不幸になるような気がしない人
担当・コレット

第5回 自分を客観的に見て、ナンボの商売
- 糸井
-
改めてお聞きしますが(笑)、
「私は人の世話をしてきたんですよ」
って思ってますか。
- 清水
-
ああ、してない。でも、若い頃は思ったの。
私も永六輔さんみたいになって、
新人のライブを見に行って、
「こうしたほうがいいよ」とか背中を押してあげられる
おばさんになれたらいいなと思ったけど、
やっぱり自分は自分のことで一杯一杯なのよね。
だからこの年になったら、
人に教えてあげるって人は大したものなんだなと思った、
- 糸井
-
つまり、してないって。
- 清水
-
してなーい。これからもしなーい(笑)。
- 糸井
-
(笑)。でも「こんなんでもいいんだよね」は見せてるよね。
- 清水
-
うん、そうだね。こんなんでも大丈夫ですよって(笑)。
- 糸井
-
というのは見せてるね。
それから、あんまりツッパってないよね(笑)。
例えばある番組で清水ミチコがゲストなんだけど、
結局二言ぐらいしかしゃべんなくても、
全然気に(笑)‥‥。
- 清水
-
しょうがないじゃんつって(笑)。
- 糸井
-
で、そのときには、まあピアノも弾くしみたいな(笑)。
- 清水
-
何かありゃ(笑)。
- 糸井
-
だから、全部アリですよねっていうのは、
ちょっといいですよね。
- 清水
-
うーん。初めて客観的に自分を見たような気がした。

- 糸井
-
意識はしてないよね。
- 清水
-
うん、してない(笑)。
- 糸井
-
「好きな花は何ですか」って聞かれたことある?
インタビューで。
- 清水
-
そういえばないね。(笑)。
- 糸井
-
聞いてみたら面白いと考えるとさ、
「好きな色は何ですか」だけでも何とでもなるんだよ。
- 清水
-
そうか、きっかけだけで。
- 糸井
-
こっちの腹次第だよ。
- 清水
-
ほう。いい対談になりましたね(笑)。
- 糸井
-
通り一遍に好きな花でお茶を濁そうとして聞かれると
答えたくないですよね。
でも、好きな花は何ですかっていうのを、
おまえにだったら言ってみたいって思わせればいいわけだから。
- 清水
-
うん。
- 糸井
-
別にいい話で終わらせるっていうテーマではないんだけど、
清水さんもいい気にならないモードを保っていられるのは、
いい気になっちゃいけないと思ってるからですか(笑)。
- 清水
-
いえ、そんな立場にないからだよ(笑)。
- 糸井
-
役割として、多少偉ぶってくれないと困るんですよ
という場面に呼ばれることはないですか。
- 清水
-
あ、審査員とかね? うんうん。
- 糸井
-
それとか、新人が集まってる場所とか。
- 清水
-
ああ、そうですね、あるある。
- 糸井
-
そのときは役目としてしますよね、当然ね。
- 清水
-
そうですね。やっぱりちょっと偉そうなほうが、
その場合おさまりがいいんですよね。
- 糸井
-
おさまり。で、それを経験していくと、
どんどんそういう人になっていっちゃうじゃないですか、
けっこう大勢の方々が(笑)。
- 清水
-
これ本当キャリアあると、
こんな面倒くさいことあるかねっていう
思いになりますよね。
糸井さんもそう、やっぱり?
- 糸井
-
うん。だって俺大体どこ行っても今、
年上になってるしさ。
- 清水
-
ああ、そうかそうか。
- 糸井
-
そんなんだったり、
とにかくおだてれば機嫌がいいだろう
って思われてる場所に行くことはあるよね。
- 清水
-
あれショックですよね。
- 糸井
-
自分は多分いい気になってないと思うんです。
なってないのは、
なんないようにしようとしてるからだと思ったんですよ。
清水さんもなってないのはなんでかなっていうと、
一つはさ、やっぱり、
失われるものが大き過ぎるからだよね。

- 清水
-
ああ、そうかもね、うん。
- 糸井
-
そうなっちゃったらこれできない、
あれできないが、あるよね。
- 清水
-
うん。しかも、モノマネしてる人間が、
「ちょっとつかみがね」とか言われたら、
本当腹立つと思う。
- 糸井
-
でも、モノマネ界は、
ちょっとなっちゃってるじゃないですか。
やっぱり、つらかった人ほどなりがちな。
- 清水
-
あ、そうかな。
- 糸井
-
うん。守るものが大きいからから
そうしないといけないのかもしれないけど、
28、9才でも、誰でもいい気にはなれるじゃない?
- 清水
-
うんうんうん。
- 糸井
-
それを何回も機会があったろうに、
逃げてきた人はちゃんと逃げてるし。
- 清水
-
ああ、そうね。
でも、気がつかずになってたかもしれないけどね。
- 糸井
-
ああ、なるほど。こういうとこなんだよ、
この人の面白さは。なってたんだ。
- 清水
-
しまったー、自白した(笑)。
- 糸井
-
(笑)。
でも、奪われるもののほうが多いよっていうのは、
ちょっとなんかね、気づくね。
- 清水
-
うん。
- 糸井
-
大損ですよね。
- 清水
-
そうね、うん。あとやっぱりほら、
自分を客観的に見てナンボの商売だから、私たちは。
- 糸井
-
ああ、そうかそうか。
あ、「こう見えてるよ」が仕事だからだ。
- 清水
-
そうそう。それもあると思う。
- 糸井
-
そうだ、そうだ。なるほどね。
「こう見えてるよ」っていうの、
実はプロデュースの原点だね。
- 清水
-
あ、そうかね、うん。
- 糸井
-
モノマネがプロデュースの原点です。
ほら、終わった。
- 清水
-
やめてよ、ちょっと。軽薄(笑)。
- 糸井
-
やめてよ、軽薄、までで(笑)。
- 清水
-
やめてよ、軽薄、まで(笑)。

- 糸井
-
いや、面白かった。
- 清水
-
面白かった。あっという間。
- 糸井
-
こういう会話は仕事じゃないとやっぱりありえないんだよなあ。
- ――
-
2018年の紅白歌合戦が終わったあと、
ツイッターで清水さんが
「ゆうべの紅白は最後まで(ユーミンが自分だと)
バレなかったみたい。よかった。」
と発言されたのがすごい面白かったです。
- 清水
-
ああ、ひどいね(笑)。
- ――
-
いい加減なツイートだなと思いながら(笑)。
- 清水
-
友達から、ツイッターで『紅白』に出てたのが
清水ミチコじゃないかってすごい話題になってるって言われて、
だから自分でちょっと言ってみるかと思って(笑)。
- 糸井
-
ああ‥‥。
- ――
-
しかも翌日っていうあたりも、なんかいいなと思って(笑)。
- 清水
-
(笑)
- 糸井
-
それ言える権利のある人って、1人しかいないもんね。
ああ、うらやましいなあ。
清水ミチコになってみたいよ。
