- ——
- それで、展覧会を辞めようっていう話だけど、
展覧会っていうのは、絵を描いて、その横に名前があって、
それを全員分ばーって展示したりするんだよね。
- ゆうくん
- うん。
- ——
- 辞めようっていうのは、どういう考えから?
- ゆうくん
- ぜんぜん展覧会自体が意味のないこととは思わないし、
やってることはすごいことだと思うけど、
世の中にある展覧会を見てて、
こんな展覧会ならやらない方がいいんじゃないかって思うものがたくさんあって。
すごく考え抜いている学校の展覧会はすごいし、
子どもが生き生きするために意味のあるものもあるけど、
子どもも無理してるし、先生も無理してるでしょっていうのが
すごく多くて。
- ——
- ああ。
- ゆうくん
- 「展覧会があるから作品つくります」
「展覧会があるからちゃんと作りなさい」
「展覧会があるからちゃんと作らなきゃ」っていうやり方。
先生もそのクオリティを上げるために、
こんなんじゃ出せないからこうやって塗りなさい、
こんな作品飾れないからやり直し、っていう。
っていうことは、先生がいいと思う作品を展覧会に飾るために、
子どもに絵を描かせてるだけになっちゃう。
その中で子どもは何を学ぶわけ?
「じぶんの描きたいものって描いちゃいけないんだ」っていうことしか学べないじゃない。
それってその子にとってプラスどころか、むしろマイナスで。
- ——
- そうだよね。
- ゆうくん
- でもそれは担任にとってもそうで。
本当は子どもにそんなことさせたくないはず。
でも展覧会があるから、
嫌なんだけどやっちゃんだよねっていうわけ。
だったら、辞めた方がいいって単純に思ったんだよね。
そこでね、多くの図工専科は意味のある展覧会を作る。
じぶんもそれをやって来たんだけど、
今回学校が新しくなるときに、ついに辞めませんかって言っちゃったんだよね。
- ——
- 意味のある展覧会っていうのは、これまでどうやってきたの?
- ゆうくん
- 子どもが無理なく参加できる展覧会にしたんだよね。
具体的に言うと、ただ作品が並んでいて、
いろんな人が見に来るっていうものもやりつつ、
教室を借りて、子どもたちがインスタレーションをしたり、
来た人に自主的に紹介して案内するとか、
パフォーマンスができるようにしたり。
今までの展覧会だと、
体育館で展示して、じぶんたちは授業、っていう感じだったんだけど、その場に子どもたちが自分たちで出向いていく。
そういったことが自然に生まれる自由な空気を、
あの手この手で、学校の時間内で、
先生のストレスにならない、ギリギリのラインを探ってきた。
あとは、NPO法人CANVASと「めがね隊」っていう
プロジェクトを通して、
子どもたちが作品を作ってきた過程を録画した映像を作って、
親が観れるように上映したんだよね。
それを観た親から、「頑張って作ったんだね」って一言
言われれば、子どもが救われるでしょ。
- たねちゃん
- 一年生は、それがすごく救われてると思う。
できあがったものが、これなんだろう?
っていうのもあるから(笑)。
- ——
- そうだよね、できあがらない子もいるものね。
- たねちゃん
- 映像だと、こういう顔してやってたのね、ってわかるから。
- ゆうくん
- そう、表情が見えないんだよね、
止まってしまった展覧会っていうのは。
- ——
- それで、今年いよいよ辞めませんかって言っちゃったんだ。
- ゆうくん
- これまでやってきたみたいに、
意味のある展覧会もあるんですっていう
見せ方もできたんだけど、今回そう言ったのは、
みんな展覧会はやらなきゃいけないものって思ってるから。
もともと展覧会ってやらなきゃいけない行事じゃなくて、
文化的行事っていうものを、
学校で一年に一回ぐらいやりませんかって指導要領に書いてあるから。
それが、学芸会でも展覧会でも、学校文化祭でもいいんだけど、
みんなそれ、展覧会っていうのはやんなきゃいけないことなんだって考えてる。
だから、そこに動き入れてみる。
それって大変だし、理解されないないんだけど、
あえてその姿勢を見せることで、
これってやってもいいんだっていうことを示せればって思ってる。
(つづきます)