- 清水
- わたし、糸井さんに聞きたいこといっぱいあった、もともと。
- 糸井
- え、そう?
- 清水
- いつも仕事で流れていっちゃうからね。
- 糸井
- うんうん。
いや、ぼくもね、清水さんについては、
言ったり聞いたりしてみたかったのよ。
改めて(南)伸坊とも
そんな話っていうのはあまりしてないしさ。
- 清水
- 旅行行ってもそうだった?
- 糸井
- うん。しょうもないことは言ってんだけど(笑)。
- 清水
- あ、わかる。
- 糸井
- 「伸坊ってどうだったの?」みたいなこと、
あんまり言ってないんだよ。
そういう典型の人が清水ミチコで、
アッコちゃん(矢野顕子)とは案外ね、
しゃべってることあるんだよ。
人生の深淵について語ったりしてるんだ、たまには。
- 清水
- へぇー。文字になってないだけで。
- 糸井
- そうそう。
- 糸井
- 清水さんは、学校もちゃんと出て、
ドロップアウトをしてないんですよね、つまりね。
- 清水
- うん、してないです。親に心配かけるようなことはしてない。
でも、わたしの家系のひいおじいちゃんって人が
エイザブロウって名前なんだけど、
「嘘つきエイザ」って呼ばれていて(笑)。
- 糸井
- うん(笑)。
- 清水
- とにかくなんか、普通は自分の名誉とか
お金のために嘘をついたりするけど、
そうじゃなくて、本当に自分の楽しみのためにだけ嘘ついてて。
- 糸井
- 性欲のように嘘つきな欲なんだ(笑)。
- 清水
- そうそうそう(笑)。
たとえば、お坊さんのところに行って、
昔はお坊さんってすごい位の高い人なんだけど、
「田中んちのじいちゃんが死んだから、すぐ行け」とか
真顔で言うと、お坊さんは信じて飛んで行くでしょう?
それを見て、1人ですっごい笑ってんだって。
「飛んでった、飛んでった」つって(笑)。
- 糸井
- 単純な嘘だね(笑)。
- 清水
- そう。それを何回も繰り返して
1人で笑ってたって人がわたしの祖先なの(笑)。
- 糸井
- ちゃんといい子だったんですか。
ひいおじいちゃんは嘘つきかもしれないけど、「わたし」は。
- 清水
- うん、わたしは、いい子でもなく悪い子でもなく、
パッとしないような子だったけど、
やっぱり糸井さんの「ヘンタイよいこ新聞」とか
そういうものを高校のときに読んだり、
『オールナイトニッポン』聞いたりとかして、
だんだんお笑いの世界みたいなのを‥‥
- 糸井
- パッとしていったわけ?
- 清水
- 自分の中ではね、パッとしていったけど、
ほかの人はみんな恋愛してる中で、
自分だけが「ビックリハウス」載ったとか、
ラジオで投稿読まれたとか、
幸せを感じる対象がちょっと違う感じだった。
- 糸井
- だけど、ラジオで選ばれたり、
「ビックリハウス」載ったりするのって、
実はけっこう難しいことで。
- 清水
- そうかな。
- 糸井
- うん。今、やれよと言われて、載る自信、ぼくはないよ。
- 清水
- 本当ですか。
- 糸井
- うん。
でも、それができちゃったわけでしょう?
- 清水
- あ、でも、そんなことばっかり考えてたからね、
青春時代ずっと(笑)。
- 糸井
- そういうのって、いつも考えればできるの?
- 清水
- 今はもう、無理かもしれないですね、そういえば。
そういう試されるときがないから。
もう思いついたらネタにしてるっていうかね、ライブのための。
- 糸井
- でも、あれも、何だっけ、
『IPPON』みたいな番組があるじゃないですか。
めちゃくちゃ面白いじゃないですか(笑)。
- 清水
- すごいよね。
- 糸井
- あれどうですか、清水さん。もしゲストで呼ばれたら。
- 清水
- いやあ、全然無理、全然無理です、
やっぱりああいうことって。
- 糸井
- じゃ、清水さんのあの面白がらせるのは、何あれ。
- 清水
- わたしは、やっぱり耳で聞いたことを自分なりに、
こういうふうに感じましたっていうことを提出すると、
違っててもおかしいんだろうね、きっと。
- 糸井
- 昨日、ああ、そうだ、
明日、清水さんに会うんだなと思って、
何か一つぐらい自分で、「これを思ったんだよね」
ってこと言いたいなと思って発見したのが、
「清水さんは『わたしはこう感じてます』
っていうことをしてるんだね」
ってことだったの。
- 清水
- あ、本当? あ、当たってます(笑)。
- 糸井
- ねえ。で、なぜそういうことを考えたかというと、
批評してないんだよ、全然。
つまり、いいだの悪いだの何も言ってなくて、
その真似してる対象の人が、
「わたしにはこう感じられちゃってますよ」っていう(笑)。
- 清水
- (笑)。
でも、そうかも、うん。
- 糸井
- 通信販売をする瀬戸内寂聴さんとかあるじゃないですか。
- 清水
- はい(笑)。
- 糸井
- 寂聴さんはあのとおりしてないんだけど、
私にはそう見えてますよっていうだけでしょう?
- 清水
- そうですね、うん。
- 糸井
- で、いいとか悪いとか一つも言ってないんですよ(笑)。
- 清水
- (笑)。
うん。あんまり善し悪しは関係ないかもね。
- 糸井
- ねえ。たとえばある芸能人がいて、
まあ、みんながその人は概ね強気なことを言ってる
っていうのを感じてるんだけど、それをネタにして、
「わたしにはあなたのことは、
すごく強気なことを言ってる人として
面白いなあと思って見られちゃってますよ」っていう(笑)。
- 清水
- (笑)。
- 糸井
- で、本人は悪気があるとかないとかのことを
全然言うつもりはないんですけど、
こう見えてるんですよね(笑)。
- 清水
- 確かに、うん。
- 糸井
- そうするとお客さんも、
「そう見えてる、そう見えてる」って(笑)。
- 清水
- 「あるある」つって、そうそうそう(笑)。
そう、きっとお客様は、
共感で笑ってる方が多いでしょうね。
- 糸井
- 共感、共感ですよね。
ツッコみ過ぎないじゃないですか。
- 清水
- あ、そうですね(笑)。
- 糸井
- 立ち直れないようなことしないじゃないですか(笑)。
- 清水
- そうかも(笑)。
- 糸井
- モノマネだから、そういうふうに表現できるんだよね。
- 清水
- うん、そうだと思います。
(つづきます。)