伊藤 | むかし、二十歳の記念ではじめて、 母からパールのネックレスをもらいました。 |
植野さん | 「ファーストパール」ですね! |
伊藤 | それを先日、知り合いに 留め金をリメイクしてもらった時、 「真珠はすごくデリケートだから、 もしかしてここの金具を取る時に ちょっと傷が入ってしまうかもしれない。 ダイヤとかと全然違うんです」 とおっしゃってて。 たしかに真珠には硬い印象がありません。 |
向井さん | 人の爪の表面の硬さぐらいって言われています。 |
伊藤 | そうなんですか。 |
向井さん | ですから硬い鋭いものに当たったりすると、傷つきます。 |
ほぼ日 | 二十歳にお母様からもらうっていうのは、 「はじめての真珠」に触れるいい機会ですよね。 |
伊藤 | わたしのまわりでも、けっこうよく聞きますよ。 |
向井さん | はい、成人のお祝いでお求めの方は とっても多いと思います。 |
伊藤 | 卒業、入学、成人、就職。 そういう節目のプレゼントに。 その年齢では、自分で買えるものではないですしね。 |
向井さん | なおかつ、その時だけじゃなく、 一生ものとしてずっと使えますので。 |
伊藤 | そういう文化を作ったのも、 ひょっとしてミキモトさんですか。 |
植野さん | そうだとしたらとてもうれしいです。 一般の女性に真珠のネックレスが普及しだしたのは 1950年代ぐらいなのですけれど、 その頃から弊社の広告で、 「結婚式にはパールのネックレスとイヤリングを」 「冠婚葬祭に使えます」ということを 徐々に浸透させていったんですね。 それまでの天然真珠の時代にくらべて 効率よく安定して生産できるようになったので、 バリエーションも増えて、 真珠のネックレスも充実していったものの、 普及という意味ではまだまだでしたから。 また、こういった約40センチの長さを チョーカータイプと言ってますけれど、 この名称も日本ではミキモトから 始まったものと言われているんですよ。 |
伊藤 | すごく嬉しかったです、大人になった気がして。 |
植野さん | やっぱりいまでも多いですよね。 |
伊藤 | 真珠は普遍的な美しさだと思いますが、 それでも流行というのはあるんでしょうか。 |
向井さん | 最近はロングがとても人気ありますね。 小粒のロングがほんとうに、 一時期、品薄になってしまって。 お手持ちのカジュアルなペンダントと 重ねづけもできますから。 |
伊藤 | 二重にしたり、そういうふうにも? |
向井さん | そうですね、こちらは約120センチなんですけれど、 巻くと、三連にもできます。 こちらの約80センチのものは グラデーションになっておりまして、 粒が大きいとドレッシーになりますけど、 小粒もこんな感じのロングだと、 カジュアルな服装にも合わせられるんですよ。 |
伊藤 | すごくきれい! 光沢にも奥行きがあって。 |
植野さん | ダイヤモンドは暗闇で輝きが出ないんですけれども、 真珠はちょっと薄暗い中でも柔らかい光を放ちます。 |
伊藤 | そうか、ダイヤは光が当たらないと輝かないけれど、 真珠は自ら輝く印象ですね。 知らないことがいっぱい。 |
植野さん | 硬い宝石と違って、穴をあけて糸を通すだけで いろんな形を作れるのもいいところですよね。 お手持ちのネックレスに真珠を足して長くしたりとか、 カラーストーンなどのパーツを足してアレンジしたりとか、 最近はそういう方もいらっしゃいますね。 |
伊藤 | 一生使うことができるというお話でしたが、 糸は定期的に替えたほうがいいんですよね。 |
向井さん | 私どもは絹糸を使っておりまして、 それは絹糸に汗や湿気を吸わせることで 真珠にダメージが行かないようにするためなんです。 ただその代り、ワイヤーとちがって、伸びてきますので、 使う頻度にもよるんですが、 できれば1年とか2年に1回、 糸のお取替えをおすすめしています。 |
伊藤 | 絹糸だとしなやかさがありますよね。 からだに沿うというか。 |
向井さん | そうですね、ラインも柔らかく、 からだに馴染むと思います。 最初はちょっときつめにぎゅっと糸を張るんですが、 使われるうちにすぐしなやかに。 |
伊藤 | わたしは年間300日ぐらい、 真珠のピアスをつけているんですが、 そんなふうにふだんからつけられるものだという 印象とともに、 真珠には冠婚葬祭のイメージもありますよね。 フォーマルで使うときのために買っておく、みたいな。 |
植野さん | はい、それが私たちとしてはすごく残念で。 もっとふだん使いしていただきたいっていう 思いがあるんです。 以前、統計を取ったんですね、国内の女性に、 どれぐらい真珠のネックレスを使いますかって。 そうしたら年に1回から3回ぐらいしか着けない。 たぶん結婚式、お葬式、 入学式とかになってしまうんですね。 それがもったいない。 白いだけあって、何のお洋服でも合わせやすいので、 もっと気軽に使っていただきたいっていう 気持ちがあります。 年齢も選ばないですし、 最近はロングが流行っているとはいえ、 一般的なファッションのような 大きな流行はありませんし。 そんななか、伊藤さんのように、 ピアスはふだん使いにむいていますから、 初めて着けるパールがピアスという方が とても多いんですよ。 |
伊藤 | 服を選ばないですものね。 カジュアルなTシャツにも! けっこう大きなピアスも素敵ですよね。 |
向井さん | ピアスの穴をあけている方だと、 ちょっとしずくのように、 こぼれ落ちるように傾くのがすてきなんですよ。 中には、お着物のときにできるぐらいの、 シンプルな一粒はどうかしら、 という方もいらっしゃいます。 |
伊藤 | お着物もパールだったら大丈夫ですか。 |
向井さん | はい、大丈夫ですよ。 (つづきます!) |
2014-03-28-FRI
取材協力:ミキモト 写真:有賀傑 |
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