この「バイキン城的構造」は、
人気ラブコメディの鉄板的構造にも思える。
ひょんなことから生活を共にし、
やや傲慢でプライドの高い男性が
不器用な想いを寄せながら女性の恋路を応援する。
背中を押したり、時には蹴り飛ばしながら、
自分の気持ちを優先することができずに、
彼女を恋愛成就へと導いてしまう。
ドラマ「ホタルノヒカリ」で、部長(藤木直人)が
主人公ホタル(綾瀬はるか)の片思いを
縁側で鼓舞し続けたように、
あるいはドラマ
「私 結婚できないんじゃなくて、しないんです」で
店主・戸倉(藤木直人)が主人公みやび(中谷美紀)
の婚活をスパルタ指導したように、
いびつな恋には最終回までハラハラさせられ通しである。
思えば、藤木直人は人の恋を応援してばっかりだ。
極めてルックスはしょくぱんまん的であるというのに、
そこもまた趣深い。
気づかぬ不器用なヒロインに「志村うしろ!」とばかりに
ヒントを授けたくなるし、
もっと不器用な藤木直人を応援したくて仕方ないのだ。
そして訪れる最終回で、主人公はハッと気づく。
「隣で応援してくれるから、憧れることができたのだ」と。
そして、「そんな毎日が愛おしかったのだ」と。
ただし、「アンパンマン」には最終回が訪れる気配はない。
恋の成就と引き換えにドキンちゃんに訪れる、
「日常との別れ」と「気づき」は描かれそうにないのだ。
だからこそ、いつまでも追い求めてしまう。
「はやく、気づいてほしい」
「もっと、日常を愛してほしい」
そして考えるあまり、さらに深読みしてしまう。
そういえば、「アンパンマン」には
「ホラーマン」という男も出てくる。
お調子者の骸骨男だ。
ばいきんまんと同じく、
ドキンちゃんに想いを寄せるキャラクターとして
描かれているが、ドキンちゃんは彼には
徹底的にNOを突きつけているように見えるのだ。
少なくとも、彼といっしょに
住むまねなどしないだろう。
あれ。ドキンちゃんは、「日常のぬくもり」に
本当に気づいてないのだろうか。
(つづきます)