないかなって。
例えば、歌舞伎が好きな人が“BAR 歌舞伎”って
名前を聞いたら一度は行きたくなりますよね?
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自分の好きなものが名前に入っているだけで
気になっちゃいますね。
- 林さん
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お店の名前は覚えやすいのが一番ですね。
今だと、お店を選ぶときに、
ネットで検索することが多いと思うんですけど
「場所は青山のお店で、英語の名前で何だっけ‥‥」って、
店名で難しい横文字が並んでいると、覚えにくいんです。
覚えてもらいやすい名前にしてよかったなって
後になってから気付いたんですけどね。
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- 林さんがお店を始めるときに影響を受けたことってありますか?
- 林さん
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1960年代から“ジャズ喫茶”って呼ばれるジャンルが
世の中にあって、お店でレコードを流して、
それをお客さんが聴きにくるです。
これって、他の国にはないスタイルなんですよね。
昔は、レコードの円盤が3000円くらいだったそうで、
それって、今だと1万円くらいの価値だったらしいんです。
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- 昔と今ではレコードの価値ってそんなに違ったんですね。
- 林さん
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普通の学生はレコードって買えないけど、
ジャズ喫茶に行ったら、コーヒーを一杯飲めば、
ジャズをただで聴ける。
「あのレコードをかけたい」ってリクエストをしたり、
そんなスタイルの“ボサノヴァ版”をやろうって思ったんです。
レゲエやソウル、ジャズやロックのお店はあっても、
ボサノヴァのバーってないから、
一番始めにやってみたら面白いんじゃないかなぁって。
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- 店内にも、レコードがたくさん置いてありますね。
- 林さん
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趣味ってレコードしかないってくらい好きなんです。
1997年にお店を始めて、2001年にはインターネットで
「bossa records」っていうサイトを作りました。
自分がおすすめしたいレコードの解説を書いて、
実際にサイト上で試聴もできるようにしたんですよ。
当時、そういうことって誰もやっていなくて‥‥。
レコードを買わなくても、
面白いって思ってページにしたんですよ。
そしたら、すごく人が集まるようになって、
音楽関係の仕事依頼も頂けるようになったんですね。
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林さんが監修を務めるバーで聴きたい曲がつまった
コンピレーション『Happiness Played in the Bar -バーで聴く幸せ- Compiled by bar bossa』も
発売になりましたね。
- 林さん
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とにかく自分が10代の頃からずっと好きだった
曲ばかり並べようって決めて選曲したんです。
レイモンド・チャンドラーの『ロング・グッドバイ』
っていう小説のなかに、
「夕方、開店したばかりのバーが好きだ」っていう
文章があって。
- 林さん
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こうやって言うと、すこし恥ずかしいんですけど‥‥
開店したばかりのバーって
お客さんが誰もいなくて
夜の始まりの緊張感があってすごく静かなんですよ。
今回のCDは全部で18曲あって、
1曲目から前半はお店が開店して
静かな雰囲気をイメージしているんです。
そこから、少しずつお客さんが来て
ザワザワしはじめて‥‥
閉店の時間が来て、静かな曲で終わるって
イメージで選曲をしたんです。