心残り。 | 2008-12-25 | |
「観客のため」という要求。 | 2008-12-26 | |
価値になりにくいもの。 | 2008-12-27 | |
やりやすい、励みになる、飯の種になる。 | 2008-12-28 | |
価値、無価値、反価値。 | 2008-12-29 | |
文化はいいことだ、の落とし穴。 | 2008-12-30 | |
高村光太郎のペンギン。 | 2008-12-30 |
糸井 |
吉本さん、84歳を迎えられましたが。 |
吉本 |
うちの親父さんは76ぐらいで、 おふくろさんもそのくらいで亡くなりましたし、 まぁ、いまの平均寿命くらいにはいった、 と言えるんじゃないでしょうか。 |
糸井 |
いや、超えてますよ。すごいですよね。 |
吉本 |
糖尿があるくせに よく生きてるね、って言われます。 |
糸井 |
「平均までいく」というのは、ぼくも ひとつの目標として、あります。 |
吉本 |
ええ、そうですよね。 実感で言えば、70を終わって、80代になった頃に なんか急速に年寄りになったというか、 年が影響してきたというか。 |
糸井 |
60、70、80、と老年の節目はありますが、 80は大きいですか。 |
吉本 |
たいていの場合、60代は真っ盛りです。 で、70代が終わって、 この続きでいくだろう、と思ってると、 ちがっちゃうんです。 急に、年寄りになるんですよ。 足腰から、歩く度合から、 格段にちがってきちゃう。 でも、そこらへんを、うまくできる人が いるのかもしれませんね。 そうできる人は、自然にだんだん歳取ってきた、と いうふうになれるんでしょう。 |
糸井 |
いやだなぁ。 |
吉本 |
ははは。 からだのほうがそうなっちゃうんですよ。 精神のほうはちっとも成長しないんですけどね。 いまの年寄りは、体のほうだけ成長‥‥というか、 老いていって、寿命は延びていって、 精神のほうは成長しないです。 |
糸井 |
吉本さんは、よく、 親鸞が90以上まで生きた話をなさいます。 あれは、励みになりますよね。 |
吉本 |
あの人は、すごいですね。 ぼくの判断では、中世期前後は平均寿命が たいだい38か9だと思いますので、 そうだとしたら、親鸞は格段にすごいです。 |
糸井 |
平均の倍以上、生きたことになりますね。 |
吉本 |
なんか、うまくやったんですね。 認識してたのかもしれないし、わかんないけど、 生き方が、うまいと言うなら、 うまかったんでしょうね。 |
糸井 |
生き方にうまいへたがあるものなら 知りたいです。 |
吉本 |
ひとつ、あるんですけど、 少なくとも見かけでは 親鸞という人は、決断があっさりしてるんですよ。 |
糸井 |
はい。 |
吉本 |
そのとき、親鸞は、人びとの家を 歩いてまわっていました。 でも、年を取ると、足がきかなくなってきて、 歩くのが不自由になったと感じたんでしょう、 スパッとやめちゃうわけですよ。 |
糸井 |
なるほど。 |
吉本 |
スパッと説教もなにもしなくなって、 京都へ帰るんです。 京都へは、なにも用事があって 帰ったわけじゃないんです。 京都は本場だから、本当だったら お説教したり、教えたりするはずなんだけど、 親鸞はなんにもしないわけですよ。 まぁなんにもしない、布教は全然しない。 |
糸井 |
吉本さんはそうじゃないんですか? |
吉本 |
いや、ぼくは、そんな偉くなれないから、 なにやっても心残りだって、 こないだの講演だって、 心残りだ、と思っちゃいます。 「あ、これは失敗だ」とか。 |
糸井 |
10月27日に、紀伊國屋ホールと ご自宅をつないだ中継の講演ですね。 |
吉本 |
カメラに向かって話すというのが どうにもちがうと思いましたし、 たいへんくたびれました。 やっぱり、こういうくたびれ方っていうのは、 これまでなかったと思いますし、 それはずいぶん参考になった、というか 得るところがあったような気がします。 |
糸井 |
あの講演については、 大事なことだったと思うと同時に、 申し訳なさが、やっぱりあります。 中継の映像を講演に使うことについて、 ぼくたちもはじめてのことでしたし、 講演する吉本さんご自身も 慣れていないものだったんです。 そこにもっと気づくべきでした。 |
吉本 |
ああ。 |
糸井 |
ぼくなんかも、 慣れたように思われてるかもしれませんが、 いやいや、そうでもないんです。 例えば、旅行にカメラが入って 「歩きながらしゃべってください」 ということになったら、 それは、もう演技なんですね。 実際には 「わたしは、いまウィーンに来てて こういうことを考えるんですけど」 って言いながら歩くなんてことは、 ないわけですから、ぼくにはできないんです。 ぼくはできないけども、 もっと素人の人はできていたりするんです。 |
吉本 |
ああ、ありますね。 |
糸井 |
ぼくは、個人的には どこまでやるのかな、ということを 頼まれるごとに、その都度、 都合をつけてきました。 でも、吉本さんはたぶんこれまで一回も 都合つけないで来られたわけだし。 |
吉本 |
うん。 |
糸井 |
そこをもっと 話しておくべきだったかなぁと思います。 だって、人というのは、下手したら シナリオに書いてあるとおりのことを 思わなくたって、言いますから。 |
吉本 |
そうです、そうです。 |
糸井 |
カメラを前にしたときに、 どの場所に自分が立つかな、というあたりに、 きっと、なにか答えがあると思います。 ぼくも勉強になりました。 |
吉本 |
ぼくもずいぶんわかったことがあります。 はじめての疲れ方でしたし、 それがこういうものか、という感じもありました。 それから、テレビというものについて、 だいたい、まだ考えが至らなかったけど、 これでそうとうよくわかったな、って感じを 持ちましたね。 |
(つづきます) |
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