もくじ
第1回校正という仕事 2016-12-06-Tue
第2回校正の実務 2016-12-06-Tue
第3回校正のこだわり 2016-12-06-Tue
第4回校正のやりがい 2016-12-06-Tue

会社員です。毎日頑張って働いています。

「校正ガール」

「校正ガール」

担当・kumiko

第3回 校正のこだわり

――
誤植の指摘は、正解がハッキリしていますが、
文章や内容に対する指摘は
校正する方によっても違うと思うんです。
校正さん
ええ、そうですね。
――
校正さんの場合は
どんなものを「指摘出し」するんですか?
校正さん
基本的には「ひっかかり」の部分です。
たくさんいる読者の一人として、
この言い回しを読んだときに
ここはひっかかるな、という部分。
普通の言い方をしたほうが自然なのに
無理に擬人化しているとか、
「これってどうなの?」というところを
指摘出ししますね。
――
文章へのダメ出し、ということにもなりますね。
校正さん
はい。
――
そこは容赦しない、と。
校正さん
そこは、やっぱり、ね。
作家さんの原稿にはそこまでしないですけど、
特に雑誌は先ほども言ったとおり
全体のトーンを重視するので。
 
だから、ライターさんにとっては
私は天敵だと思いますよ(笑)
だって、自分が一生懸命書いたものにね、
何だかんだって……。
――
一生懸命書いたもの、というのは
わかっていても、
言うべきものは言わないと、と。
校正さん
だから、できるだけ
僭越にならないようにしよう、とは思っているんです。
――
僭越、ですか(笑)
校正さん
そう、僭越にならないように。
校正しなきゃいけないのに
僭越になっちゃいけないって、
難しいんですけどね。
 
でも、実際にわかりにくかったり
読みにくい文章はあるので、
そこはね、僭越ながら。
――
こだわるんですね。
校正さん
はい。
そこはやっぱり、多くの人に
わかりやすく、間違いなく届けたいという気持ちです。
「これくらいは読者もわかってるだろう」っていうのを
前提で書いてくるライターさんの文章って
結構あるんですよ。
「これ、初めて読んだ人、絶対わからないよ」って
思うことも多いのは事実で……。
――
僭越ながら。
校正さん
指摘出しさせてもらいます。
――
まあ、その前に
編集者がしっかり原稿見ておけ!ですよね。
ゲラの向こう側にいる編集者に対しても
いろいろ思うことはありますか?
校正さん
あります、あります。
「もっとしっかり原稿見ておいてよ!」というのは。
 
あと、私はデザインとか 
そういうところまで見ちゃうんですよ。
誌面の全体のバランスとか。
左右のスペースのアキ具合とか。
「これ、左に寄りすぎじゃん!」とか。
――
そこも、やはり、品質を落とさないための、こだわりですか。
校正さん
そうですね。こだわります。
――
だから、指摘出しが多くなる。
校正さん
読んだ人にがっかりされるのが
イヤなんです。
編集者がそこにひっかからなかったら
そのままの状態で出版されてしまうでしょ。
だから、このまま出版されたら
読んだ人ががっかりする、と思うようなところ、
「ひっかかり」は、そのままにできない……。
――
文章も、言葉遣いも、デザインも、
完全な正解というのがないものに対して指摘する、
というのは、結構勇気がいるんじゃないかな
と思うんですが、どうですか?
校正さん
ああ、それはそうですね。
特に、言葉って生きてますからね。
どんどん新しい言葉もできますから。
 
例えば「新しい」っていう言葉だって
昔は「あらたしい」だったのに、
音が言い易いように「あたらしい」に変わったわけで。
 
そうやって言葉って、多数決、みたいなことで
どんどん変化する。
――
多数決。
校正さん
そうです。
「ら抜き言葉」も
以前は若者がよく使う間違いの言葉という
認識が一般的だったのに、
たくさんの人が使うようになってきたから
今では辞書に載るようにもなってきて。
そうやって、変わっていくのは仕方ないと思うんです。
――
はい。
校正さん
でも、全部が全部「そういうもんだよね」って
迎合するんじゃなくて、
「それでもこれだけは残しましょう」とか
「こういう正しいところは残していかないとダメだよね」
という、歯止めは必要だと思うから。
 
日本語の、そういう部分を守っていきたい
という気持ちがあるんです。
――
だから、指摘できる。
校正さん
そうですね。
ちょっとした、日本語への使命感です(笑)

(つづきます)

第4回 校正のやりがい