今回、「ほぼ日」からの指令で取材に訪れたのは
フランス・パリから南西方向に約500kmほどの
「Arcachon」(アルカション)、そして
「Mussidan」(ミュシダン)という町です。
「アルカション」や「ミュシダン」という名前に、
全く馴染みがない方がほとんどだと思いますが、
世界でもっとも有名なワインの産地
「Bordeaux」(ボルドー)のすぐ近く、
と言えば、聞いたことある方が増えるかもしれません。
世界的に有名なワインを生み出す
ぶどう畑に囲まれるボルドーを通り過ぎ、
大西洋まで走りぬいたところが「アルカション」。
真っ白な砂の海岸沿いにカフェ、レストラン、
ホテル、カジノ、スパetcが立ち並び、
バカンスや週末を過ごすための
「アルカッショネーズ」と呼ばれる
ヴィクトリア朝様式の建築で建てられた
高級別荘住宅が並ぶ、フランスの有名避暑地です。
「La Dune du Pyla」(ピラ砂丘)と呼ばれる
ヨーロッパ最大の砂丘も観光名所のひとつ。
1歩踏み出すたびに足が埋もれてしまうような
柔らかくて真っ白な砂。
「ピラ砂丘」からさらにスペインの国境付近まで、
真っ白な砂の海岸と松林が続いています。
今回、このボルドー近郊の町「アルカション」と
「ミュシダン」を訪れたのは、
あるバッグブランドを作り出したファミリーに会いに行き、
その誕生のルーツをさぐるため。
そのブランドの名前は「Tampico」(タンピコ)。
麻やコットンでひとつひとつ
手づくりされるタンピコのバッグは、
ナチュラルで丈夫、
なんでもボンボン入れられてしまう
日常使いができるバッグながら、
シックでクラシック、上質であることが人気の秘密。
タンピコは、生みの親が美しい海と大自然に囲まれた
「アルカション」と「ミュシダン」で
生活しているからこそ誕生したバッグ達なんです。
「ミュシダン」の自宅で私たちを出迎えてくれたのは、
タンピコ生みの親でもあるマダム、ニコルさんでした。
「ようこそいらっしゃいました」
タンピコブランドに関わる
実務全般を担当しているパートナーのディディエさん。
そしてニコルさんとともにタンピコのデザインを担当し、
ニコルさんの娘でもあるジュリーさん。
3人が用意してくれた素敵なブランチを囲みながら、
タンピコの誕生秘話やブランドへの想いなどを伺いました。
タンピコは1990年に生まれたブランドです。
ニコルさんを中心として、
今でもこの3人以外に関わっているのは
アトリエで働く数人の職人さん、
そしてウェブ関係を担当する
息子のアントワーヌさんだけという
家族経営のブランドです。
「いかに家族で一致団結してがんばっているか」
「タンピコブランドのイメージや品質を
いかに大切にしているか」などなど
ブランドに情熱を傾ける
ニコルさんの話をたくさん聞いたので、
きっと長年バッグデザイナーひと筋で
やってきたのかと思ったら、
実はタンピコを立ち上げる前は
一切バッグに関わりのない生活を送っていたそう!
なんとボルドーにある「ボザール」(芸術大学)を
卒業したあと、ニコルさんはしばらく
画家として活躍していたのだそうです。
ブランチをいただいた「ミュシダン」の家、
そして週末を過ごす「アルカション」の家
両方の家中に飾られている素敵な絵は
全てニコルさんの作品だったのです。
ところが最初の旦那様を突然亡くして以来、
絵を描く気持ちがパッタリとなくなってしまった、
というニコルさん。
彼女の情熱は絵からバッグへと突然変わったそうです。
「なぜ、絵からバッグに? どういうつながりで?
バッグなどのデザインの勉強もしていたの?」
という質問には、さらりと
「勉強もしていないし関係もなにもないわ。
私にとっては絵もバッグも同じアートだったの。
絵をもう描きたくないと思ったから、
その想いがバッグになっただけ」
というなんともフランス人の
アーティストらしい答えが返ってきました。
取材・文・写真 とのまりこ
(つづきます)
2016-08-01-MON
Nicole Martin(ニコル・マルタン)さん。
タンピコの創始者であり、デザインも担当。
そしてファミリーを指揮する
おフランス版「肝っ玉かあちゃん」も担当。
エネルギーにあふれ、
言いたいことはなんでもハッキリズバリ。
自分の生きるスタイルも自信を持ち
仕事もプライベートも楽しそう。
相手の顔色見ながら気を使ってしまいがちな
私たち日本人からの第一印象は
ちょっぴり「こわい」イメージかもしれないけれど
これこそ「ザ・フランスの女性」像。
私たちの「あたりまえ」からすると
ちょっとハッキリズバリかもしれないけれど、
この勢いにビビってはいけない。
仕事でもプライベートでも
言いたいことをその場で言うからこそ、
お互いの関係もググッと近づく。
3日目に「さよなら」をかわすときには
まるで親戚のおばちゃんと
しばらく会えなくなるときのような
寂しさでいっぱいでした。
日本のように
「若くてかわいい」ことが
ちやほやされないフランス。
歳をとり、経験を重ねれば重ねるほど、
大人になればなるほどに、
「素敵で美しい」と尊敬されるフランスマダム、
その象徴のような人です。
フランス人憧れのリゾート海岸が連なる
海の近くで育ち暮らしているのも
小麦色に焼けた肌を見れば納得!
「バカンス命」「こんがり日焼け命」
(こんがり日焼けしていることこそ、
素敵なバカンスを過ごしているという象徴。
「美白」「色白」という言葉は
この国にはございません!)
のフランス人女性が羨む生活環境のニコルさん。
そんな彼女だからこそ
バカンス中にも大活躍する
シンプルでカジュアルだけどシックな
タンピコというバッグが生み出せるんだろうなあ。