さあいよいよGWは「生活のたのしみ展」。
「ほぼ日」内の飯島奈美さんのウェブショップ
「SUPER LIFE MARKET」では、
いままでに展開してきた食品・グッズ・書籍に加え、
新製品がずらりとならびます。
すでに「生活のたのしみ展」サイトでも
お伝えしておりますが、
新製品のこと、もっと知っていただきたくて、
ここで、さらにくわしい情報をまとめました。
ここで紹介したアイテムの一部は、
後日ウェブショップにもならぶ予定です。
どうぞおたのしみに!

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[interview]吉岡民男(木工家)食卓で間違えない、
すがたのいい「取り箸」を。

フードスタイリストの飯島奈美さんが、
撮影のために大勢で囲む食卓をスタイリングするとき、
いつもちょっと悩んでしまうのが「取り箸」の存在だそう。
家族で大皿を、というシーンをつくるのに、
金属製のトングじゃ「景色がよくない」し、
長い菜箸は、調理中ならいいけれど、
食卓に出すのはちょっとおかしい。
個々のお箸と同じ長さのお箸は、
食卓にはなじんでも、
じっさいには「取り分けて、そのまま、
自分のお箸として使ってしまう」ことが多いわけなので、
「うーん?!」となるんですって。
いつもの食卓にすっと馴染んで、
でも間違えない大きさの取り箸があったら‥‥と、
そんな悩みを話しているなかで、ふと思いつきました。
「ふつうの、いいお箸を、大きめにつくってもらったら?」
と。そこで相談したのが、「ほぼ日」では
「わたしのおはし。」をつくってくださった、
京都・舞鶴のお箸専門の木工家、
吉岡民男さんの存在でした。
製作中の工房におじゃましてのインタビュー、
どうぞごらんください。
(吉岡さんのことば、やわらかな京ことばのアクセントを
想像していただけたらと思います。)

プロフィール

吉岡民男(よしおか・たみお)

木工家。京都・舞鶴で
箸専門の工房「吉岡木工」をいとなむ。

吉岡木工のウェブサイト

わたしのおはし。レポート(2016年)

weeksdays「わたしのおはし。」レポート(2021年)

お箸ができるまでにかかる歳月は。

──
「まちがえないとりばし」は、
飯島奈美さんがかねがね
「テーブルで姿のいい取り箸があまりないんです」
という話をなさっていたのがきっかけで、
これまで「ほぼ日」とお付き合いがある
吉岡さんにつくっていただけたらと、お願いしました。
吉岡
ありがとうございます。
──
こちらこそありがとうございます。
今回、飯島さんからは、
普通の箸より大きくて、でも大きすぎず、
間違って自分の箸だと思って
そのまま使っちゃわないくらいの、
ギリギリのサイズのものがいい、
というオーダーがありました。
吉岡
いやはや、こんな注文は初めてでした(笑)。
──
そうですよね。すみません。
手作業で箸をつくっていらっしゃる吉岡さんになら、
お願いできるんじゃないかと思ったんです。
吉岡
ええ。ちょうど、長さがいけたんです。
──
長さが?
吉岡
この長さが限界だったんですよ。
というのも、箸にする前に、
木材を加工して、乾かして、
しばらく置いとかないといけない。
最初に木材を切り出すサイズがあるんですが、
ふつうのお箸なら余裕をもって削り出せるサイズでも、
この取り箸にはギリギリなんです。
──
お箸をつくる前の下準備があるということですね。
吉岡
そうです。
じゅうぶんに乾燥させないと、
お箸にしたときに反ってくるものがあるんです。
それでも条件によっては反りが出るんですが、
それを最小限にとどめるために、
ある程度の期間、乾かさないとなりません。
──
置いておくというのはどのくらいの期間ですか。
吉岡
この取り箸の場合、コロナ前からですから、
2~3年は置いてますね。
──
え、2~3年?! 
つまりじゃあ、「weeksdays」で
わたしのおはし。」をつくろうと
ご連絡を差し上げたときに、
「ちょうど、いい材料が揃っていますよ」
とおっしゃっていたのは、
その時間を経てのことだったんですね。
吉岡
そうです。何年もかかっています。
──
え、じゃあ逆に言うと、
今から新規にお箸をつくってくださいって言っても‥‥。
吉岡
できないんです。
適する材木があったとしても、
切り出して乾かして、
3年先になって、できるかどうか。
──
なんて貴重な。
しかも、「長さ」が適合したというのはラッキーでした。
吉岡さんが切りだした木材が、
飯島さんが望んでいたサイズに
ぴったりだったんですね。
吉岡
そうです。
──
そのことを知らずに依頼をさしあげたんですが、
あまり長くしたくはない、
という飯島さんの希望もよかったです。
長くしすぎると、
菜箸を置いているみたいになっちゃうと。
吉岡
ああ、なるほど!

「鉄木」を使っています。

──
この材は「鉄木」(てつぼく)だそうですが、
どんな木なのですか?
吉岡
あまり知られてない木ではあるんですけど、
かなり丈夫な木です。
幹の密度が高く、鉄のように硬くなるから
「鉄木」と言われるそうです。
──
少し赤味があってきれいですよね。
吉岡さんのところでは
わりとおなじみの素材なんでしょうか。
吉岡
そうですね。木目に表情があり、粘りの高い木材です。
お箸づくりには、安定した、いい木なんですよ。
普段使いのお箸にぴったりの木材です。
──
今回「八角箸」にしていただきました。
このかたちは、吉岡さんのところでは
おなじみのかたちですね。
そこもすごくいいなと思っています。
手に馴染むし、ずれないし。
吉岡
滑り止めの効果もありますしね。
──
丸いと転がっちゃうけど、落としても止まります。
なにより、置いた時のたたずまいがきれい。
吉岡
ありがとうございます(笑)。
実は先まで八角にしとるんですよ。
──
先端まで? 
あ、本当だ‥‥。
吉岡
これが大変なんですわ(笑)。
手作業でやってるんですけど、
そこまでする必要がないかもわからん(笑)。
でももう、こうするんだと
決めてしもうとるんでね。
──
すごいです。
八角ってやっぱり、物がつかみやすいように思います。
吉岡
そうおっしゃっていただきますね。
普通のお箸は、並べて置いたときに先が開いとんですね。
でもこれははじめから閉じとんです。
──
ほんとですね。きれいに揃います。
吉岡
だからそのままつかめるんです。
それで多分、買われた方も
つかみやすいって言われるんじゃないかと
思っています。
──
ちなみに箸をつくるペースが「1時間に4膳」
以前おっしゃっておられましたが、
この取り箸も、やっぱりそのくらいかかりますか。
吉岡
ペーパー(紙やすり)で全面を磨くんでね。
頭から先まで角を取らないといけないでしょ。
──
ペーパーで1本ずつ‥‥。
扱ううえで注意することはありますか。
吉岡
そうですね、水に浸けっぱなしにすることと、
食洗機は避けてくださいね。
すこし曇ってきたら、布で磨いてくれれば、
艶がもどりますよ。
──
わかりました。大事に使います。
吉岡さん、私たちのリクエストに
こたえてくださって、ありがとうございました。
またぜひ、よろしくお願いします!

原稿協力:中川實穗

写真:大江弘之

まちがえないとりばし」はこちらをご覧ください。

2022-04-28-THU

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