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渋谷でお店を始めて今年で20年。
街の移り変わりを感じることはありましたか?
- 林さん
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お店を始めたばかりの頃って、
音楽好きなお客さんだけじゃなくて、
映画関係の仕事の方がすごく多かったんですね。
渋谷って、映画館もたくさんあって
“映画の街”でもあったんです。
うちのお店の近くにある「渋谷アップリンク」も
昔は神南にあったんですよ。
BunkamuraやPARCO劇場もあって‥‥。
いろんな文化が生まれた街なんですよね。
- 林さん
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1990年の半ばから2000年頃の宇田川町って
ギネスブックにのるくらい
“世界で一番レコードが多い街”だった時代が
あったんですね。
移転前のタワーレコードも宇田川町にあって、
あと、 “渋谷系”って呼ばれる音楽を広めた
HMVもあったので、音楽関係の方も
すごく多かったですね。
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映画の街でもあり、
世界一レコード店が多い街だったんですね。
- 林さん
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海外から買い付けたレコード屋さんも
たくさんあって‥‥。
90年代の頭にイギリスで、
“アシッド・ジャズ”が流行ったんですね。
アメリカではHIOHOPや昔の音楽を掘りだして、
それを流すというムーブメントが起きて、
渋谷でもすごく流行ったんですよ。
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お店にも、音楽を好きな人が
たくさん集まるようになったんですか?
- 林さん
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DJの方も多かったですね。
でも、ご存知のとおり
CDがだんだん売れなくなってしまって、
HMV渋谷店が一度閉店してしまった時は、
「もう終わりだね‥‥」って、
結構な大騒ぎになっちゃって。
毎日のように来てくれていた
音楽関係のお客さんも来なくなってしまって、
どうしようかなって思っていたときに、
マスコミやメディアの仕事をしている
お客さんが増えたんです。
1997年の開店当初は、
昼の3時から夜の12時まで営業していたんですけど、
深夜にお酒を飲みに来るお客さんが多かったので、
夜の8時から朝の4時まで営業するようになりました。
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街の変化や時の流れとともに、
来店するお客さんも変わっていくものなんでしょうか?
- 林さん
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そうですね。
2007年にリーマンショックがあって、
お客さんも会社の経費で飲んだり、
タクシー代を出してもらえなくなって‥‥。
でも、当時はそんなに打撃はなく
なんとかお店を続けてきました。
何年か経って、2011年に3.11があって
お店を閉めなきゃ‥‥っていうくらいまで
売上が落ちてしまった時期があったんです。
このままではまずいなってことで、
フードメニューもチーズや乾きものだけだったのを
営業時間を夕方6時から夜12時までにして、
お昼にはランチメニューも始めました。
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バーでランチメニューってすごく珍しいですよね。
周りからの反響は大きかったですか?
- 林さん
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ここが、渋谷のおもしろいところだなって
思うんですけど、近くにNHKがあって、
聞いた話によると‥‥
中では2万人の人が働いているんです。
関連会社や制作会社の方とか、
あの場所にたくさんの人が出入りしていて、
お昼に食べにくる働く人たちが
たくさんいるんだって分かって、サラダ付きの
「カレーセット」をランチで出すようになりました。
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- ランチはカレーだったんですね。
- 林さん
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そうなんです。
意外とお昼も来てくれるんだなって驚きました。
そんな時に小宮山雄飛(ホフディラン)さんが
Twitterで“bar bossaのカレーがおいしい”って
ツイートしてくれたんです。
そしたら、常連で通ってくれている
BEAMSの青野賢一さんが“おいしいよね”って返信して
2人がTwitter上でやり取りをしてくれたことが
きっかけになって、いろんな雑誌でも
取り上げてもらえるようになりました。
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- そうやって広がっていくことってすごいですよね。
- 林さん
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そこから、『danchu(プレジデント社)』のカレー特集で
“カレーがおいしいバー”って紹介してもらって‥‥。
全国からもカレーを食べに来てくれる
お客さんもいてすごく忙しくなっちゃったんです。
当時、妻がカレーを作ってくれていたんですけど、
あまりに忙しくなってしまったので、辞めちゃったんですよ。
ワインとカレーって合わないので、
ランチでしか出していなかったんですけど、
お客さんからのリクエストが多くて、
今ではお店の定番メニューになりました。
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Twitterからおいしいって評判になったんですね。
林さんご自身がSNSを始めたのは、
何かきっかけがあったんですか?
- 林さん
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お客さんから「お店のFacebookページを作ってみたら?」
って、勧められたんです。
最初の頃は “こんなワインがおいしいですよ”って
紹介したり、おすすめのCDの話を
書いていたんですけど、全然いいね!がつかないんです。
でも、お店の経営のことや、
バーカウンターから見た恋愛の話について書いたら
いいね!数がだんだん増え始めていったんです。
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もともと文章を書いたりすることが
好きだったんですか?
- 林さん
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そうですね。母親が絵本の会社で働いていたので、
小さい頃から家には、本がたくさんあって
「アガサ・クリスティ」と「エラリー・クイーン」という
推理小説の2人がいるんですけど、
小学4年生の頃から、そういう本を読んだりしていて、
本を読むのも、文章を書くのも好きでしたね。
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cakesの連載『ワイングラスのむこう側』を始めたのも、
文章を書きたいと思ったのがはじまりですか?
- 林さん
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10年くらい前から、cakes社長の加藤貞顕さんが
お店にずっと通ってくれていたんですね。
でも、僕と直接会話するってことは、
10年間で一度もなかったんですよ。
ある日、なぜか加藤さんが僕のTwitterを
フォローしてくれていて、
突然、お店のFacebookの投稿にも
“おもしろいですね”って
コメントをくれるようになったんです。
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会話からではなく、Facebook上のやりとりが
始まりだったんですね。
- 林さん
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そうですね。
そこから「cakesで連載しませんか?」って
お話をもらって、縁があったらやるって決めているので、
2013年から「ワイングラスのむこう側」という
cakesの連載を始めました。
それより前から、お店のFacebookページを見てくれていた
DU BOOKSの編集の方が
「Facebookの文章を本にしませんか?」って
声をかけてもくれていて。
『バーのマスターは、「おかわり」をすすめない -飲食店経営がこんなに楽しい理由』(DU BOOKS)
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本を出すきっかけも、
もともとはFacebookが始まりだったんですか!
- 林さん
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そういう縁って、
僕の場合は、インターネットからつながることも
多かったですね。
3.11のあと、お店を閉めようかなってところまで
売上が落ちていたんですけど、
SNSや連載の読者の方がお店に来てくれるようになって。
もし、あの時にFacebookを始めていなかったら、
店を続けていなかったかもしれない。