HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
映画『SCOOP!』公開記念
望まれた役をする”劇団福山雅治”
福山雅治 × 糸井重里
福山雅治さんのプロフィール

福山雅治

1969年2月6日生まれ。長崎県出身。
1990年「追憶の雨の中」で
シンガーソング・ライターとしてデビュー。
以降音楽活動の他、俳優、ラジオパーソナリティ、
カメラマンなど幅広い分野で活躍。
主な出演映画に、『容疑者Xの献身』
『アマルフィ 女神の報酬』『アンダルシア 女神の報復』
『真夏の方程式』『そして父になる』
『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』、
2018年には『追捕~MANHUNT』が公開予定。
『SCOOP!』では主演の都城静を務めるほか、
主題歌「無情の海に」ではギターで参加している。
アーティストで、俳優で、カメラマンで、
望まれた役をなんでもこなす福山雅治さん。
福山さんが主演する映画『SCOOP!』のコピーを
糸井重里が書いたことがきっかけで、
福山さんがパーソナリティを務めるラジオ番組、
TOKYO FM「福のラジオ」での対談が実現しました。
「ごめん。馬鹿で悪かったな。」というコピーの話から、
互いの存在、大根仁監督の話、仕事への姿勢など、
番組で聴けなかった未公開部分もたっぷりお届けします。
福山
面識はすでにあって、僕の記憶だと、
15年ぐらい前。
都内某所のスポーツジムでお会いして。
糸井
はい、はい。
福山
ちゃんとお話させていただくのは
今日が初めてですよね。
ジムでお会いした時の糸井さんは、
腰に氷のうをあてられていて‥‥。
糸井
痛めちゃったんです(笑)。
福山
初めてお会いした時の糸井さんは、
イメージどおりの方でした。
生みだすお言葉や感性が繊細なだけでなく、
肉体まで繊細な方なんだなって。
糸井
あの頃に通っていたジムは、
おもしろがってキツいことさせていたんです。
ぼくはそんなに一所懸命じゃなかったんで、
イテテテテテって(笑)。
福山
糸井さんは、繊細かつ的確で、
胸に刺さる言葉を表現されたり、
コピーを書かれる印象がありました。
これで肉体がマッチョだったら、
ちょっと怖いなと思っていたんです。
糸井
それはありえないですね(笑)。
福山
糸井さんとの対面が実現したのも、
私が出演している
映画『SCOOP!』のキャッチコピーを
糸井さんが手掛けてくださったからですね。
映画のコピーを作られたのは、
どれぐらいぶりになるんですか。
糸井
最後に映画のコピーを作ったのは、
『ゲド戦記』じゃないかと思うんですね。
そこから10年以上が経つかな。
福山
そんなに経つんですか。
糸井
ぼくはいま、頼まれたコピーを書いていなくて。
福山
自発的に書きたいなと思ったものは書いていたけど、
オファーされて引き受けるものは、
ずいぶん書かれていなかった?
糸井
書いていないですね。
映画関連でぼくの文章が出ていたとしたら、
ツイートした文章を「使っていいですか」と聞かれて、
「あ、どうぞ」と言ったものだけだと思います。
福山
オファーされたコピーを
書かないようにしようと思ったのは、
どうしてなんですか。
糸井
仕事にすると、上手にやろうとしちゃうんです。
ぼくが勝手に言っていることを
本なり映画なりに使ってくれたら、
それでお役にも立てるし、嘘つかないで済むから。
福山
今回の映画『SCOOP!』では、
「ごめん。馬鹿で悪かったな。」
というコピーをいただいています。
こちらは大根監督からお願いされたんですか。
糸井
そうなんです。
大根さんから「コピーを頼みたいんですけど」って、
たしか、Twitterのメッセージでした。
大根さんとは、ときどきやりとりしているので、
「なにか協力するつもりはあるけども、
仕事じゃなく受ければいいんじゃないの?」
というふうに、ぼくは答えたと思うんですよね。
それでも大根さんは、
「コピーとして引き受けてほしい」と言うから、
嫌だなあって、まずは思いました(笑)。
福山
先ほどのお話をうかがっていると、
ふつうは断るってことになると思うんです。
でも、今回お受けしていただいたというのは?
糸井
大根さんが好きだったんでしょうかね(笑)。
福山
もともと、面識はあったんですか。
糸井
面識はありますが、そんなに会ってはいなくて。
「ほぼ日」の中で大根さんの映画について、
けっこう長い時間お話しする機会があったり、
あるいは『恋の渦』の深夜上映後に対談したり、
ディープでちっちゃい付き合いが続いていました。
ですから、ぼくは大根さんの作るものを
基本的にいいなと思っているので、
作品がおもしろいのは間違いないだろう、と。
ただ、仕事としては映画の配給会社とかも絡むから、
ぼくが「これがいいんじゃない?」と言ったものを
みんなが気に入るとは限りません。
だから、今回は採用になったコピーを含めて、
5、6案出したと思います。
福山
そうなんですか。
糸井
もっと危なっかしいのとか、
効かないけどあったほうがいいのとか、
そういうコピーもあるので。
福山
最終的に決定したのは、
映画のスタッフサイドだったんですか。
糸井
そうですね。
「選んでください」っていう方式で出したんで。
福山
「選んでください」で出されるんですね。
糸井
今回は全部、方向性を変えて出したので。
とくにこの映画は、切り口次第では
どういうふうにも受け止められるから。
福山
そうですね。
糸井
恋愛映画のふりもできるし、
社会派みたいなことも言えるだろうし。
福山
色々な側面がありますよね。
糸井
だから、最終的にどう見せたいのかなって、
ちょっと悩んで、5つほど出したんです。
福山
「オファーを受ける、受けない」という
糸井さんの姿勢を聞いて、考えたことがあって。
「仕事」っていうのは本来、
最初は好きかどうかわからないけれども
頼まれたものはやる、というふうに
始まっていくものだと思うんです。
糸井
そうですね。
福山
糸井さんを見ていると、
好きなことを仕事にしているように見えるんです。
好きなことだけで生きているように見えます。
それって人にとっては、
すごく理想の生き方に見えがちだとも思うんです。
「自分は好きなことをベースに置いて、
 プラス、こっちは仕事としてやんなきゃ」と
「ちゃんとお受けしよう」というもの、
そのバランスは徐々に変わってきたものなんですか。
糸井
うーん、徐々にではないと思いますね。
ある時に、こうしようって決めたんじゃないかな。
気乗りしなくても「得意だからやるよ」というのは、
ややもすると、あまりよくないものができちゃう。
「好きでやる」で一致すれば、ダメでも責任が取れるし、
「俺がダメだったんだよ」とスキッと言えます。
だから、好きじゃないことをやると、
結果として、お互いのためによくないんです。
福山
「バレない程度にだましだましやる」、
という方法もあったと思うんです。
でも、糸井さんご自身、
自分がやった仕事のクオリティに対する
ジャッジも厳しいと言えると思いますし、
結果に対しての受け止め方、
そのジャッジの厳しさもあったと思うんです。
ぼくなんか‥‥、
ちょっと、だましだましやる時もあるんです。
糸井
いやいやいや。
みんなそうだし、仕事ってそういうものですよね。
福山
ありがとうございます。
エンターテインメントのお仕事もされている
糸井さんの存在そのものも、
エンターテインメント性があるなと思って
見させていただいているぼくからすると、
どんどんどんどん、糸井さんの「純度」が
高まっていってる感じがします。
「いやあ、すごい方だなぁ、うらやましいな」
と思って見ていたんです。
糸井
いやいや。
福山
ああいうふうに生きていけたらいいのにな。
僕はいつになったら、
このだましだまし感をもっと抑えて、
純度が高く生きていけるのかな、なんて(笑)。
糸井
純度というよりも、ぼくがやっていることの
バランスを自分で決めているだけじゃないかな。
他人に決められるんじゃなくてね。
福山
糸井さんは、広告のお仕事をされていた頃は、
クライアントというものがいて、
そこからお願いされていたわけですよね。
当然クリエイターなので、
オファーされたものよりも
さらにいいもの出してビックリさせてやろう、
いただいたギャランティよりも、
さらにお金を払いたくなる仕事をやってやろう、
という負けじ魂というのがあると思うんですけど。
糸井
ありますね、ありますね。
福山
いまの、「ほぼ日」にしてもそうですけど、
どこかから仕事をもらうのではないスタイルを、
糸井さんが築かれた姿だと思って見ていました。
糸井
ああ、よく見ていてくださって、
ありがとうございます。
福山
その姿を見ていたので、今回こういう形で、
映画にコピーを作っていただいて
ご一緒できる機会をいただいたので、
糸井さんはどういう生き方をしているんだろうって、
随所に散りばめながら質問したいんです。
糸井
いや、そういうふうに聞かれるとは
思ってもいませんでした。
福山さんって、そういう人だったんだ!
福山
そうですか(笑)。
糸井
いやあ、おもしろいです。
福山
ありがとうございます。
(つづきます)
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2016-09-28-WED
撮影:加藤純平

映画『SCOOP!』は
10月1日(土)全国東宝系ロードショー!

福山雅治さん主演の『SCOOP!』が、
10月1日(土)より全国東宝系で公開されます。
普段は写真週刊誌に撮られる立場にいる福山さんが、
芸能スキャンダル専門のパパラッチ役を演じます。
「ほぼ日」にも『モテキ』『バクマン。』で
登場いただいた大根仁監督との初タッグ作品です。
『SCOOP!』では、大根監督の依頼を受けて
糸井重里がキャッチコピーを担当しています。
「ごめん。馬鹿で悪かったな。」という
コピーについて、糸井はこう語っています。

――ギラッギラのすれっからしに見える映画ですが、
あんがい素直なことのほうが、
こころに残るのではないかと思いました。
B級映画のパロディみたいな味わい
にもなりそうですけどね。