清水さんのしあわせな耳。
担当・工藤大貴
第3回 「聞こえる人」の責任。

- 清水
- 確かに、習うものじゃないというのは、
芸能ではあるかもしれないですね。
なぜかできるって人、多いですもん。
- 糸井
- そうですよね。
清水さんのことを、周りが面白がるのは、
あれはなんだろう。
- 清水
- 私は、やっぱり耳で聞いたことを自分なりに、
「こういうふうに感じました」ってやっています。
そうすると、本人の実際と違ってもおかしいんだろうね。
- 糸井
- そして、全然批評してないよね。
良いだの悪いだの何も言ってなくて、
真似をする対象の人に
「私にはこう感じられちゃってますよ」って。
だって、“通信販売をする瀬戸内寂聴さん”なんて、
あの通りしてないけど、
「私にはそう見えてますよ」ってだけでしょう?
- 清水
- うん、そうですね。
- 糸井
- で、清水さんがやると、
お客が「そう見えてる、そう見えてる」って。
- 清水
- 「あるある」ってね。
そう、きっとお客様は共感の人が多いでしょうね。
- 糸井
- 共感ですよね。清水さんはツッコミ過ぎないし、
立ち直れないようなことしないから。
モノマネだから表現できるわけで、
文章で書いてもつまんないよね。

- 清水
- そうかも。
- 糸井
- 清水さんの「そう見えていますよ」の中には、
尊敬が入っている場合と、そうでもない場合があって。
- 清水
- 「必ずウケる、この人!」っていう、
おいし過ぎる場合があるよね。
桃井さんは普通にやっててもすごいウケるのよ。
あと、男の人がやる矢沢永吉さんもすごくおかしい。
尊敬の強い人がやっても、そうじゃない人がやっても、
なんかおかしい。不思議ね、あれ。
- 糸井
- それは、幼稚園児のお母さんが、
子どものハンカチに目印でネコとかクマを描きますよね。
あの、パンダだね。
- 清水
- 何それ(笑)。
- 糸井
- 目印に描くけど、ネコとクマとかわからないでしょう。
パンダはものすごく、パンダ。超パンダなんだよ。
- 清水
- なるほど(笑)。
- 糸井
- で、永ちゃんも桃井かおりも超パンダなんだと思う。
人が集まるしね。
- 清水
- そうか、だからおかしいのかな。
永ちゃんにあって、
糸井さんにないものって何だと思いますか?
- 糸井
- うーん・・・
責任感じゃないかな。

- 清水
- へぇー、そうなんだ。
- 糸井
- 永ちゃんは手を抜けないんだよ。
抜いたらどうなるか。矢沢じゃなくなるって。
- 清水
- そうか、それはみんなのためでもあるし。
- 糸井
- でも、責任はみんなも持ってるわけです。
その色、形、大きさは違うけど、みんな持ってる。
清水さんの最初の武道館ライブ、大勢お客さんが集まって。
あのとき「私がグズグズしてらんない」、
「私は倒れちゃいけない」って思ってるでしょう?
- 清水
- 本番で倒れちゃいけないとは思う。
- 糸井
- ありますよね。
ここは私がちゃんとしないといけないというのは、
やっぱりちょっとずつみんな持ってるんですよね。
- 清水
- それと、糸井さんが「お客さんって1人を見たい」と
言ってくれて、1人でやってみたら、
「あ、これ、いただいた」って感じがして。
- 糸井
- すごかったでしょう?
- 清水
- うん、快感でした。
- 糸井
- 武道館やったぐらいのときに、
清水さんもボスになったんだと思ったよ。
みんな、清水プロダクションに入ったわけでもないのに
集まって、「こうやったほうがいいかな?」、
「こうじゃない?」って言うやつがいてさ。
- 清水
- そう、よくわかりますね(笑)。
- 糸井
- 利害関係なく集まってるでしょう。
- 清水
- えらいもんでそうですね。
目指してやっていたら大変だったと思う。
- 糸井
- 立候補しないのに、ボスになったんだね。
- 清水
- 運も良かった。