ほぼ日の塾から生まれたコンテンツ。
このコンテンツは、「ほぼ日の塾 実践編」で塾生の方が課題としてつくったコンテンツをデザインし直したものです。
「ほぼ日の塾 実践編」について、くわしくはこちらをご覧ください。
僕は恋愛が上手になりたい。
かつなり

かつなり

1995年生まれの21歳。
2016年現在、大学4年生。
東北出身で、大学進学をきっかけに
上京してきました。
中学、高校と野球漬けの生活を送り、
大学では一転、本を読んだり、映画を観たり、
音楽を聴いたりと
インドアなことばかりしています。
「ほぼ日の塾」の課題として
「私の好きなもの」というテーマで
エッセイを書いてもらったところ、
読んで心を奪われたものがありました。
ものすごく完成度が高い、とはいえず、
構成もすっきりしていないのですが、
これはいましか書けないんだろうな、
という素直な視線が印象的でした。
テーマは「恋愛」。
彼が経験した数少ない
「恋愛のようなもの」を手がかりに、
ダメな自分と向き合っていきます。
見守るように、読んでみてください。
15歳の僕、初めて恋をする

僕が初めて人に恋をしたのは
中学3年生のときだった。

Kさんという女の子に片思いをした。

僕がKさんに思いを寄せるようになったきっかけは
朝のあいさつだった。
中学3年生のとき、僕と隣のクラスのKさんは
登校して朝、廊下で会うと
「おはよう」、「おはよう」
と言いあう関係だったのだ。
あいさつを交わすようになった経緯は
どう頑張っても思い出せないのだけれど、
まぁ、経緯なんてどうでもいいやってくらい
とにかくその廊下で彼女が言う「おはよう」を
思い出せることが僕にとって大事だ。

ものすごく可愛かったのだ。

Kさんは綺麗な長い黒髪をしていて、
肌は色白で、顔に少しそばかすがあって、
黒目が小さくて、薄い顔立ちで、
もうそれだけで僕の好みど真ん中の容姿だったけれど
「おはよう」と言うとき、
目が線みたいになって、顔がくしゃっとなって、
白い歯が丸見えの笑顔になって、
本当に素敵だったのだ。

一方、野球部に入っていた僕は
丸ボウズで丸顔、眉が太め、身体も太めで、
もっさりとした見た目だった。
おまけに女の子の前だとモジモジして
声が出なくなってしまうような性格だった。

でもKさんはそんな僕に
最高の笑みであいさつをしてくれる
女の子だった。
好きになる理由しかない。
朝に「おはよう」とあいさつするたびに、
僕のなかで熱い波が寄せては返すような感覚が
強くなっていった。
でもそれを「好き」とは自覚しないまま
中学校を卒業してしまった。
僕とKさんは別々の高校に進学した。

そこから時は経って僕が再びKさんを見るのは、
高校2年生の秋になる。

高校に入ってからの僕は泥の中で生きているようだった。
楽しいことが無かったとは言わないけど、
憂鬱にならなかった日はほとんど無かったと言える。
その原因は「野球」だ。

僕は高校でも野球部に入部していた。
県内では中堅どころの硬式野球部だ。

野球が上手くなかった僕は、中学時代、
部内でなんとか「下の上」ぐらいの実力だったが、
高校の野球部では間違いなく、
部員のなかで「下の下」に位置していた。
中学時代より断然厳しい練習に体力は追いつかず、
練習では失敗をしてばかり。
周りに迷惑をかけて、
怒鳴られてばかりだった。
下手くそだから、先輩や同期の部員から
バカにされることも多かった。
毎日グラウンドに出るたびに
気が重くなり下を向いていた。

1年生のときは部活が怖くて、憂鬱で、
朝、家を出る前や、自転車で通学している最中に
涙が出てしまうこともあった。
どうしても野球が嫌で、
ズル休みをしたことも何度かあった。
でもズル休みをすると、今度は自分の弱さが嫌で
さらに落ち込んでいた。

2年生の秋になると、体力がついて練習には
ついていけるようになった。
怖い先輩も代替わりでいなくなった。
でも僕はやっぱり憂鬱だった。
なぜなら自分より上手い後輩が何人もいるからだ。
2年生の数人は公式戦のベンチ入りメンバーから外れた。
僕もそのなかのひとりだった。
上級生でありながら応援席にたたずむ2年生数人は
部内でもどこか気を遣われるような
見下されるような独特の立ち位置になる。
本当にそれは情けなくて最悪の気分だ。

高校生の僕は、心底、野球が嫌いだった。

そんな憂鬱な高校生活を送っていたある日、
自転車で登校中の僕は、
たまたま歩いているKさんを見かけたのである。
Kさんの高校と僕の高校はわりと近くにあったのだが
その姿を見るのは高校生になってから初めてだった。
道路を挟んで少しのあいだ、見ただけだったけれど、
僕の胸は高鳴っていた。

実は中学校を卒業して、接点がなくなってからも
Kさんのことを忘れられずにいた。

「可愛かったなあ。
なんでもっと仲良くなっておかなかったかなあ」
なんて後悔をしていたのだ。

だからKさんを見かけたときの
ドキドキはすごかった。

僕はKさんが好きだ。
どうにかして近づきたい。

そう思った。

(つづきます)
次へ
2016-09-26-MON

もくじ

第1回 15歳の僕、初めて恋をする

第2回 18歳の僕、恋のパワーを知る

第3回 21歳の僕、人生で初めての告白をする

第4回 21歳の僕、恋愛の難しさを知る

第5回 モテる友人に教わった「恋愛の基本」

第6回 上手に恋愛できない本当の理由