ネパールでぼくらは。

#37旅の断片を、写真とともに掲載すると、
どんな読み物になるかなんて、
正直、はっきりわかってはいなかった。
もちろん、大丈夫だと確信してたけどね。
旅の断片を、写真とともに掲載すると、
こんなふうになるんだ。

旅でする話。

(永田泰大)

一緒に旅をすると、関係が特別になるのは、
いつもしない話をするからだと思う。
たとえば、自分の親の話とか、
じつは具体的に考えている将来のビジョンとか、
こっそりずっと好きなものとか。

ある程度の閉鎖的で限定的な関係が、
見知らぬ場所へ移りながら、
終わりのあるたっぷりの時間を過ごす。
その特別さが、ふだん語らないテーマへ自分を向かわせる。
約束し合ったわけでもないのに
なぜか互いにそれを大切に扱うような前提を感じながら、
おおきなかたまりをそれぞれに深い場所から差し出し合う。

食事のあとのよもやま話や
会議がはじまるまえの雑談では、
なかなかそういうふうに話すことはできない。

いくつか、旅をするとき特有の
大事な話を聞いたり言ったりした。
もちろん、それらすべてをここに書くつもりはないし、
そもそもそういう話って、
語られた内容そのものよりも、
言い合ったときの雰囲気とか景色とか
ためらいとか苦笑いとか
そういう一切を含んではじめて大切になるものだから、
とても再現できるものじゃないんだ。

空を走る車

(浅生鴨)

その日の午後

僕はほとんど空にいた

車は空の中を走った

空の上には山があって

山の下の空の下にまた山があった

ヒマラヤを出た水はミルクの川

遠くガンジスへつながる川

どこまで行っても空が続いた

音楽が響き歌がこぼれた

笑い声が上がりシャッターが切られた

鳥が鳴いた

何度も鳴いた

雲の中では世界が閉じていた

ここのほかにはもう何もない

そんな気がした

明日につづきます。

2019-07-25-THU

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