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はましゃかさんって、
大学ではグラフィックデザイン専攻なんですよね。
- はましゃか
-
そうですね。
わたし、文字がデザイン的に好きなんですけど、
そういう勉強をしようと思って。
でも、
同じ学科で文字を勉強している人たちと比較すると、
わたしは挫折したほうかもしれなくて。
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- えっ、挫折?
- はましゃか
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彼ら、本当に、狂ったように文字が好きで。
ひとめ見ただけで、
なんのフォントかわかるんですよ。
「○○ゴシックの△△体のBだね」とか!!
- ―
- へぇえー!!
- はましゃか
-
大学に入って衝撃だったのは、
自分も文字がすごく好きではあったけど、
自分以上にそれを好きで
突き詰められる人がいるってことでしたね。
文字組みっていう、
視覚的に違和感がないように
字の幅を整える作業があるんですけど、
それを飽きずに
永遠にやれる人とかいて‥‥。
私はパソコン苦手なので、
「あれはできないな」って。
- ―
-
じゃ、その方たちは、
「デザインの仕事は食うに困らなさそう」ってことで
専攻を選択したというよりは、
作業をする気持ちよさのほうが先にあるんですね。
- はましゃか
-
そうですね‥‥。
わたしがグラフィックデザインを専攻した理由は、
広告代理店の
アートディレクターになって、
大きなポスターとかをつくって、
そういうのを通して自分の表現を、
より多くの人に届けたかったからなんです。
でも、大学には、
「届けたいから」っていう目的以前に、
デザインそのものに熱心な人たちがいて。
- ―
- デザインという、手段そのものを愛していた人たちが。
- はましゃか
-
そう。
わたしにとっては
「まず言いたいことがあって、
それが多くの人に届く」っていう
目的のほうが大きかったから、
その人たちほどデザインに熱中しきれなかったんです。
それで、
こっちのインターネットの、
SNSの世界にでてきてから感じたのが、
「あれ?
この、デザインっていう媒体がなくても、
わたし本人と世界で繋がれる。
自分個人で発信できちゃう」ってことで。
- ―
- あぁー。
- はましゃか
-
広告とかの大きな力を使わないと、
自分の表現はできないと思ってたんですよね。
でも、広告を使わなくても、
ブログ、お芝居、自分そのもの‥‥
そういう他の手段で、
伝えたいことを伝えられるんじゃないかって可能性を
いまは感じてます。
- ―
- なるほどー。
- はましゃか
-
広告だと、どんなにいいものがあっても、
糸井さんくらいのスーパースターじゃないと、
作り手には目がいかないじゃないですか。
そういうことも考えちゃって。
- ―
- 「さみしいな」って思われたんですか?
- はましゃか
-
そうですね。
広告代理店って下積み期間が10年あるんですけど、
そのあいだの激務の中で、
広告の賞に応募したりして、
やっと芽がでるかでないか。
広告業界のきれいな面しか知らずに、
北海道から上京してきたんですけど、
大学で、はじめて業界の闇とぶつかって。
アートディレクターとしてやっていけるか、
自分にも問いかけて。
わたし、働く気満々で大学に入ったんですよ。
アーティスト志望で上京したわけじゃなくて、
本当に、はやく就職して働きたかったんです。
- ―
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おぉ‥‥。
(いまの活動だけみてると、なんだか意外だなぁ。)
- はましゃか
-
はやくアートディレクターになりたかったんですけど、
そこまでに10年のきつい下積みがあるとわかって。
それで、「夢をあきらめた」じゃないですけど‥‥
「もっと直接、世の中に対してなにかできるんじゃないか」
「その10年、わたしらしい使い方があるんじゃないか」って
思うようになったんです。
それで、大学の友達のハヤカワ五味ちゃんを通して
マネージャーさんをつけてもらって、
フリーランス活動をしていこうって
ふみきったんです。
※ハヤカワ五味さん‥‥
株式会社ウツワ代表。
ランジェリーや洋服のブランド経営のほか、
美大出身クリエイターのマネジメントなどもてがける。
(つづきます。)