糸井重里×清水ミチコ対談なにかを「思う」、そして「書く」
担当・高城 つかさ

第3回 責任感は、だれもが少しずつ持っている
- 清水
-
永ちゃんにあって、糸井さんにないものっていうと何だと思いますか。
- 糸井
-
うーん……。責任感、じゃないかなあ。
学んでますよ、ぼくは。永ちゃんから学んでますよ(笑)。
やるべきときにどのくらい本気になれるか、とか、遮二無二走れるか、とか。そういう姿勢を。
- 清水
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なるほど。
- 糸井
-
あのね、永ちゃんは、ボスザルだと思うんだ。
- 清水
-
ボスザル?
- 糸井
-
うん。まえ、チンパンジーの戦争ドキュメンタリーを観たことがあるんだけど、ボス争いがあるんだよ。
それで、クーデターを起こそうとして失敗したサルたちが追い払われて、となりの山からずーっと様子を見てるんだ。
- 清水
-
かわいそう!

- 糸井
-
おもしろいでしょう。
で、なんで決めるんだろうって思わない? その「ボス」を。
- 清水
-
うんうんうん。
- 糸井
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そしたらね。
ケンカじゃないんだよ。
- 清水
-
ケンカじゃないの?
- 糸井
-
ケンカじゃないんだよ。
- 清水
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ケンカ以外に何かあるの?
- 糸井
-
教えましょう。
……
パフォーマンスなのよ。
- 清水
-
ウソ!(笑)
- 糸井
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まずね「ボス。いずれ、おれは挑戦しますからね」みたいな目で、ボスを見るところから始まってるわけ。

- 糸井
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それで、そのサルに、ボスが「最近の目つきは目に余る」って攻撃をすると、クーデター前は追って逃げるのを繰り返す。
- 清水
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うん、うん。
- 糸井
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繰り返しているうちに、あるときサルが仲間を連れてきて「いつまでもボスと呼んでると思ったら、大間違いですよ!」ってやるの(笑)。そこでボスが「おい! 目にもの見せてやる!」とかかっていくと、こんどは追いかけっこになるんだよ。
そのなかで、たとえば川のそばに行くと、石をもって川に向かってバッシャバシャ投げるんだ。
- 清水
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川に向かって?(笑)関係ないのに。
- 糸井
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うん。なんの関係もない(笑)。
で、ボスのほうも、川に向かって石をバシャバシャ投げるんだ(笑)。

- 糸井
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ひっくり返ったり、水しぶきあげたり、もうその場が嵐になるわけ。
それでけっきょくは、負けたほうが引き下がるの。
- 清水
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へぇ~。
- 糸井
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つまり、ボスを決めるのにパンチの強さとか関係ないんだよ。
- 清水
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力じゃなくて「やろうと思ったらこれだけできるよ」っていう。
- 糸井
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そう、パフォーマンス(笑)。そのドキュメンタリーを観てから永ちゃんのステージを見ると、うん。やっぱり、永ちゃんのボスザル感はすごいよ。
- 清水
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好きなんですね。
- 糸井
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手を抜けないんだよ、たぶん。「抜いたら矢沢じゃなくなる」って。だから、矢沢は矢沢をまっとうするんですよ。
さっき「責任感」と言ったのはそういうことで、ちっちゃい責任感は、みんなが持っていると思うんだよね。
- 清水
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なるほど、そうかも。
- 糸井
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うん。やっぱり、「わたしがちゃんとしないといけない」気持ちは、みんなありますよね。