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林さんがお店を始めるときに
影響を受けたことって、なにかありますか?
- 林さん
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22歳の頃に、下北沢の中古レコード屋で
アルバイトをしていて、一番街を歩いていたら
偶然、「イーハトーボ」っていう看板を見つけたんです。
そのお店では、ジンジャエールを
自家製で生姜から作っていたり、
パンを注文されてから焼くので時間がかかったり、
とにかく、こだわりを持っているお店だったんです。
(1977年に下北沢の一番街にオープンした「イーハトーボ」。来年で40周年を迎えるそうです。)
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- 当時は、そういうお店って少なかったんですか?
- 林さん
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25年くらい前なので、当時はすごく珍しくて
「なんか、おもしろい!」って思いましたね。
今は飲食店でもレコードやCD、本とかを
売っているのって当たり前ですけどね。
店内では中古レコードを扱っていて、
その店主が音楽評論家をやっていたので、
僕もいつかそういうこともやりたいなって思ったんですよ。
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レコード屋でもカフェでもなく、
バーを開こうって思ったきっかけは
お酒が好きだったからですか?
- 林さん
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いや、そんなにお酒は飲まないんですよ。
下北沢や西荻窪のカフェのような古本があって、
レコードやCDにもこだわっていたり、
焼き物も売っていたりするような
スタイルのものが、もともと好きではあるんですよ。
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そうだったんですね。
バーのマスターはお酒を飲むのが好きな方が
多いのかと思っていたので意外でした!
- 林さん
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お菓子も焼いて、オーガニックの野菜や
健康的なコーヒー豆もあって、
店主が猫好きで‥‥(笑)。
どちらかというと、そういう感じの人間なんです。
レコード屋さんをやりたいって想いも
もちろんあったんですけど、
資本金がかなり必要だなって。
例えば、2000円で売っているレコードって
1600円で仕入れて、儲けが600円とかなんですよね。
10枚売れたとしても4000円。
CDやレコードは数を売らないといけないので、
自分で在庫を結構持たないといけなくて。
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ある程度、自分で在庫を持たないと
経営ができないという問題があったんですね。
- 林さん
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飲食店の方が粗利益が大きいんです。
だったら、お金がなくても
今すぐにできる飲食店を開こうってことで
最初は、カレーのお店をやろうと思っていたんですよ。
下北沢に「茄子おやじ」っていう
おいしいカレー屋さんがありまして、
お店のBGMがすごく良くて、
写真集や映画のポスターも貼ってあったり‥‥。
流れる音楽も良くて、
カレーとお酒を出せるようなお店に
しようと思ったんです。
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最初は「カレーとお酒」を取り扱うお店を始めようと
思っていたんですか?
- 林さん
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普通にカレーだけを食べて、
ドリンクを頼まないで帰ったら、
売上は1000円になっちゃいますけど
夜にデートでカレーを食べに来て、
その後にお酒もあったら頼みますよね。
2〜3杯飲んでくれたら、
単価も2人だけで5000円になって、
1人2500円になる計算になります。
1人1000円と2500円って、
全然違うからお酒も出そうかなって‥‥。
バーテンダーがカウンターに立って、
ちゃんとしたお酒を作れたら、
すごく、いいなぁって思ったんです。
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まず、お店を始めるためには、
どんな準備が必要だったんですか?
- 林さん
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何よりも先に“bar bossa”っていう
ボサノヴァのバーをするっていうのを決めてから、
いろんな準備を始めました。
まず、カレーとバーテンダー修行をしようと思って‥‥。
すぐにカレー屋で働くことは決まっていたので、
同時にバーテンダー修行も始めようってことで、
下北沢の「フェアグランド」というバーで働きました。
お店のボスである中村悌二さんから
「飲食店をやりたいんだったら、
うちのお店1本にしてくれ」って言われて、
カレー屋さんを断るんだったら
うちで雇ってあげるっていう条件だったので、
結局はバーだけに絞って、そこで2年間働いたんです。
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バーだけに絞ったんですね。
その選択がターニングポイントだったんでしょうか。
- 林さん
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そこでカレーも続けていたら、
どうなっていたんですかね‥‥。
ここはバーじゃなくて、カレー屋だったかもしれない。
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バーテンダー修行って
具体的にはどういうことを学ぶんですか?
- 林さん
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お酒の作り方は、真剣にやれば
3ヶ月くらいで覚えられます。
でも、接客の仕方って
3ヶ月では覚えられないんですね。
酔ったお客さんにはこうやって接するとか、
あしらい方を体で覚えるのに、
2年以上はかかっちゃうんですよ。
結局、現場で見たり聞いたりしながら、
いろんな失敗をしながら学んでいくんですけどね。
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実際に、修行期間で学んだことや、
印象に残っていることってありましたか?
- 林さん
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当時、ボスに言われたのは、
バーのカウンター席が全部あいているのに、
真ん中に座る人は変な人が多いから
気をつけた方がいいとか。
バーに来るお客さんって
端の席か、端から2番目の席を選びがちなんですけど
真ん中に座る人って、
バーテンダーと話がしたくってしょうがない人か、
少し変わった人なのか、
そのどちらかという場合が多いんですよね。
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カウンターの座る位置でも分かっちゃうものなんですね。
気をつけよう‥‥(笑)。
- 林さん
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当時はたばこを吸うお客さんも多くて、
hi-liteやショートホープを吸っている人は、
結構頑固で、少し面倒くさい人が
多かった印象なんですけど、
一回気に入ってくれたら、
ずっとお店に通ってくれたり‥‥。
その人は趣味がいいって
周りからも信頼されているので、
そこからいろんなお客さんを
紹介してくれるようになったこともありましたね。
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カウンターから見る人間模様っておもしろいですね。
バーで注文するときって緊張しちゃうんですが、
選び方のコツってありますか?
- 林さん
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ワインってすごく難しいんですよね。
最近はビオワインとか、いろんな流行りがあって、
好きなものを自由に頼んだらいいと思うんですけどね。
あと、メニュー看板に少し解説を書いたり、
味の印象を表現したりして
こういう黒板看板って重宝していますね。
これがカタカナにしか見えない方もいますし、
すごく好きな方はもっと知りたいだろうし‥‥。
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- 自分の好みの味を伝えてもらうってすごく難しいですよね。
- 林さん
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さっぱりした味が好きって注文を受けて、
僕がさっぱりするワインを選んで、おすすめしても
人によっては、「さっぱりした味じゃないな」って
感じることもあるんですよね。
味覚って本当に人によって違うし、
おいしいって思う感覚もそれぞれですからね。
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- 例えば、どうやって伝えたら分かりやすいですかね?
- 林さん
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味を言葉にするのって難しいですよね‥‥。
料理で例えると、
「普段はハンバーガーしか食べていないんです」って
言われたら、普段はジャンクなものが多いんだなって
想像できますよね。
そのお客さんの味覚が分かるような
“具体的な気持ち”を伝えてもらえたら嬉しいですね。
「普段はワインって飲まないんですけど、
おいしいのが飲みたい」って言われたら、
マニアックなものワインは出さないで、
誰が飲んでもおいしいと思えるものを
おすすめできますしね。