ほぼ日 |
途中で、大転換、
みたいなことって、ありましたか?
今までやってたことが覆されたとか、
すごい、止まっちゃったりとか、
ぜんぶ無駄になったとか。 |
青沼 |
今回はあんまり、ないですね。
わりと宮本も、最初のころの、
ゲームの骨格となる話をしたときに、
これだったら間違いないだろうと判断して
端から見てるような状況があって。
で、最後、上がってきたものを
細かくチェックしながら、
こうじゃないだろう、みたいなことを
入れてったかたちなので。
軌道修正を大きくかける、
みたいなことはなかったですね。
ただ今回、売りとなる部分、
たとえばタクトであるとか、
風をあやつるみたいなイメージ、
それから、敵と戦うっていうところの、
チャンバラみたいなもの、
手応えみたいなものとか、
これらはゼルダには欠かせないものですから。
そういうあたりはやっぱり、
最後のテイスティングまでを
チェックしてたところはありますけども。 |
高野 |
開発も後期のほうになってくると、
どんな下手な人でも、カッコ良く見えるようにって。
僕すごくゲーム下手くそでなんですけど、
そういった人間が、
今回のゼルダ触ってたときに、
自分が上手くなったような感じを、
味わってもらいたかったんですね。 |
春花 |
黒澤明監督の『椿三十郎』みたいな感じ。
パッて切った瞬間に、後ろでこう、
敵が、バーンって爆発する、
とかっていうのを、
わざとやってみたりとかって。 |
高野 |
簡単にできたりするのが
すごく嬉しくって。 |
滝澤 |
あれは、最初からね、
敵とのバトルっていうのは、
下手な人でも、
「お!? 俺、上手いぞ」
っていうのができるのを
目指してやってたんです。
それがさらに、
途中で宮本のほうから手が入ってきて。
こういうふうにしたらいいんじゃないか、
っていう話が入ってからはやっぱり、
変わりましたね、うん。 |
|
ほぼ日 |
こうしたらいいんじゃないかって
いうのは、具体的にはどういう? |
春花 |
あ、たとえば、あれですよね、
戦うときに、4連、コンボが入るんです。
1、2、3、4で
色んな切り方をするみたいなのも、
すごく強化された部分なんですよ。 |
滝澤 |
最初は、もうちょっと味気なかったり
ややこしかったり。
考えすぎてしまってる部分が
あったんですけど、なんか違うな、って。
最終的に、青沼とかと喋ってて、
「普通に切ってるだけで
4連続になったらいいやん」
みたいなところに行ってたんですよね。 |
青沼 |
考え過ぎがね、あるんですよ、やっぱり。
新しいことやろうと思うとね、
どんどん考えすぎるんですよ。
こうもしなきゃダメ、こうもしなきゃダメ、
ってどんどん上乗せしてくんですけど、
もとをただすと、
いや、そこまで考えんでもいいやん、っていう。
|
ほぼ日 |
青沼さんは、どっちなんですか?
考え過ぎるなって言うほうなんですか?
考え過ぎちゃうほうなんですか? |
青沼 |
いや、考え過ぎるのが必要だと思ってる、
ところはあるんですよ。 |
ほぼ日 |
いっかい考え過ぎさせて‥‥。 |
青沼 |
そうそうそうそう。
だから、そこまでいって、
もう限界まできて、
「みんな疲れたよね、戻ろうよ」
っていう、そういう(笑)。 |
一同 |
(一同爆笑) |
|
青沼 |
いや、でもね、そこまでやらないとね、
見えてこないものってあるんですよ。 |
春花 |
そんときに戻る説得力っていうの、
ありますよね。そこまでやって、
やったけどダメだった、
じゃあ戻ってみよう、
あ、戻ったら普通にいったやないの、って。 |
滝澤 |
特殊攻撃ってありますよね、今回。
Aボタンを、あるタイミングで押すと、
敵をバーンってできるっていう。
あれを、ものすごい考え過ぎてて、
ちょっと複雑になりかけてたんですよ。
そこをけっこう宮本のほうから軌道修正されて、
「そんなのもっとたくさん
出るようにしたらいいんじゃないの?」
っていう話があって。
やっぱり、考えすぎだったんです。
そういうのもやっぱり、
最終的には変えましたよ(笑)。 |
青沼 |
基本的には、
「プレイする人が、嬉しいことは何なの?」
っていうところが、やっぱり宮本の中にあって。
あれ、嬉しかったよね、とか、
これ嬉しいよね、とかっていう、
やってて嬉しいことっていうのが
あるはずですよね。
でも、複雑にいろいろ作ると、
その嬉しさ味わう前に、
そこに行き着かなくて終わってしまうわけですよ。
誰もがそこまで行き着いて
嬉しいと思えるようなものに
仕上げるっていうのが、
やっぱり宮本の中にある、
基本の考え方なんです。
だから、そこまで至るまでには
やっぱりね、試行錯誤は絶対なきゃいけないわけで。 |
ほぼ日 |
そっか。それで「やらせてみる」んだ。 |
青沼 |
そう。ま、やらせてみるなんて、
そんな、偉そうなことを
言うわけじゃないですけど。
試行錯誤の中で、端々に出てくる、
いい要素っていうのが、
最終的にも残りますから。ね。
やればやるほど。 |
|
高野 |
それが、なんか、すごく、
今回の絵ヅラとすごく合ってて。
8頭身で必ずカッコつけるような
カッコいいキャラクターが、
カッコ良く動いても、
なんかそれは当たり前でしょう。
でも、自分と頭身が似てる、
あんなちっぽけな、
普通の男の子みたいなキャラクターが、
すごい技を出して、
いかにも自分がやったみたいな感じに見える。
普通のぼけーっとしたキャラ、
普段ぼけーっとしてるヤツが
敵と戦ったときに、すごい技を出して、
バーンと倒したときに、
「なんか俺ってすごいんじゃないの??」
みたいなふうに見えるから、
そういう意味でもガチッと
絵と内容がマッチしてるんじゃないかな、と。 |
青沼 |
ゼルダ観ってね、謎解きもそうなんですけど、
ちょっとこう、僕、頭イイかも、ってね(笑)、
思えるような、何かっていうか。
ちょっとだけ悩んでもらって、
それをポッてクリアしたときに、
あ、俺、けっこう頭いいかな? って。
人に言いたくなるっていうか。 |
滝澤 |
それが、アクションとかの
バトルの面でも感じられる、
っていうことですよね。
なるほど、今、納得しました(笑)。
なるほど、そうくくればいいのか、ってね。
いや、やろうとしてたことですけど、
こうして話していると、
くっきりわかってくるものですね(笑)。 |
|
ほぼ日 |
前のピクミンのとき、宮本さんが、
ペレットに数字をつけるようにと
指示した話がありました。
ピクミンが拾ってくるものに
画面上で数字がすでについているわけですね。
あれ、最初はみんな嫌がったんだよ、
って話しをされていて。
ああいうようなことって、なかったですか?
宮本さんが言ったけど、
3回言われて、やったよ、
みたいなとこで、
未だに正解であるかどうかわかんないけど、
そうなったみたいなことってありますか? |
青沼 |
あのね、いっこあるのは、「タクト」ですね。
あれ実は、普通に操作するときは、
左右にアナログ・キーを動かして、
リズムを変えるっていう操作なんですけど、
上下に入れると、音の大きさを変えられるんですよ、
大きくしたり小さくしたりっていうのが。
これね、ゲームには関係のない操作なんですよ。 |
ほぼ日 |
ほー。 |
青沼 |
ネタにぜんぜん関係ない操作で。
でも宮本はどうしても入れろっていう話になって。
で、ポソッとね、
「それもまたなんかネタに
使ってくれたらいいなぁー」
みたいなふうに言ってて。でももうすでに
そんなネタを入れられないような状況で(笑)。
けっきょく僕も、それをネタにできなくて。
最後までその操作、残ってるんですけども。 |
ほぼ日 |
残ってるけど、意味がつけらんなかったんですね。 |
青沼 |
ただ僕が、そのネタを
入れなかったことが失敗だったんですけどね。 |
ほぼ日 |
そのことは、かならず、
darlingと宮本さんが次週対談しますから
おたずねしておきますよ。
(編集部註:ききました。
そのことはdarlingと宮本さん対談のなかで
ご報告しますよ!) |
高野 |
宮本は、やっぱり基本的に、
音楽へのこだわりがスゴイですね。 |
ほぼ日 |
音楽、すごいですよね。 |
高野 |
もう、オカリナのときもそうですもんね。 |
青沼 |
そうそうそう。
だから、今回もやっぱり、
タクトっていうのが、オカリナに代わるもので。
新しい音楽的なものの、
入力で遊ばせるものっていうのが、
何かないかな? っていうところで、
ああいうのが出てきてるんですけども。
僕も、実はあの、
吹奏楽とかやってたりとかするんで。 |
|
ほぼ日 |
そうなんですか。今もやってらっしゃる? |
青沼 |
今もやってます。 |
ほぼ日 |
やっぱりリーダーとか? |
青沼 |
あの、いちおうバンマスなんですけど(笑)。
任天堂に吹奏楽部っていうのがあるんですよ。 |
ほぼ日 |
あ、そうですか! |
青沼 |
そこの部長をやってます。はい。
僕はあの、音階のない
パーカッションってやつをやってるんですけど。
で、やっぱりね、憧れるのは
コンダクターなんですよね。
指揮者ってのは、すごく難しいんですよ、
やっぱり。その指揮が合うかどうかで、
音がぜんぶ変わってきますから。 |
ほぼ日 |
やっていない人だと、
わからない世界なんでしょうね。 |
青沼 |
ですね。で、だから、それにね、
チャレンジしてみようかな?
っていうふうに思って。 |
皆で |
おーっ!? |
青沼 |
いやいや違う、俺がチャレンジするんじゃなくて、
今回のゲームの中で。
コンダクターというものを。
でね、最初のころ作った
タクトの操作みたいなものに対して、
いつの間にやら、春花のほうが、
きれーな指揮のね、アクションを
入れてくれたんですよ。
それがね、すっごくよくできていて。
あそこ、何にも打ち合わせなかったよね? |
|
春花 |
あれはもう、やりたいって
言っただけですよ。 |
青沼 |
でしょ?
だけど、その指揮のね、
棒を振るアクションがね、
すごくキレイなんですよ。 |
ほぼ日 |
へー! |
春花 |
入力した後の動き? |
青沼 |
そうそうそう。きれーなアクションで。
で、あの、曲自身は、単に、
入力のパターンを作ってるだけなんで、
どんな曲になるかとか、
あんまり意識してなかったりするんですけど、
その後にきれーな、
リンクのアクションでタクトを振る
モーションが付けられたんですよ。
そのときに、どうしてこんなキレイな
アクションができたんだろう?って。
今でも不思議。 |
春花 |
そう言われます。
あれは風のタクトって言うくらいやから、
タクト振ったときに、やっぱり
カクッカクッていうふうになってるのは‥‥。 |
|
青沼 |
なんであの曲に合わせて、
キレイなアクションができたの? |
春花 |
あれは、曲を流しながら、
それに合わせて、ちゃんとテンポを合わせて。 |
青沼 |
でしょ?
だから、それがもうすでに彼の中で、
自分はコンダクターになってるわけですよ。ね? |
高野 |
頭にあるのは、小澤征爾さんなんですよ。 |
春花 |
あのー、やっぱりそのへんは、
タクトを振ったときっていうのは、
それらしい感じにならないと、
曲を奏でたっていうことには
ならないと思ったんで、
それは絶対やらないといけない、と思って。 |
青沼 |
音楽を知らない人が、
コンダクターの動きなんかを作ると、
たぶん違うんですよ。
ぜんぜん、なんかおかしな動きに
なってるハズなんですけど。
それがね、ピタッてはまってる。 |
春花 |
あれはー、ただの想像です。ほんとに。
僕はそんときは、他のスタッフと
2人でもう、 動きながらずっと。 |
滝澤 |
ずーっと動いてる。
面白かったですよ、横で見てるぶんには。 |
春花 |
で、実際モーション作るスタッフのほうが、
「え、こうですか?」
「いや、違う、ここでこうためて、こう」‥‥。 |
|
滝澤 |
「こうで、こうで」言ってる合間に‥‥(笑)。 |
春花 |
「手首のこの、ここから来て、こうだッ!」。
「上でこうちゃんとやってから、こう流れろッ!」
とかね。で、ずっと流れてますからね。
タクトの曲が。 |
青沼 |
いっしょに吹奏楽やってたりする人間も
いるんですけど、
みんながその出来上がりをね、
けっこう、スゴイ! って言って。
だから、そういうのってほら、知識がなくても、
出来ちゃうっていうのが、不思議ですよね。 |
春花 |
ただね、それがね、ちょっと裏があって(笑)。
見てもらったんですよ。 |
青沼 |
あ、サウンド側に? |
春花 |
そう。見てもらったんですけど。
どう? って見てもらったときに、
ほんとうはこうじゃないけども、
らしくて嬉しいっていうのが、
やっぱり大事だから、ちょっとウソついてても、
らしいことになってれば、それが、
いちばん正解やっていう部分があるやん、って。
カリカチュアされて。
だから、そういう部分ではOKだ、
っていう部分でのお墨付きは
もらったんですよ。うん。
その人は熱心やから、
指揮の本とか貸してくれるんですけども・・・・(笑)。
|
青沼 |
でも、そういうもんなんかな?
っていう気がしますよね。
なんかほら、
こうじゃなきゃいけないみたいなものを
追求しすぎると、
らしくなかったりするっていうのがね。 |
高野 |
ゼルダ全体がそうですよね。 |