ネパールでぼくらは。

#36コタンへ向かう途中で、2度めの休憩。
なにしろ、8時間くらいかかりますから。
それぞれが書き留めた、旅の断片。
犬のこと。サッカー場のこと。民族のこと。

二度目の休憩と犬。

(古賀史健)

撮影・古賀史健

午後1時過ぎ。
つまりは出発からおよそ7時間。
ふたたび簡易ドライブイン的な商店の前で、
2度目の、そして最後の休憩がとられる。

思いっきりなでまわすには
若干の勇気を求められるくらいに不潔な犬が、
何匹も歩いている。
そういえばカトマンズでも
路上にはたくさんの犬がいた。

ライくんに訊いたところ、
ネパールには厳密な意味での野良犬は、
一匹もいないのだという。
野良にみえる犬たちはみな誰かの家で飼われ、
それがノーリードのまま放浪し、
ごはんや寝る時間になると帰ってくるのだそうだ。

そしてこれは聞いていないことだけれど、
犬を洗うという習慣というか発想は、たぶんない。
なでると犬たちの毛は、ざらっと砂まじりで、
しかもほどよく脂っぽい。

東京でおるすばんする犬を思い出しながら、
盛大になでてやる。

サッカー場

(浅生鴨)

「ほら、見てください」と
シャラドに言われて窓から外を眺める。
河原の中にある砂地には白い線が引かれていた。
「あれはサッカー場です」
たしかにサッカー場だった。
野原の草を刈って、
石を拾っただけの空き地に過ぎないけれども、
ちゃんとゴールも置かれている。
どこかの学校か、それとも草チームが
練習に使っているのだろうか。
「あれは公式の競技場です。あそこで試合をします」
僕は黙ったままそのグラウンドを見ていた。
いつかこの国の人たちが、砂地ではなく
青々とした芝の張られたグラウンドで
試合をする日が来るのだろうか。

シェルパ。

(永田泰大)

ネパールには多くの民族がいる。
宗教やカーストと複雑に関係しているから
完全に特定するのが難しいのだけれど、
シャラドによれば56の民族が
存在するということだった。

そして言語もたくさん存在するという。
自分と同じ「ライ族」のなかにも
いくつもことばがあるそうだ。
「それって、方言みたいなもの?」とぼくは訊いた。
日本語のなかに津軽弁や博多弁が
あるようなものだろうか、と。
シャラドは笑いながら、
「いや、もうぜんぜん違います。
 単語からなにから違います」と言った。
ぼくにもわからないことばがたくさんあります、と。
はーー、そうなんだ。

ひとつ、豆知識を。
エベレストに日本人が登頂するとき、
現地のガイドを雇うでしょう?
「シェルパを雇う」という言い方、
聞いたことありませんか?
ぼくは「高山を案内する職業」を
現地のことばでシェルパというのだと思ってましたよ。

「シェルパ」って、
ネパールに住む民族の名前なんです。
エベレストに面した地方に住んでいて、
外国人がアタックするときに
シェルパ族の経験豊かな人が雇われるそうです。

明日につづきます。

2019-07-24-WED

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