糸井重里×清水ミチコ対談なにかを「思う」、そして「書く」
担当・高城 つかさ

第4回 モノマネは、解像
- 糸井
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清水さんは、モノマネをやっていて、どうして声が似るのか聞かれたことある?
- 清水
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ないなあ。どうしてだろう(笑)。
- 糸井
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考えたらおかしいよね、声が似るって。
- 清水
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ほんとうだ。しかも、それで生計を立ててるって(笑)。
- 糸井
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(笑)。しゃべるときの癖を似せるのはできるよ。でも、清水さんは声の質まで。どうしてなんだろうね。
- 清水
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うーん……。自分ではよくわからないけど、なにか表現したいものがない人のほうが、モノマネは得意かもね(笑)。
わたしの場合、「わたしの歌を聞いて」っていう気持ちにはならないけど、「わたしが演じる〇〇を聞いて」っていう気持ちにはなる。
- 糸井
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なるほど、その人の代わりに歌っている、みたいな。
- 清水
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そう。「代わりをやるから聞いてほしい」みたいな気持ちは、人より強いんじゃないかな。

- 清水
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モノマネをしている人みんなそうだと思うけど、わたし、10代のときに影響された人をマネしているんだよね。
- 糸井
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ということは、いま流行っている歌手をマネしなさいと言われても、そんなにできないんだね。
- 清水
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そうですね。
- 糸井
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たとえば、絵描きさんが「水の中に氷が浮かんでいる」様子をスケッチするときは、見えているから描けるわけで。
- 清水
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うん。
- 糸井
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でも、ぼくらにはその氷が浮かんでる様子が見えていない、というか。解像度が低い、というか。
- 清水
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そうそうそう。
- 糸井
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だから、描きようがない。
- 清水
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そうそうそう、たしかにそう。

- 糸井
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それは、スマートフォンのカメラも同じだと思ってて。
ふつう、カメラのレンズって、ピカピカに磨かれた大きなサイズじゃないですか。だから「いい写真を撮るにはレンズが大事」と言われてきたわけだけど、これ(スマートフォン)はレンズは小さいうえに、頭もいいんです。
- 清水
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解像する、頭。
- 糸井
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うん。それで、こんなによく映るわけよ。(見せる)
- 清水
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すごい、ほんとうだ。
- 糸井
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その話と、絵描きの話は同じなんじゃないかな。解像できるか、できないか。
- 清水
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なるほど。
10代のころは、歌で泣いたりいっしょに喜んだりしていたのに、この年になるとできないのって、たぶん、解像できていないんだね。
- 糸井
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うん、そうかもね。
でも、年をとってから好きになった人はいるよね。

- 清水
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うん、瀬戸内寂聴さんもそう。
- 糸井
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でも、ユーミンと比べると、完成度が……(笑)。
- 清水
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ちがう、ぜんぜんちがう(笑)。
- 糸井
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モノマネって、じつはけっこう難しくてさ、大ヒットが出ても、つづけるのってむずかしいじゃない。
- 清水
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うん、たしかに。
- 糸井
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そのなかで、清水さんは、編集しなおすっていうか(笑)。
- 清水
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編集(笑)。
- 糸井
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それで、武道館に立てちゃうんだから。
- 清水
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ほんとうだね。それは、わたしがモノマネする世代が強いこともありますよね。みんなが知っているし。
- 糸井
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お客さまも、好き度が濃いんだね。
- 清水
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うん。そうそうそう。すごく、ありがたいですね。