ネパールでぼくらは。

#35YouMeスクールに向かっている。
旅の最中に、いろいろなことを思う。
たとえば、過去に行ったインドのこと。
たとえば、ネパールで起こった地震のこと。
窓の向こうに流れる景色を追いながら、
いろいろなことを思う。

10年前のインド

(幡野広志)

YouMe Schoolに向かう途中で
ガンジス川の源流を見ることができた。

10年前にインドを一人旅しているときに、
ぼくはガンジス川でツルッと足をすべらせた。
手をついたさきに割れた陶器があって、
左手をザックリと深く切る怪我をした。

血だらけの手をおさえて、困っていると、
ドラッグストアのようなところに、
知らないインド人につれていってもらった。

ぼくは怪我した手を見せて
「Give me drug」となんども繰り返した。

ぼくはまったく英語が話せない。

ドラッグストアだから薬はドラッグだと思っていた。
でも正しくはメディスンだ、
薬はメディスンというらしい。
メディスンのつづりもわからないけど、
「Give me メディスン」と繰り返すべきだった。

「Give me drug. Give me drug」と繰り返していると、
さっきの知らないインド人にまたつれられて、
覚醒剤や大麻など、
本当のドラッグを売ってるお店につれていかれた。

左手にはいまも傷跡が残っていて、
偶然なんだけど旅行線という手相の場所と一致するらしい。
手相をみてもらうと、
旅行線がはっきりしてますねぇなんて言われるけど、
旅行さきでできたものだ。

2015年の大地震。

(永田泰大)

ネパールに入ってから
詳しく調べたことのひとつが、
2015年の大地震だ。

もちろん、何年か前にネパールで大きな地震があって、
歴史的な建造物が崩壊してしまったことを知ってはいた。
石造りの寺院が砂煙に包まれながら
目の前で崩れていく衝撃的な映像を
ニュースで見たことを憶えている。
しかし、正直に言うとそれは、
「外国のニュース」だったのだと思う。

カトマンズにはまだ地震で崩壊した建物が
あちこちにそのまま残っている。
シャラドがネパールの近況や歴史を説明するとき、
「2015年の地震のときに」という
フレーズがときどき登場する。

あの地震のニュースを聞いたとき、
ネパールはぼくにとってとても遠い国だった。
とても勝手な話だけれど、
もう、ネパールは縁のある国だ。
いまだけでなく、きっとこの先もずっと。
旅をすることの大きな意味は、
そういうところにあるのだと思う。

地震の発生は2015年4月25日11時56分。
震源地はカトマンズの北西77キロのあたり。
推定マグニチュードは7.8。
死者8460人、負傷者2万人以上。
エベレストでは複数の雪崩があったのだという。

新しい場所を訪れることで、
はじめての人と挨拶を交わすことで、
ぼくらの世界は広がっていく。
旅をすることの大きな意味は、
そういうところにあるのだと思う。

明日につづきます。

2019-07-23-TUE

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