
ネパール唐辛子の惨劇。
(古賀史健)
鴨が食べ、山田が食らいし、とうがらし。
小池に続いて、おれがかじって。
そんな即興歌を詠みつつ
がりっとかじったネパール唐辛子。
鴨さんは「辛いけど、まあだいじょうぶ」と言い、
山田さんも「たしかに、だいじょうぶ」と言い、
小池さんも「うん、古賀さんならイケる」と保証した、
ハバネロみたいな形状の、ネパール唐辛子。
正式名称は知らないし、調べるつもりもない。
ぼくは豪快に、種までがりっと、
ししとうの天ぷらを食べるくらいの勢いでかじった。
「があああああ!!!!!」
これ、もう、
過去に食べてきた辛味成分を
ぜんぶ足して二乗したくらいの激辛で、
食べた2秒後に玉のような涙が吹き出し、
その玉が眼球の下から
ポンポンと景気よくジャンプしていく。
こんな辛さも初体験なら、こんな泣きかたも初体験だ。
その場にいる全員がゲラゲラ笑い、
ことにライくんはじめ、ネパールの人たちは
腹を抱えて大笑いしている。
舌がちぎれそうな激痛を感じながら、
ぼくはもう、旅のおわりがさみしくなってくる。
せっかくライくんが
「このお店のダルバート(カレー定食)をぜひ」
と案内してくれた有名店だったのに、
ぼくはネパール唐辛子の激痛と、
みんなの笑い声しか憶えていない。
旅ってだいたい、そういうものだ。



写真:永田泰大