清水さんのしあわせな耳。
担当・工藤大貴
第2回 幸せの向きが違う。

- 糸井
- 清水さんは、ドロップアウトしてないですよね?
- 清水
- うちの田舎は大学行く以上は、
教員免許取るのが当たり前みたいな常識があったの。
だから、それを取るまでは勉強しましたね。
- 糸井
- へっちゃらなんだ、そういうの。
- 清水
- 家政科で料理は好きだし、面白かったです。
親に心配かけるようなことはしてない。
でも、うちの家系は、
ひいおじいちゃんが「えいざぶろう」って名前なんだけど。
「嘘つきえいざ」って呼ばれてて(笑)。
- 糸井
- (笑)

- 清水
- 自分の楽しみの為にだけ、嘘をついてて。
お坊さんのところに行って、
「田中んちのじいさんが死んだから、すぐ行け」って
真顔で言うと飛んで行くでしょう?
それを見て、「飛んでった」って笑うんだって(笑)。
何回もそういうことしていた人が、私の祖先なの。
- 糸井
- ひいおじいちゃんは嘘つきかもしれないけど、
清水さんはいい子だったんですか?
- 清水
- 私は、いい子でも悪い子でもなかったけど。
糸井さんの「ヘンタイよいこ新聞」を高校のときに読んだり、
『オールナイトニッポン』を聞いたり。
- 糸井
- パッとしていった?
- 清水
- うーん、幸せの度合いがみんなとは違う感じだった。
みんな恋愛しているけど、私はラジオで投稿読まれたり。
- 糸井
- ラジオで選ばれたりするのって、
実は結構難しい。
今、やれよって言われて載る自信ないなあ。

- 清水
- 青春時代ずっと、
そんなことばっかり考えてたからね。
- 糸井
- え、考えればいつでもできるの?
- 清水
- 今は、試されることがないから、
無理かもしれないですね。
- 糸井
- 松本人志さんが、面白いことのテストを、
作ったことがあったんですよね。
「一番ごっつ濃い鉛筆はなんですか」って問題があって。
つまり、6Bを超える濃い鉛筆は?
- 清水
- なんて書いた?
- 糸井
- 模範解答見たら、「鬼B」。
- 清水
- なんか悔しい(笑)。
- 糸井
- 清水さん、大喜利みたいな番組、
ゲストで呼ばれたらどうですか?
- 清水
- 全然できないです。
- 糸井
- お金くれないとね(笑)。
- 清水
- やめなさい(笑)。
「金にならないことはやんないです」じゃないです。
「ギャラが出ないところではオーラは出しません」って
ユーミンさんの名言があるけど。
- 糸井
- なるほどね。
そうか、清水さんできないですか。
でも、普段「思っている分量」は多いよね。
- 清水
- うん、多いと思う。
高校のときに自分の面白ノートがあって、
エッセイ欄があって「今回も書いたけど、読む?」
ってクラスに回して、読んだ人が笑ってるとすごく幸せ。

- 糸井
- 俺は、漫画描いて回覧板回すみたいなのは、
少しはしてるんです。
してるんだけど・・・
- 清水
- うん。
- 糸井
- つかめなかった、お客さんが(笑)。
- 清水
- 芸人だったらダメな言葉だね(笑)。
- 糸井
- 小学生のときは自分じゃないやつがもっとおかしかった。
修学旅行でマイク回すと、もう絶対面白いみたいな。
今、思えばそいつには姉ちゃんがいた。
- 清水
- そうなんだ、関係あるのかな。
- 糸井
- そいつの家に行くと、
姉ちゃんがいるから「平凡」とか「明星」があって、
貸本屋から借りて返していない漫画もたくさんあるの。
- 清水
- え、貸本屋に返さないってことは、
延滞金が溜まっていくでしょ?
- 糸井
- そうだと思う。
俺は返しそびれて、夜も眠れない思いをして、
布団をかぶって泣いてたんです。
どうしたらいいんだろうと思ってたのに、
そいつの家には貸本屋の漫画がじゃんじゃんある。
- 清水
- でかいのかな、人間が。
ルールに対する、外国人が来たんだね。
- 糸井
- そうかもしれない。
昔、エレキを買って練習してるときに、
音楽も勉強もできないやつが
「ちょっと貸してみ?」ってギターを。
そしたら急にミッシェルを歌ったんだよ。
- 清水
- あいつに俺負けてるんだっていうね。
- 糸井
- あいつに俺は負けてるどころじゃなくて、
あいつは登れない山の上で逆立ちしてると思った。
- 清水
- 価値観がひっくり返ったんだ。
- 糸井
- そう。
自分が守っていた価値観の延長線上に夢があったのに。
それを今日の明日で叶える人を見ると、影響ありますね。