清水さんのモノマネは、批評をしていないよね
担当・フクオヨウコ
第3回 みんなと幸せの尺度が違った
- 糸井
-
大学時代、卒業できるくらい勉強はしたの?
- 清水
-
うん、家庭科の教員免許も持ってますよ。
地元は飛騨高山なんですけど、
うちの田舎って短大や大学に行く以上は、
教員免許を取るのが当たり前みたいな常識があったの。
だから、それを取るまではちゃんと勉強しましたね。
- 糸井
-
ドロップアウトをしてないんですね。
- 清水
-
うん、してないです。
親に心配かけるようなことはしてない。
- 糸井
-
なのに、仕事でやってることは、ずーっと(笑)。

- 清水
-
ずーっと人のモノマネ(笑)。
とにかくうちの両親は、
森山良子さんの「ざわわ」をやめろやめろって(笑)。
- 糸井
-
(笑)
- 清水
-
「まあまあ、もう今年でやめますから」って
言い続けて30年もやって(笑)。
- 糸井
-
もはや、森山良子を見てるとき、
清水ミチコを思い浮かべるようになってしまうくらいに。
- 清水
-
なってしまった(笑)。
でも、うちの家系にはエイザブロウっていう名前の、
私のひいおじいちゃんに当たる人がいるんですけど、
飛騨高山では「嘘つきエイザ」って呼ばれてたらしくて。
- 糸井
-
うん(笑)。
- 清水
-
人って普通、自分の名誉やお金のために
嘘をつくことが多いと思うんですけど、
そうじゃなくて、
自分の楽しみのためにだけ嘘をつく人で。
- 糸井
-
性欲のように嘘つきな欲があったんだ(笑)。
- 清水
-
そうそうそう、息をするようにね(笑)。
たとえば、昔はお坊さんってすごく地位が高かったんだけど、
お坊さんのところに行って、
「田中んちのじいちゃんが死んだから、すぐ行け」とか言うの。
そんなことを真顔で言われたら、飛んでいくでしょう?
それで、お坊さんが慌てて飛んでいくのを見て、
ひとりですっごい笑ってんだって。
「飛んでった、飛んでった」って(笑)。

- 糸井
-
単純な嘘だね(笑)。
- 清水
-
そう。それを何回も繰り返して、
ひとりで笑ってた人が私の祖先なの(笑)。
- 糸井
-
ひいおじいちゃんは嘘つきだったのかもしれないけど、
清水さんはちゃんといい子だったんですか。
- 清水
-
私はいい子でもなく悪い子でもなく、
パッとしないような子だったけど、
やっぱり糸井さんの『ヘンタイよいこ新聞』を
高校生のときに読んだり、
『オールナイトニッポン』を聴いたりして、だんだんと…
- 糸井
-
パッとしていった?
- 清水
-
自分の中ではね。
まわりの人がみんな恋愛してる中で、
自分だけが『ビックリハウス』に載ったとか、
ラジオで投稿が読まれたとか、
幸せの尺度がちょっと違う感じだった。
- 糸井
-
だけど、ラジオで選ばれたり、
『ビックリハウス』に載ったりするのって、
実はけっこう難しいことで。
- 清水
-
そうかな。
- 糸井
-
うん。今、やれよと言われても、俺、載る自信ないよ。

- 清水
-
本当ですか。
- 糸井
-
だから、それができちゃったわけでしょう?
- 清水
-
青春時代はずっと、そんなことばっかり考えてたからね(笑)。
- 糸井
-
ハガキ職人ですよね、いわば。
- 清水
-
そうそう。
ハガキ職人ってけっこう幸せっていうか、夢がありましたよね。
- 糸井
-
そうだよね。
俺はね、そういうお笑いが絡むようなものはできなくて。
昔、ラジオ番組でさ、ポエムを送って採用されたら、
明治チョコレートの詰め合わせがもらえる
コーナーがあったんだよ。
それで、誰かが読まれたっていうのを聞いて、
俺もやってみようと思って送ったら、採用されたんだよね。
もし『ビックリハウス』みたいに面白さが
求められるコーナーだったら、俺は無理だったと思う。
お笑いじゃない人だったから、俺。二の線だった。
- 清水
-
二の線って、自分で言った(笑)。
- 糸井
-
昔は二だったんだ(笑)。
- 清水
-
(笑)
- 糸井
-
ラジオや『ビックリハウス』で選ばれるような投稿って、
考えればいつでもできるの?
- 清水
-
今はもう、無理かもしれないですね。
採用されるかどうか、みたいに試されることがないから。
思いついたらすぐ、ライブのためのネタにしてますね。
もう、そういうふうになっちゃったから。