- ──
-
ここまでの話の流れを振り返りますと、
藪下さんが、
まっとうな人物に見えてしまいますね。
- 古矢
- 真実を伝えていないね。
- ──
-
たぶん『VOW』の歴史を語るうえでは、
担当編集である藪下さんの
特異なキャラクターも重要だと思います。
- 藪下
-
いやいや、勘弁してくださいよ。
僕の話はいいですよ。
ハゲの話なんかしてもつまんないですよ。
- ──
-
実は藪下さんには、8年くらい前に、
「ほぼ日」に
ご登場いただいたことがあって、
そのときの不気味なインパクトたるや、
夢に出てくるほどでした。
- 古矢
-
そういえば、藪下さんって、
いつ『VOW』の担当になったんだっけ。
- 藪下
- あんまり覚えてないんですけど。
- ──
- そんなわけないでしょう(笑)。
- 藪下
- 90年くらいに宝島社に入社したんです。
- ──
- その前は何をされてたんですか。
- 藪下
-
広告代理店に3年いたんです。
で、宝島社には広告営業で入ったんですが、
あまりに使えないってことで、
編集に移ったんです。それが92年かなあ。
- 古矢
- 『えび天』に出てたのは、いつ?
- 藪下
- その、広告営業のときです。
- ──
-
ご存じない方のためにご説明しますと、
こちらの藪下さんは、
宝島社のいち社員でありながら、
伝説的な深夜番組『えび天』において、
映像作品『春のめざめ』で、
「金監督」の称号に輝いたお方で、
同番組への最多出場記録も持ってます。
そして‥‥それは、なんでですか?
- 藪下
-
いや、たまたまなんですよ。
別に映像が好きだったわけじゃなくて、
ウケを狙うのが好きで、
飲み屋とかで、筋肉合唱団とか言って、
大胸筋をピクピク動かしながら
歌を歌う映像とかを一生懸命撮ってて。
- ──
- ‥‥ええ。
- 藪下
-
そういうのを、
『カトちゃんケンちゃんごきげんテレビ』
に送りつけてたんです。
- ──
-
それは‥‥おそらく採用されませんよね。
その時間帯ですと。内容的に。
- 藪下
-
うん、採用されるのは、
赤ちゃんだとか犬猫のネタばっかりでね。
完全に無視されてたんだけど、
『えび天』に送ったら褒められたんです。
- ──
-
やっぱり「時間帯」って、あるんですね。
テレビの時間帯によって、
無視されもすれば褒められもするという。
- 藪下
-
ずっと無視される人生だったのに、
はじめて褒められたんです、一瞬だけど。
- ──
- 深夜に一瞬だけ褒められた。
- 古矢
- 公にしてはいけないような芸だからねえ。
- 藪下
-
それで嬉しくなって何本か作ったんです。
ビデオになってるやつもあるんですが、
当時の上司に渡したら
「本当につまんないな」って言われた。
- ──
-
そうなんですか(笑)。
でも、いちおう見てくださったんですね。
- 藪下
-
親も見たいっていうから、
いっぺん、いっしょに見たんですけど、
ふと横見たら寝てましたよ。
- ──
- 内容はあえて聞かないほうがいいですか?
- 藪下
- ううん。
- ──
- 聞いたほうがいいんですか?(笑)
- 古矢
- 説明できるの?
- 藪下
-
いや、人間、どこまでくだらないことが
やれるのかっていうチャレンジでね。
たとえば、学生時代からの友だちですが、
ドリアン助川って人に出てもらったり、
デルモンテ平山って人に出てもらったり。
- 古矢
- タイトルは?
- 藪下
-
え、いや、それ聞くの?
いいですよ、別に。もう忘れましたよ。
- ──
-
いま「藪下秀樹」の名前で検索したら、
Amazonで中古ビデオがヒットしました。
『ビデオは笑ふ 世紀末ヤブシタワールド』
「VHS」で、3981円です。最後の一本。
- 古矢
-
値段が中途半端だなあ。
見よう見よう。注文してよ。
- 藪下
-
いやいや、見なくていいですよ!
僕だって、もう本当に、何ていうの、
焼き物かなんかの先生と同じで、
できた瞬間にもう興味なくして、
あれから1回も見てないんですから。
- 古矢
-
たとえ話が焼き物の先生って、え、何、
濱田庄司とか、
そういう意味で言ってる? 何様だよ!
- ──
- まったく内容が伝わってきません。
- 古矢
-
たぶん聞いてもわかんないと思うよ。
この人の笑いは「極北」行き過ぎてて、
俺にもまったくわからないんだから。
- ──
-
そういえば、藪下さんは、
なつかしの『スーパージョッキー』の
「熱湯コマーシャル」にも
ご出演された過去が、あるそうですね。
- 古矢
-
5秒しか入れなかったんだよ。
新しい『VOW』の宣伝で、
俺と当時の投稿選考主任だった吉田豪と
3人で行ったのに、5秒。
- ──
- つまり宣伝時間も5秒。
- 藪下
-
いや、だって、もうめちゃくちゃ熱くて、
本当にちょっとね、
あれで完全に子種が死んだと思いました。
- 古矢
- そこまで熱くないだろ。
- 藪下
- いやいや、マジですよ。
- 古矢
-
だってあれ、ずっと置いてあったんだよ。
スタジオの脇のほうに、湯を張ったまま。
- 藪下
-
たしかにね、最初に入ったときは、
「あ、我慢できる」と思ったんですよ。
そしたら、
スタッフの人が熱湯を足してくるんです。
- 古矢
- ああ、そうそう。
- 藪下
-
その瞬間、メチャクチャ熱くなって、
あわてて飛び出しましたよ。
- ──
-
やっぱり入るのは、藪下さんなんですね。
役割的にというか、立ち位置的に。
- 古矢
- 必然的にそうなったよね。
- ──
-
たしかに、その3人だったら、
藪下さんになっちゃいそうですよね。
- 古矢
- でしょ。
- 藪下
-
今となってはいい思い出ですけどね。
子種も無事でしたし。
- 古矢
- そうまとめるんだ。
2017-10-02 MON