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ケビン・山崎って、
どういう男?

誤解をおそれぬ直球トークを聞け!
巨人の清原選手が肉体改造にシアトルに行ったもんで、
急に、この人の話題がスポーツ紙に出てくるようになった。
前々から、このスーパートレーナーの噂は聞いていたのさ。
高阪剛や前田日明が信頼しきった黒服の黒キャップの男。
「どうしてますか」と電話すると、
「いまシャワー浴びて、あなたの電話に出ているんです」
と答える、『まんまやんけ男』。

あまりにストレートだから、
日本人記者とかには、さんざん誤解されているらしいが、
この人の考え方や、理論には、
実際につきあった人たちは、みんな感服している。

知りたいでしょう?
この男のこと、この男の理論のことを。
「なぜ、ぼくはここに来たか」よく知らぬままに、
鼠穴にやってきたケビンさんに、
いろいろ聞きまくりました。

※多少、話がわかりにくくてもごめんなさい。
長い会話の断片を掲載しているので。

第1回 はじめて見たとき

第2回 この感触13年経験したことなかった

第3回 隠れて変なもん食って

第4回 頭を疲れさせる

第5回 俺らは飽きと試合をしている

●理解してリスペクトする
ケビン ところで糸井さんって
仕事何してるんですか?
糸井 コピーライターです。
ケビン 何か話きいてるといろんなところに
知りあいがいるみたいじゃないですか。
なんでそうなったんですか?
糸井 それ、きかれたことないなあ。
……たぶん、友達の友達は友達だからです。
ケビンさんがラグビーのひとと知りあって
K1に行くみたいな。あ、これもケビンさんと
似てるけど、ぼくは理解するだけでいいんです。
そのひとに何あげられるわけじゃないけど、
理解するだけで友達になれるじゃないですか。
ぼくは相手にはいつもリスペクトなんです。
ああケビンさんに会えてよかったなっていうのが
こんなかっこしてても(寝っ転がる)あるんです。
たぶんそうじゃないかなあ。
そうするとまた会ってもいいなあって
気がするじゃないですか。
ケビン 悟られたような、なるほどね。
糸井 とんでもないですよ。
ただ、ぼくのやることは勝ち負けじゃないから。
高阪くんたちはリングで勝ち負けがあるけど
ぼくらはそうじゃないから、
相手のいいものをもらって、こっちからも
何かおみやげを持たせられるようにやると。
ケビン いやあわかりますよ。
具体的に何やられているかは知らないけど
そういうことを言っているのは
うまくいってる証拠ですよ。

ぼくのほんとうのメインは
トータルワークアウトのフィットネスといって、
15年くらい考えた方法をひろげたいんです。
94年から学生さんを集めてトレーナー育てる、
それに自分の人生をつかってみようかなと。
毎年3〜40人くらい入って3、4人育てばいいほう。
これはぼくのなかで1番大切なものです。
やってみて思うんですけど、結局
いいトレーナーは技術とかじゃないんですよ。
ハートだから。やる子はやる。ぼくは関係ない。
糸井 ほっといてもやる子はやるんだ。
ひとがひとを育てていく階段構造、
ほんとにこれができるまでがむつかしいですね。
自分でやらなきゃいけない。
ケビン わかりますよ、成功度は全然違いますけど。
ひとがたくさんついてくるのが鍵で、
つっぱらなくて表現できて、それに
ついてきてくれるひとがいるでしょ?
糸井 理想の会社は月謝取って社員にする。
どんどん辞めてどんどん入ってくるのが
1番元気ありますよね。3年くらいで入れ変わる。
自分もクビになる可能性がある、みたいな。
「社長はもう要らないんじゃないですか?」って。
月謝払わせて、もう宗教ですね。
キリストは要るけど、パウロは要らないのよ。
でもパウロいないと組織にならないからね。
ケビン その通りです。来るひとが組織を
「そうだ」と思えばいいんですよね。
糸井 ただ、ひとは疲れるんですよ。
普通に酒飲んで遊んでみんなとおんなじように
やっていながら拍手が欲しいやつが多いけど、
それは、無理。そんなことはありえない。
動機がだんだん減っていく問題がある。
ケビン うまくいっているときはとくにね。
糸井 うまくいってるときはこわい。
これ、巨人の藤田監督に教わったんです。
勝って勝ってみんなにっこにこしてるの。
だけど監督だけが、顔は笑ってるんだけど
「糸井さん、今が1番いやなんですよ
 わるいことはぜんぶはじまっているんですよ。
 まわり見てもほら、全部油断してるでしょ?
 悪いときに『あのときこうだったからな』
 というのが今日ぜんぶあるんですよ」
って言ってた。それにあんまりしばりすぎると
「何のために生きてるか」となってくるし
そりゃあどっかのお姉ちゃんとどこか行きたいし、
そこはしばっちゃだめなのよ。
ケビン ぼくは今の段階では目標があるから、
緩むことはないんですけど。
●自分は飽きない理由を探せるけど
糸井 でもリラックスしてますよ、ケビンさん。
ケビン ありがとうございます、
でも見えるだけですよ、ほんとに。
糸井 まあね、そうだよねえ……。
ケビン 必死ですよ、もう。
糸井 ぼくもそうですよ、今までのキャリア関係ないから。
インターネットってなかったものですから、
ぼくにとってもキャリアないし。
ただ、年をとってからのほうがパワーあるんです。
さっきケビンさんが言ってた
「4次元つながったのを一気に動かす」
みたいなのは、若いときよりも今あるんですよ。
それ、自分だけで動くならいいんだけど
全体を動かすときにはむつかしいんですよ。
他人までつながるから。
読者のほうがよっぽどそのままついてくる。
ケビン わかるわ。
糸井 ケビンさんを見ている読者のほうが
俺は何でもいうことききますってなると思う。
3か月経ったときにはいなくなるかもしれない。
ずっとケビンさんのそばにいるひとは
ケビンさんのことぜんぶわかってるって
思うだろうけど、わかっちゃいないですよ。
飽きと試合しているわけです、俺らは。
自分は飽きない理由を探せるんだけど、
教わっただけのひとは探せないんですよ。
ケビン あの、糸井さん、
どうしてぼくにそういうこと言うんですか?
何かその場でいいかげんに言ってないですし、
ぼくの欲しいものをしっているみたいに
きこえるわけですよ。なぜですか?
たぶん、忙しいかたじゃないですか。
糸井さんがぼくに会っている目的がわからない。
糸井 話してるあいだに
いいことがあるかもしれないじゃないですか。
ケビン ぼくはそれだけで会おうとするひとに
今まで会ったことがないんです。
露骨かもしれないけど、それ以上に
どんな関係があるんだって思うんです。
そういうの以外に見たことがないから……。
企画があるから会おうとしたのかとも思ったけど、
そうでもないみたいだし。
糸井 いや、なんかつながるかもしれないんですよ。
ケビン そういうのを信じてやられているわけですか。
人生ずいぶんやられてますよね。
ランダムにぱっぱっとやられてる。
それはほんとすごいと思うわ。
ぼくにはそんな余裕がない。
ぼく、現実でいっぱいなんです。
今は選手もいるしやることがいっぱいで
エネルギーを出せないのが事実なんです。
もう100パーセントでやってますから。
糸井 余裕じゃないんだよ。趣味。
ケビン だからそれはやっぱり余裕なんですよ。
トレーナーとして見たら、
糸井さん、問題ないですよ。
糸井 アメリカのひとにそう言われると、うれしいなあ。
プレゼンテーションでアメリカ人が混ざってると
ほめられるけど、日本人にはほめられないの。
だけど俺、心はすごく日本人。
ケビン 軽くだまされちゃうんだろうな、こういうひとに。
ぼくはいつも、つかまされるんですよ。
何だか急に契約きられたりとか。
ぼくの感触で言うと、クライアントのほうが
たぶん、仕事したくないんですよ。
会社がもうかろうが知ったこっちゃない、
そういう姿勢としか見えないんです。
あいつらぬるいところでやりたいだけですよ。

ぼくのところにはバイトの子も思想が一定になる。
そういう子しか来ないから熱があるんです。
でも熱があるとみんないやがるんですよ。
お客さんはよろこんでいるのに、
会社側は自分の仕事が増えるからやばいんですよ。
ほんとにやらなきゃいけないことが増えるから
いやなんですよ。それで上にも伝えない。
ぼくら自然死です、自然死。それで知らん顔。
何だよこのやりかた。
糸井 だましてない(笑)。
ケビンさんうまくいきますよ。
ケビンさんは去年と今とを比べているから
自分には見えていないと思うけど、
ぼくは来年と今を比べるからわかるんです。
あることが伝わるのに1年かかる。それは、
今清原がケビンさんを期待してるってことです。
工場予定地があるとき、ぼくは今生えている草を
見ないんですよ。わあとひとが集まっている姿を
先に考えるんです。できたあとのことを想像する。
現在にいるって思わないで、未来から先に、
できちゃったことから先に考えるんです。
ケビンさんがどういう事業してるかは
わからない。俺ビジネス苦手だから。
でもひとからはすごく見える場所に
いるようになるんじゃないかなあ。

(おわり)

ケビンさんへの激励や感想などは、
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2000-03-05-SUN

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