- ——
- それじゃあ、たねちゃんがトピック出してくれたので(笑)、
まずは授業の話から聞こうかな。
- ゆうくん
- 材料をオールフリーで、好きに使わせるてるんだよね。
こういう図工室ってまずありえなくて。
「そんなことしたら子どもが盗む」とか、
「使ったことない道具を持って怪我する」とか、
「管理が行き届かない」って言われたり。
- ——
- ぼくが子どもの頃の授業でも、
材料は最初に使うぶんだけ一人ずつ渡してたような気がする。
- ゆうくん
- 基本はそうだと思う。
そうすることで、こちらの目が行き届くし、
それこそ評価しやすい。
- ——
- それで、たねちゃんが言ってたみたいに、
木が一ついくら、みたいなところからまず始めると。
- ゆうくん
- まずは買い物からする、っていうこと。
じぶんでこれとこれを使いますって注文するわけ。
だから、買わなかったら後で後悔する。
そのぐらい、全部その子に委ねられるわけ。
だから放課後とか毎日、子どもたちがこれとこれどっちにしようって計算してるんだよね。
- ——
- ああ、足りなかったってなっちゃった時はどうすの?
買ってあげるの?
- ゆうくん
- 追加で買ってあげない。
使っていいお金の上限が決まってるので、どうしようもないからね。
その中でやるしかない。
- ——
- なるほど。他に、たぶん他の先生がやっていないようなことって何かな?
- ゆうくん
- まあそんなことばっかりだけど(笑)
- ——
- ふふふ(笑)
- ゆうくん
- 例えば、授業で火を使うこととか。
- ——
- うん。
- ゆうくん
- 使うかどうかと言われると、使わない人が90%。
- ——
- 使ってはいけないわけではない?
- ゆうくん
- うん。やっていいやっていい。
カリキュラムのやり方は教員に委ねられているから、
火を使おうが使わないが、こちらの自由なので、
それはいいです。
だけど、めんどうくさいし、万が一やけどでもされたら、
責任取れないでしょっていう考え方が、圧倒的多数なんだと思う。
- ——
- 学校的にはそうなのかな、管理の目線で言ったら。
- ゆうくん
- 今では安全で安心の学校ていうのは、
全国の小中学校で言われてるから。刃物は持たせない。
- ——
- 彫刻刀とかもなの?
- ゆうくん
- 彫刻刀とかはギリギリセーフだけど、ナイフは持たせない。
安全を取り違えているというか、
使わせないことが安全って考えてる。
本当は使って、場合によっては怪我をしながら、
ああこれは危ないっていうことを、自分で体験しながら
わかっていくものなんだけどね。
そんな中で火を使いたいって言っても、
それはダメだよ、って言われるよね。
- ——
- そうか。
- ゆうくん
- でも多くの場合は、どうせダメって言われるだろうと思って、
そもそもやってないっていう場合がほとんどだと思うんだよね。
- ——
- なるほど。図工って、どうやって成績つけてるの?
- ゆうくん
- 成績って根拠がないとつけちゃいけないじゃん。
- ——
- うん。
- ゆうくん
- かと言って、根拠を明らかにするとなると、
すごくつまらない授業になる.
- ——
- ああ、そうね。
- ゆうくん
- 「まっすぐ線を切れました」「綺麗に全て色を塗れました」
っていう感じで、95%色を塗れているからA、
70%以上塗れているからB、みたいなことになってくるじゃない。
- ——
- うーん、そうなるのね。
- わたなべ
- でも、子どものそんなところを育てたいわけじゃないじゃない。
この塗らない感じとか、
塗り残し感がかっこよくない? とか、あるじゃん。
途中で嫌になっちゃったけど、次のひらめきがあるとか、
そういうことって、往々にしてあるじゃない。
だから、何ができたかじゃなくて、
その活動を通して感動があったり、
ひらめきがあったり、それを評価したいんだけど、
脳の中身は評価できない。
- ——
- だとすれば、感想とか、自己評価を書いたりするの?
- ゆうくん
- 成績の時期なると必ず、
自己評価シートを配るんだけど、中身が、成績とおんなじ項目なの。
「これ、もしかしてそのまま通知表に乗るんですか?」って聞いてくる子とかいて、
そんなことないよって言うんだけど(笑)。
あと、それだけだと、人のこと評価とかして
いやな感じって思われるから、
先生の教え方についての項目もつけて、
逆に評価してもらったり。
- ——
- アメリカの大学みたいね。
- ゆうくん
- 面白いのが、大人から見てすごいできてる子って、
自己評価低いんだよ。
こいつどうしようもないなっていうような子は、
自己評価が全部いい(笑)。
自己評価と真面目に取り組んでいる具合は、
もしかしたら反比例するのかもしれない。
- ——
- ああなるほど。それぞれじぶんに求めるものも違うだろうしね、水準というか。
- ゆうくん
- で、3年くらい前からインタビュー型評価というのもしていて。
本当は一人ずつ1時間とか2時間とか話したいんだけど、
なんせ400人もみてるので。
- ——
- すごい。
- ゆうくん
- 授業中にさりげなく聞き出して、
そういう時にぽろっと出てきた一言から、
この子にはこんな風に響いたんだなあってわかるんだよね。
- ——
- たいへんだなあ…。
- ゆうくん
- その子の人生に関わっちゃうからね。
(つづきます)