- 糸井
- 清水さんは、先どうするみたいなこと考えるの?
- 清水
-
先どうするは考えないけど、
占いの人のところに行ったときがあって。
そしたら、車椅子に乗って演芸やってるから、って。
- 糸井
- それを拍手で迎える人がいる限りは、OKですよね。
- 清水
- そうかもね。出るかもね。
- 糸井
-
だから、関係性なんだと思うよ。
自分としては嫌だって言っても、
そんなに喜んでくれるんだったら、
車椅子の両側に龍をつけてね、
雷様みたく、雷鳴と共に登場。
- 清水
- 笑えないです(笑)。
- 糸井
- 「さあ、笑え!」ドワワワァーン!
- 清水
- ドラが鳴る‥‥。
- 糸井
-
そういうのもありだし。
だけど、考えたくないというのはあるんだね。
- 清水
- うん、そうですね。でも私、不幸になる気がしない。
- 糸井
-
それがすべてだと思うね。
その「運悪くないし」みたいなね。
ボーフラでもそうなんだよね。
- 清水
- ん?
- 糸井
- ボーフラでもたぶん、そうなんだよね。
- 清水
- ボーフラ? 失礼だな、この会社(笑)。
- 糸井
-
いや、あんなやつらでも、
「運悪くないし」と思ってると思う。
- 清水
- やめてよ(笑)。
- 糸井
-
孫ができて、思ったんだよ。
見てるとね、うらやましいの、やっぱり。
あなたは母親やったから知ってると思うけど、
ひとりでは生きていけないのに、一切心配しないで、
ふぎゃあーとか言ってる。
- 清水
-
子どもって、とくにそうなんですよね。
それでいながら、みんな、
さも自分の力で大きくなりましたって顔するからね。
- 糸井
-
それがないとやっぱり生き物ってダメでさ。
なんとかなるような顔でニコニコしてるほうが、
やっぱり生きるよね。

- 清水
-
そうね、南さんみたいなね。
うまくいく人はだいたいそういう人、多いからね。
- 糸井
-
だいたい、そうですよ。
ぼくなんか、ちょっと余計に考え過ぎるほうでさ。
ものすごく考える私と、何も考えない私の、
2人がいつもリレーをやってるんです。
ものすごい考える私が、「本当、大変なんですよ」って
言いながら、さあ、本番だっていうと、
考えない私のとこにバトンが行くんです(笑)。
おかげでなんとかなった。
まあ、今回、清水さんの
サクセスストーリーを順番に語っていくような企画には
ならなかったけれども(笑)。
- 清水
- やり直して、これ(笑)。
- 糸井
-
だけどさ、3年か4年前に
最初の武道館をやったぐらいのとき、
ああ、清水さんもボスになったんだ、と思ったよ。
- 清水
- え、本当?
- 糸井
-
立候補しないのにボスになった人って
一番いいなと思ったよ。
べつに清水プロダクションに
入ったわけでもないのに集まって、
「こうやったほうがいいかな」
「そうじゃない?」って言うやつが
利害関係なく、なんとなくいた、
みたいになってるでしょ、どうせ。
- 清水
- うん、えらいもんで、そうですね(笑)。
- 糸井
- その場所に立つのは、なかなか大変なことでさ。
- 清水
- 目指したら、きっと大変だと思う。運もよかった。
- 糸井
- で、世話をしてきた覚えもないじゃないですか、人の。
- 清水
- あんまりだな。ボーフラ扱い、あんまりだな(笑)。
- 糸井
-
改めてお聞きしますが、「私は人の世話をしてきたんですよ」
と思ってますか?
- 清水
-
ああ、してない。でも、若い頃は思ったの。
永六輔さんみたいに新人のライブを見に行って、
「こうしたほうがいいよ」とか背中を押してあげるような
おばさんになれたらいいなと思ったけど、
やっぱり自分には自分の明日があって、
今日やれることでいっぱいいっぱいなのよね。
だから、人の背中を押してあげられる人は
大したものなんだなと思った、この年になったら。
- 糸井
-
でも、「こんなんでもいいんだよね?」は見せてるよね。
それから、あんまり、ツッパってないよね。
どうでもいい番組における、どうでもいい居方についても、
べつにそれはそれで‥‥という(笑)。
- 清水
- どうでもいい番組とは何だ、きみ!(笑)
- 糸井
-
例えば清水ミチコがゲストで、
結局二言ぐらいしかしゃべらなくても、
お笑いの本職の人だとわりと気にするのに、
全然気にしない。
- 清水
- しょうがないじゃん‥‥って。
- 糸井
- 出番が来なかった!(笑)
- 清水
- もう終わった!(笑)
- 糸井
-
で、いざとなったらピアノも弾くし、みたいな(笑)。
全部アリですよねっていうのは、ちょっといいですよね。
- 清水
- 初めて客観的に自分を見たような気がした。

- 糸井
-
来る仕事であまり嫌じゃないのは全部引き受けますよ、
にしてるんですよね。
- 清水
- そうですね、うん。
- 糸井
-
いい気にならないモードを保っていられるのは、
いい気になっちゃいけないと思ってるからですか?
- 清水
- いえいえいえ。そんな立場にないからですよ。
- 糸井
-
役割としてさ、多少偉ぶってくれないと困るんですよね、
という場面に呼ばれることはないですか?
- 清水
- 審査員とかね。
- 糸井
-
それとか新人が集まってる場所とかね。
そのときは、役目として何かしますよね、当然ね。
- 清水
-
ちょっと偉そうなほうがいいんですよね、その場合、
おさまりが。
- 糸井
-
おさまりが。で、そういう経験していくと、
どんどんそういう人になっちゃうじゃないですか、
けっこう大勢の方々が。
- 清水
-
キャリアがあると、こんな面倒くさいことあるかね、
という思いになりますよね。糸井さんもやっぱりそう?
- 糸井
-
だって、だいたいどこ行っても今、年上になってるしさ。
とにかくおだてれば機嫌がいいだろう、
と思われている場所に行くことはあるよね。
- 清水
- あれショックですよね。
- 糸井
-
自分はたぶん、いい気にはなっていないと思うんです。
それは、ならないようにしてるからだと思ったんですよ。
清水さんもなっていないのは、どうしてかなって。
一つはさ、やっぱり失われるものが大き過ぎるからだよね。
- 清水
- ああ、そうかもね。
- 糸井
-
誰でもいい気になる機会はあるじゃない? 28、29歳でも。
何回も機会はあるけど逃げてきた人はちゃんと逃げてるし。
- 清水
-
私も気がつかずになっていたときが
あったかもしれないけどね。
- 糸井
-
こういうところなんだよ、この人の面白さは!
清水さん、なってたんだ‥‥。
証拠写真はここにあります!
- 清水
- しまったー、自白した(笑)。
- 糸井
-
でも、奪われるもののほうが多いよ、
というのは気づくね。大損ですよね。
- 清水
-
あと、自分を客観的に見てナンボの商売だから、
私たちの場合は。
- 糸井
-
そうかそうか。「こう見えてるよ」が仕事だからだ。
なるほどね。「こう見えてるよ」は、
実はプロデュースの原点だね。
モノマネがプロデュースの原点です。
ほら、いい話で終わった。
- 清水
- やめてよ、ちょっと。軽薄(笑)。
- 糸井
-
こういう会話は仕事じゃないと
やっぱりありえないんだよなあ。
いや、面白かった。
- 清水
- 面白かった。あっという間。

<おわります>
