DAY 6 A Photographer
(田中泰延)※コラム内の写真も撮影


ここから先のぼくの話は、長くない。

旅に出る前は、ネパールという国、
故郷に学校を作った留学生、
余命宣告を受けたカメラマン、
見届けるぼくたち、
これはややこしい連立方程式だと思った。

だが、こうして立ち会うと、
その解はすべてこの瞬間、瞬間にあった。
ぼくらの解は、未来だ。それを幡野さんが証明する。
彼は進んでいく時間のために、今を描いているのだ。

ぼくは古賀さんと話した。
だれにとっても、時間は砂時計だと。
砂粒が落ちる一刻一刻を感じるために、
その瞬間を生きるために、
その先を生きるために、写真があり、
そして文字があればいいなあ、と。

写真修行中の身であるぼくは、
幡野さんがシュートする、そのすべてを見ようと思った。
撮ることは、砂時計の一粒一粒を見せること。
その一粒は、未来の時間に向けてはたらきかける。




背中を見続けた。
ぼくの取材が、終わった。