清水さんのしあわせな耳。
担当・工藤大貴
第4回 こっちに来て面白がって。

- 清水
- 私、今日最終的に聞きたいのは、
糸井さん、死にたくないだろうなってことなの。
- 糸井
- ああ、死にたくないよ、そりゃ。
- 清水
- 当たり前か。
私のイメージでは、貧乏もしてきた子が
孤独を知りながらも
70人を超える大会社になったわけじゃない?
- 糸井
- 大会社ではない。
- 清水
- でも、すごいサクセスストーリーだから、
そういう人が一番怖いのって死ぬことなのかなって。
- 糸井
- 怖いとかじゃなくて、さっきの永ちゃんの話と同じで、
小さな責任があるんだよ。
しがみつく人になったらやっぱり悪いからさ。
- 清水
- うんうん。
- 糸井
- 俺、得意で社長やってるわけじゃないからさ。
清水さん、「私は人の世話をしてきたんです」って
思ってますか?
- 清水
- してないしてない。
若い頃は思ったの。永六輔さんみたいになって、
新人のライブ見て「こうした方がいいよ」
って背中を押してあげるおばさんになれたら
いいなって。
でも、自分は自分でいっぱいいっぱいなのよね。
- 糸井
- でも、「こんなんでもいいんだよね」は
見せられてる。

- 清水
- そうだね、こんなんでも大丈夫ですよーって。
- 糸井
- あんまりツッパってないから、
番組で二言ぐらいしか喋らなくても、
お笑いの本職の人は気にするけど、
清水さんは気にならない(笑)。
- 清水
- 収録もう終わった、ってね(笑)。
- 糸井
- 「まあ、なにかありゃ、ピアノも弾きますし」みたいな。
だから全部アリというのは、良いですよね。
- 清水
- ああ。意識したことなかった。
- 糸井
- あの、どうして声が似るって、
聞かれたことある?
- 清水
- ない。どうしてだろう。
- 糸井
- 喋りのクセは耳コピして似せるんでしょう。
でも、声の質が似るっていうのは・・・
- 清水
- そうか、うーん。
- 糸井
- だって、井上陽水さんは無理でしょう、普通(笑)。
- 清水
- 「私が演じる誰かを聞いて」っていう気持ちかな。
- 糸井
- その人の代わりに歌ってる。
- 清水
- その人の代わりやるから、こっち来て、面白がって。
っていうのは強い。
- 糸井
- ああ。
- 清水
- あんまり自分で表現したいことない人が得意かもね。
でも30代、40代で増えたレパートリーは、
瀬戸内寂聴さんと、真矢みきさんぐらいで(笑)。
10代で影響受けた人をモノマネしてる、そこ止まり。
- 糸井
- 10代のとき夢中になった人はできるってことは、
そのときは清水さん側の脳細胞がバチバチに・・・

- 清水
- そう。歌で泣いたりとか、一緒に喜んだりとか、
この年になるとそういう歌手出てこないんですよね。
安室奈美恵さんが辞めるときに号泣したり、
そういう人の気持ちになろうと思うんだけど、
やっぱりなれないんです。
- 糸井
- 年とってからでも好きになった人はいる?
- 清水
- 山根会長とか(笑)。
面白がりましょうよっていう気持ちはやっぱりある。
- 糸井
- そういうのは、人が意に介してないものを、
少しピントを合わせて見てるんだよね。
だから、商売にするにはどこか足りないんでしょうね。
- 清水
- ああ、そうですね。
- 糸井
- ユーミンと山根会長を比べると、完成度がね。
でも、ちょっと混ぜるくらいでいいから。
- 清水
- そう。余生はそうやって暮らす(笑)。
- 糸井
- あなたのユーミンは聞きたい人がいるし、
編集し直すというかね。
ユーミンはユーミンなんだけど、
もう一回、ここに置けば違って見えるかなとか。
- 清水
- 薄めて薄めて、ごまかしごまかし(笑)。
私の好きな桃井さんとか矢野さんとかユーミンさんとか、
キャラクターが強いっていうのもありますね。
- 糸井
- お客も濃いんだろうね。
清水さん、この先どうするとか考えてるの?
- 清水
- どうするかは考えないけど、
でも、私、不幸になるような気がしない。
- 糸井
- ああ。それがすべてだね。
その「運悪くないし」みたいなね。