2013年の年の瀬に
三重県伊賀市の「土楽」さんを訪ね、
みんなでもちつきをしてから2日後のこと‥‥。
ここに、ぎこちないかたちの「鏡もち」があります。 |
|
自分たちでついたおもちを丸めて、つくった「鏡もち」。 |
|
そのおもちの前に、糸井重里がスッと座りました。
さあ、2014年・新春企画をはじめましょう。
まずは新年のごあいさつから。 |
|
糸井 |
えー‥‥
新年あけましておめでとうございます。
|
─── |
おめでとうございます!
|
糸井 |
いまはまだ12月ですが、
こういうセッティングもしてありますので、
ぼくは当然のこととして新年のあいさつをしました。
|
─── |
ありがとうございます。
|
糸井 |
赤いくびまきもしてきました。
|
|
─── |
おめでたいです。
|
糸井 |
‥‥で?
なにをお話しましょう。
2日前のもちつきを振り返ればいいのでしょうか。
|
─── |
もちろん、もちつきのお話も。
でもまずは、
「おもちの話」からうかがわせてください。
|
糸井 |
もちつきではなく、もちそのものの話から。
|
─── |
そうです。
おとといのもちつきはとてもたのしかったのですが、
なんと言いますか‥‥
新春というよりも
あの日は「すばらしい年末」の風景でした。
|
糸井 |
ああー、たしかにそうでしたね、
ものすごい「忘年感」でした。
もちつきというのは、お正月の準備ですから。
|
─── |
はい。
ですので、まずは元日らしく
新年のごあいさつと
縁起のいいおもち本体の話から、
このコンテンツをはじめたいと思ったのです。
|
糸井 |
そうですか。
‥‥ま、そのあたりの構成はお任せします。
なにしろまずは、
「もち」そのものの話。
|
─── |
お好き‥‥ですよね?
|
糸井 |
自分がとくべつな「もち好き」かというと、
それを強く意識したことはないです。
ふつうに好きなんだと思いますよ。
たくさん食べるわけでもなく。
あんこと同じですね。
自然なつきあいです。
|
|
─── |
あんこと同じように好き‥‥。
わかりました。
そのおもちを、
人はみな、なぜお正月に食べるのでしょう?
縁起物だというのはわかるのですが‥‥。
|
糸井 |
それを語るには、
昔と今を比較してみる必要があります。
|
─── |
昔と今を‥‥。
|
糸井 |
そうすることで見えてくることがあるんです。
昔の人は、なぜそんなにも、
神様にお供えするほどまでに、
もちをたいせつに考えていたのか。
|
─── |
‥‥なぜでしょう。
|
糸井 |
今の人はみな、年中あるもののひとつとして
もちを食べています。
でも昔は、米をつくること自体が命がけでした。
税金もお米でしたよね。
なかでも、もち米は、
ありがたみのかたまりのような存在だった。
|
─── |
ありがたみのかたまり。
|
|
糸井 |
「もちをたくさん食べると母乳がよく出る」
と言われるくらいに、
昔はたいせつな栄養源でもありました。
肉をよく食べる西洋人とちがって、
アジア人は必須アミノ酸が不足しがちですから
大食いをすることで
栄養を補っていたという説があります。
|
─── |
日本人は、大食い。
|
糸井 |
ぼくが学生のころにはまだ、
「どんぶり飯を何杯食った」
という自慢話が当たり前にされていたんです。
量で栄養を満たす時代だったんですね。
|
─── |
米の量が、ありがたかった。
もちは、ありがたみのかたまり‥‥。
|
糸井 |
そういう感覚が、
ぼくらのなかに残っているんじゃないでしょうか。
|
─── |
‥‥ああ。
|
糸井 |
昔の人がもちを思う心と、
今の人が思っている心とを重ねあわせてみる。
そして思いを馳せる。
それが正月をむかえる儀式なのかな、と思います。
|
|
─── |
‥‥たしかに、
もちつきという儀式を体験しながら、
自分のなかで何かが
よみがえってくるような感覚がありました。
|
糸井 |
もちつきという行為には、
過去からの記憶を呼び起こして
自然と力をこめさせる何かがありますよね。
演劇的というか‥‥
儀式としてとても強いものだと思います。
|
─── |
振りおろされた杵(きね)が、
もちを叩くあの音‥‥。
ばちーん!
|
|
糸井 |
濃密な時間です。
|
─── |
沸く、というか‥‥
みなぎる、というか‥‥。
びたーん!
|
|
|
ぼすっ!
|
|
|
ずどっ!
|
|
|
ぱーーん!
|
|
─── |
‥‥たのしかったのですが、
たのしかっただけじゃなく、興奮がありました。
|
糸井 |
ええ。興奮しますね。
|
─── |
ありがたみのかたまりを、つきあげる興奮。
|
糸井 |
そう。
|
─── |
‥‥ありがとうございます。
とてもいい導入になりました。
ここから、
ぼくらが体験してきた「土楽」さんでの
もちつきをレポートしていきたいと思います。
|
糸井 |
なるほど。
ま、構成については自由にやってください。
|
─── |
時間を2日前に戻します。
われわれは、伊賀焼きのふるさと、丸柱へ。
|
|
─── |
土楽のお母さんと四女の道歩さんが、
準備万端整えて、出迎えてくださいました。
|
|
|
─── |
こんにちはー!
よろしくおねがいしまーす!
|
道歩さん |
ようこそー!
|
お母さん |
いま準備していたんです。
もうすぐね、もち米が蒸しあがりますよ。
|
|
─── |
す、すごい、4段重ねのセイロ‥‥。
湯気が、湯気が‥‥。 |
|
(次回いよいよ、つきます!) |