もくじ
第1回はじめに、そして奥さんによるもくじの紹介 2016-12-06-Tue
第2回わたなべ先生の授業 2016-12-06-Tue
第3回「展覧会、辞めませんか?」 2016-12-06-Tue
第4回図工の先生になるまで 2016-12-06-Tue
第5回戦う図工の先生、これから 2016-12-06-Tue
第6回あとがき 2016-12-06-Tue

文章を書いたり、音楽を作ったり。
編集ライター見習い中。

戦う、図工の先生。

戦う、図工の先生。

担当・堀合俊博

第2回 わたなべ先生の授業

——
それじゃあ、たねちゃんがトピック出してくれたので(笑)、
まずは授業の話から聞こうかな。
ゆうくん
材料をオールフリーで、好きに使わせるてるんだよね。
こういう図工室ってまずありえなくて。
「そんなことしたら子どもが盗む」とか、
「使ったことない道具を持って怪我する」とか、
「管理が行き届かない」って言われたり。
——
ぼくが子どもの頃の授業でも、
材料は最初に使うぶんだけ一人ずつ渡してたような気がする。
ゆうくん
基本はそうだと思う。
そうすることで、こちらの目が行き届くし、
それこそ評価しやすい。
——
それで、たねちゃんが言ってたみたいに、
木が一ついくら、みたいなところからまず始めると。
ゆうくん
まずは買い物からする、っていうこと。
じぶんでこれとこれを使いますって注文するわけ。
だから、買わなかったら後で後悔する。
そのぐらい、全部その子に委ねられるわけ。
 
だから放課後とか毎日、子どもたちがこれとこれどっちにしようって計算してるんだよね。
——
ああ、足りなかったってなっちゃった時はどうすの?
買ってあげるの?
ゆうくん
追加で買ってあげない。
使っていいお金の上限が決まってるので、どうしようもないからね。
その中でやるしかない。
——
なるほど。他に、たぶん他の先生がやっていないようなことって何かな?
ゆうくん
まあそんなことばっかりだけど(笑)
——
ふふふ(笑)
ゆうくん
例えば、授業で火を使うこととか。
——
うん。
ゆうくん
使うかどうかと言われると、使わない人が90%。
——
使ってはいけないわけではない?
ゆうくん
うん。やっていいやっていい。
カリキュラムのやり方は教員に委ねられているから、
火を使おうが使わないが、こちらの自由なので、
それはいいです。
 
だけど、めんどうくさいし、万が一やけどでもされたら、
責任取れないでしょっていう考え方が、圧倒的多数なんだと思う。
——
学校的にはそうなのかな、管理の目線で言ったら。
ゆうくん
今では安全で安心の学校ていうのは、
全国の小中学校で言われてるから。刃物は持たせない。
——
彫刻刀とかもなの?
ゆうくん
彫刻刀とかはギリギリセーフだけど、ナイフは持たせない。
安全を取り違えているというか、
使わせないことが安全って考えてる。
 
本当は使って、場合によっては怪我をしながら、
ああこれは危ないっていうことを、自分で体験しながら
わかっていくものなんだけどね。
そんな中で火を使いたいって言っても、
それはダメだよ、って言われるよね。
——
そうか。
ゆうくん
でも多くの場合は、どうせダメって言われるだろうと思って、
そもそもやってないっていう場合がほとんどだと思うんだよね。
——
なるほど。図工って、どうやって成績つけてるの?
ゆうくん
成績って根拠がないとつけちゃいけないじゃん。
——
うん。
ゆうくん
かと言って、根拠を明らかにするとなると、
すごくつまらない授業になる.
——
ああ、そうね。
ゆうくん
「まっすぐ線を切れました」「綺麗に全て色を塗れました」
っていう感じで、95%色を塗れているからA、
70%以上塗れているからB、みたいなことになってくるじゃない。
——
うーん、そうなるのね。
わたなべ
でも、子どものそんなところを育てたいわけじゃないじゃない。
この塗らない感じとか、
塗り残し感がかっこよくない? とか、あるじゃん。
 
途中で嫌になっちゃったけど、次のひらめきがあるとか、
そういうことって、往々にしてあるじゃない。
だから、何ができたかじゃなくて、
その活動を通して感動があったり、
ひらめきがあったり、それを評価したいんだけど、
脳の中身は評価できない。
——
だとすれば、感想とか、自己評価を書いたりするの?
ゆうくん
成績の時期なると必ず、
自己評価シートを配るんだけど、中身が、成績とおんなじ項目なの。
「これ、もしかしてそのまま通知表に乗るんですか?」って聞いてくる子とかいて、
そんなことないよって言うんだけど(笑)。
 
あと、それだけだと、人のこと評価とかして
いやな感じって思われるから、
先生の教え方についての項目もつけて、
逆に評価してもらったり。
——
アメリカの大学みたいね。
ゆうくん
面白いのが、大人から見てすごいできてる子って、
自己評価低いんだよ。
こいつどうしようもないなっていうような子は、
自己評価が全部いい(笑)。
自己評価と真面目に取り組んでいる具合は、
もしかしたら反比例するのかもしれない。
——
ああなるほど。それぞれじぶんに求めるものも違うだろうしね、水準というか。
ゆうくん
で、3年くらい前からインタビュー型評価というのもしていて。
本当は一人ずつ1時間とか2時間とか話したいんだけど、
なんせ400人もみてるので。
——
すごい。
ゆうくん
授業中にさりげなく聞き出して、
そういう時にぽろっと出てきた一言から、
この子にはこんな風に響いたんだなあってわかるんだよね。
——
たいへんだなあ…。
ゆうくん
その子の人生に関わっちゃうからね。

(つづきます)

第3回 「展覧会、辞めませんか?」