●理解してリスペクトする |
ケビン |
ところで糸井さんって
仕事何してるんですか? |
糸井 |
コピーライターです。 |
ケビン |
何か話きいてるといろんなところに
知りあいがいるみたいじゃないですか。
なんでそうなったんですか? |
糸井 |
それ、きかれたことないなあ。
……たぶん、友達の友達は友達だからです。
ケビンさんがラグビーのひとと知りあって
K1に行くみたいな。あ、これもケビンさんと
似てるけど、ぼくは理解するだけでいいんです。
そのひとに何あげられるわけじゃないけど、
理解するだけで友達になれるじゃないですか。
ぼくは相手にはいつもリスペクトなんです。
ああケビンさんに会えてよかったなっていうのが
こんなかっこしてても(寝っ転がる)あるんです。
たぶんそうじゃないかなあ。
そうするとまた会ってもいいなあって
気がするじゃないですか。 |
ケビン |
悟られたような、なるほどね。 |
糸井 |
とんでもないですよ。
ただ、ぼくのやることは勝ち負けじゃないから。
高阪くんたちはリングで勝ち負けがあるけど
ぼくらはそうじゃないから、
相手のいいものをもらって、こっちからも
何かおみやげを持たせられるようにやると。 |
ケビン |
いやあわかりますよ。
具体的に何やられているかは知らないけど
そういうことを言っているのは
うまくいってる証拠ですよ。
ぼくのほんとうのメインは
トータルワークアウトのフィットネスといって、
15年くらい考えた方法をひろげたいんです。
94年から学生さんを集めてトレーナー育てる、
それに自分の人生をつかってみようかなと。
毎年3〜40人くらい入って3、4人育てばいいほう。
これはぼくのなかで1番大切なものです。
やってみて思うんですけど、結局
いいトレーナーは技術とかじゃないんですよ。
ハートだから。やる子はやる。ぼくは関係ない。 |
糸井 |
ほっといてもやる子はやるんだ。
ひとがひとを育てていく階段構造、
ほんとにこれができるまでがむつかしいですね。
自分でやらなきゃいけない。 |
ケビン |
わかりますよ、成功度は全然違いますけど。
ひとがたくさんついてくるのが鍵で、
つっぱらなくて表現できて、それに
ついてきてくれるひとがいるでしょ? |
糸井 |
理想の会社は月謝取って社員にする。
どんどん辞めてどんどん入ってくるのが
1番元気ありますよね。3年くらいで入れ変わる。
自分もクビになる可能性がある、みたいな。
「社長はもう要らないんじゃないですか?」って。
月謝払わせて、もう宗教ですね。
キリストは要るけど、パウロは要らないのよ。
でもパウロいないと組織にならないからね。 |
ケビン |
その通りです。来るひとが組織を
「そうだ」と思えばいいんですよね。 |
糸井 |
ただ、ひとは疲れるんですよ。
普通に酒飲んで遊んでみんなとおんなじように
やっていながら拍手が欲しいやつが多いけど、
それは、無理。そんなことはありえない。
動機がだんだん減っていく問題がある。 |
ケビン |
うまくいっているときはとくにね。 |
糸井 |
うまくいってるときはこわい。
これ、巨人の藤田監督に教わったんです。
勝って勝ってみんなにっこにこしてるの。
だけど監督だけが、顔は笑ってるんだけど
「糸井さん、今が1番いやなんですよ
わるいことはぜんぶはじまっているんですよ。
まわり見てもほら、全部油断してるでしょ?
悪いときに『あのときこうだったからな』
というのが今日ぜんぶあるんですよ」
って言ってた。それにあんまりしばりすぎると
「何のために生きてるか」となってくるし
そりゃあどっかのお姉ちゃんとどこか行きたいし、
そこはしばっちゃだめなのよ。 |
ケビン |
ぼくは今の段階では目標があるから、
緩むことはないんですけど。 |
●自分は飽きない理由を探せるけど |
糸井 |
でもリラックスしてますよ、ケビンさん。 |
ケビン |
ありがとうございます、
でも見えるだけですよ、ほんとに。 |
糸井 |
まあね、そうだよねえ……。 |
ケビン |
必死ですよ、もう。 |
糸井 |
ぼくもそうですよ、今までのキャリア関係ないから。
インターネットってなかったものですから、
ぼくにとってもキャリアないし。
ただ、年をとってからのほうがパワーあるんです。
さっきケビンさんが言ってた
「4次元つながったのを一気に動かす」
みたいなのは、若いときよりも今あるんですよ。
それ、自分だけで動くならいいんだけど
全体を動かすときにはむつかしいんですよ。
他人までつながるから。
読者のほうがよっぽどそのままついてくる。 |
ケビン |
わかるわ。 |
糸井 |
ケビンさんを見ている読者のほうが
俺は何でもいうことききますってなると思う。
3か月経ったときにはいなくなるかもしれない。
ずっとケビンさんのそばにいるひとは
ケビンさんのことぜんぶわかってるって
思うだろうけど、わかっちゃいないですよ。
飽きと試合しているわけです、俺らは。
自分は飽きない理由を探せるんだけど、
教わっただけのひとは探せないんですよ。 |
ケビン |
あの、糸井さん、
どうしてぼくにそういうこと言うんですか?
何かその場でいいかげんに言ってないですし、
ぼくの欲しいものをしっているみたいに
きこえるわけですよ。なぜですか?
たぶん、忙しいかたじゃないですか。
糸井さんがぼくに会っている目的がわからない。 |
糸井 |
話してるあいだに
いいことがあるかもしれないじゃないですか。 |
ケビン |
ぼくはそれだけで会おうとするひとに
今まで会ったことがないんです。
露骨かもしれないけど、それ以上に
どんな関係があるんだって思うんです。
そういうの以外に見たことがないから……。
企画があるから会おうとしたのかとも思ったけど、
そうでもないみたいだし。 |
糸井 |
いや、なんかつながるかもしれないんですよ。 |
ケビン |
そういうのを信じてやられているわけですか。
人生ずいぶんやられてますよね。
ランダムにぱっぱっとやられてる。
それはほんとすごいと思うわ。
ぼくにはそんな余裕がない。
ぼく、現実でいっぱいなんです。
今は選手もいるしやることがいっぱいで
エネルギーを出せないのが事実なんです。
もう100パーセントでやってますから。 |
糸井 |
余裕じゃないんだよ。趣味。 |
ケビン |
だからそれはやっぱり余裕なんですよ。
トレーナーとして見たら、
糸井さん、問題ないですよ。 |
糸井 |
アメリカのひとにそう言われると、うれしいなあ。
プレゼンテーションでアメリカ人が混ざってると
ほめられるけど、日本人にはほめられないの。
だけど俺、心はすごく日本人。 |
ケビン |
軽くだまされちゃうんだろうな、こういうひとに。
ぼくはいつも、つかまされるんですよ。
何だか急に契約きられたりとか。
ぼくの感触で言うと、クライアントのほうが
たぶん、仕事したくないんですよ。
会社がもうかろうが知ったこっちゃない、
そういう姿勢としか見えないんです。
あいつらぬるいところでやりたいだけですよ。
ぼくのところにはバイトの子も思想が一定になる。
そういう子しか来ないから熱があるんです。
でも熱があるとみんないやがるんですよ。
お客さんはよろこんでいるのに、
会社側は自分の仕事が増えるからやばいんですよ。
ほんとにやらなきゃいけないことが増えるから
いやなんですよ。それで上にも伝えない。
ぼくら自然死です、自然死。それで知らん顔。
何だよこのやりかた。 |
糸井 |
だましてない(笑)。
ケビンさんうまくいきますよ。
ケビンさんは去年と今とを比べているから
自分には見えていないと思うけど、
ぼくは来年と今を比べるからわかるんです。
あることが伝わるのに1年かかる。それは、
今清原がケビンさんを期待してるってことです。
工場予定地があるとき、ぼくは今生えている草を
見ないんですよ。わあとひとが集まっている姿を
先に考えるんです。できたあとのことを想像する。
現在にいるって思わないで、未来から先に、
できちゃったことから先に考えるんです。
ケビンさんがどういう事業してるかは
わからない。俺ビジネス苦手だから。
でもひとからはすごく見える場所に
いるようになるんじゃないかなあ。 |
(おわり) |