もくじ
第1回はじめに、そして奥さんによるもくじの紹介 2016-12-06-Tue
第2回わたなべ先生の授業 2016-12-06-Tue
第3回「展覧会、辞めませんか?」 2016-12-06-Tue
第4回図工の先生になるまで 2016-12-06-Tue
第5回戦う図工の先生、これから 2016-12-06-Tue
第6回あとがき 2016-12-06-Tue

文章を書いたり、音楽を作ったり。
編集ライター見習い中。

戦う、図工の先生。

戦う、図工の先生。

担当・堀合俊博

第5回 戦う図工の先生、これから

——
前から、先生やるのは10年かなって言ってたけど、それはどうして?
ゆうくん
10年でやめようと思ったのは、ずっと続けようと思っていると、
何かしらこの職場で、いい仕事しないといけないって思っちゃうから。
 
教員の仕組みって階段になっていて、
長くいたい人は上から認められたい。
嫌われたくない、上の地位につきたいって思うと、
例えば仕事をしてて、
じぶんはこの仕事を手放したくないから
責任取れませんってなっちゃう。
それで、10年までって考えたら、開き直れるというか。
 
子どもが、「こういうことをやりたいんですけどいいですか?」って言ってきて、
「いいよ、やったらいいじゃん」って言える。
それで、「なんであんなことしたんだ、クビだ!」って
言われても、
「はい!わかりました」ってやめればいいというか(笑)。
その方が、覚悟が決まる。
——
それって、子どものためなのかな、自分の気持ちなのかな、
それとも両方なのかな。
ゆうくん
教員になる前から、薄々感じてたの。
この人、自分で責任取りたくないだけじゃん、とかね。
 
ほとんどの人が、
めんどくさいことをやると他の人に嫌われるしとか、
ここでこんなこと発言したら嫌がられるとか、
空気読めないとか言われたり。
こっちはもともとフリーの図工の先生みたいなものだし、
気持ちの問題なので、10年でやめようって。
 
なんで10年かっていうのは、
単純にキリがいいからというかとそうじゃなくて、
免許更新制があるから。
教員って、10年で免許が失効するんだよ。
——
ああ、そうなんだ。
ゆうくん
うん。つまり、10年間もすれば、
教員のレベルが落ちるというか、
あなたの知識を更新しなければ、教員は務まらないですよ
っていう考え方なわけ。
時代に通用しない教員はやめなきゃいけないっていうこと、
だから、もともと10年契約で、
それを更新しないだけっていう話。
——
やめるとしたら、次に何やろうとか考えてたりするの?
ゆうくん
絶対10年でやめるかっていうと、そうでもなくて。
そう考えれば気が楽だから、っていうことで。
もしかしたら9年目の年に更新制なくなるかもしれないし(笑)、
学校でやっているのも、けっこうおもしろいなあとも思う。
 
というのは、自分が考えること、やることが全部新しいから。
すっごい大変なんだけど、
誰もやったことがないことばかりをやってるから、
提案すると、毎回が新しい。
それって学校ならでは、ある種改革のしがいがある。
やった分の変化が目に見えてわかるから。
 
もしフリーだったら、なんか勝手にやってるけど、
あのひとフリーだからできるんでしょってなっちゃう。
学校なのにそんなことしてるの?っていう、ここにいるから評価されるっていうこともあると思うよ。
——
なるほど。
ゆうくん
自分が学校っていう現場に入ったのは、
ひとつはじぶんのために現場経験としてだけど、
学校っていうのは凝り固まっているっていうのは
知っていたから、
学校にクリエイティブな発想を入れたかった。
こんなに自由にやっていいんだって思ってもらえたら
いいなって。
 
だから、学校教育法のギリギリのラインで、
どこまで自由にできるかっていうのを実践して見せて、
こういう学校があるっていうのを示してみたくて。
そういう意味では、学校っていうインフラを使うのは、
すごい意味があるなって最近は思う。
これを使わない手はないなって。
——
のんさんが生まれてきてから、意識が変わったとかはある?
ゆうくん
変わったとこもあるだろうな。
 
仕事に対してはね、のんさんが生まれたら、
仕事に集中できなくなってきた(笑)。
——
あはははは(笑)
ゆうくん
生まれるってわかってから、巣作りモードというか、
「社会に出て働いてる暇はないぞ」というか。
——
たぶん、逆のこと言うひとが多そうだね、
生まれるからもっと稼がなくちゃとか。
ゆうくん
そうそう、でも逆。
生まれてきたら、もっと一緒にいたり、
うちの家事を手伝いたいって思うし、早く帰りたいって思う。
学校行きたくないって思うもん。
——
ははは(笑)
たねちゃん
子育ての話になるとさ、
今は女の人が働くっていうのがベースとしてあって、
子どもが生まれたら、保育園か幼稚園に入れるっていうのを、みんな疑わずに選んでるけど、
自分たちで育てちゃだめなの?って、話をしたりするよ。
——
うん、うん。
たねちゃん
今、保育園に入れない、みたいな話があるじゃない。
でも、保育園に入れるように、保育園を作ろうとか、
保育士さんの給料をよくしようとか、
そういうことじゃなくて、
預けなくてもいいような仕組みと作るっていう、
そういう話なんじゃないかなって、思う。
 
だから、もし仕事をするにしても一緒に働ける現場に連れて行けるっていうような感じがよくて、
勝手にのんさんが見たり聞いたりして
学びがあるっていう方がいいなって。
いまはそれに興味があるというか、何がしたいというより、
それをどうできるのかなって、思ってる。
 
幼稚園か保育園のどっちがいいかなっていうんじゃなくて、
じゃあ幼稚園作ろうかっていう。
——
ああ、はい。
ゆうくん
幼稚園作れば、子ども預けなくていいね。
たねちゃん
何人かだったら預かれるしね。
ゆうくん
そしたらついでにほら預かって欲しい人近所にいるから、
預かるので月々いくらですって、
それで生計たてれるかもしれない。
そしたら、うちの払う保育料なくなるし、って。
たねちゃん
だからね、いつも「ない」を作ろうとして、
たいへんな方に行っちゃう。
ゆうくん
めんどうくさいことをするのが好きみたいね。

(あとがきに、つづきます)

第6回 あとがき